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第3章 ソロプレイヤー

第百十話

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「あ~マジ疲れた…」
「すみませんファントムさん…」
「いやいや、仕方ないですよ」

 オクトパスキングとの二度目の死闘に辛くも勝利した僕達はNANAさんとsatoruくんがそろそろ夕食の時間になるから落ちるとのことで、いったん海神迷宮を出て街に戻ることにした。
 ていうかもう回復アイテムがないし買いなおさないと戦えませんw
 ちょうどいいから僕達も戻ることにしたというわけだ。

「なあファントム」

 レイモンドさんが小声で僕に話しかけてきた。
 あの、そんなに顔を寄せられると恥ずかしいんですけど…///

「手持ちの金いくらある?」
「え?」

 まさかのカツアゲ!?

「いやな、フィールに払う報酬を半分出してくれないか?」
「ああ、なら僕が払いますよ。いくらですか?」
「えーっと…時給10000Gで、二時間付き合ってもらったから20000G必要だな」

 二万!?高っ=)

「ごめんゼル、20000Gある?」
「兄貴…俺らの有り金はほとんどチップに化けてますよ」
「あ!」
「そのチップも回復アイテムとかに使っちゃったじゃないですか」

 そうだった…ど、どうしよう!

「ゼル、街に着いたらなんか売って金にしよう」
「そうですね。オクトパスキングの素材なら少し入りましたからそれを売ってみましょう」
「うんそうしよう。すみませんレイモンドさん…やっぱ割りカンにしてください…」
「いいぜ。もし足りなかったら俺らの分の素材も売るから遠慮なく言えよ?」
「あ、ありがとうございます…(泣)」

 僕はレイモンドさんの好意に甘えることにした。
 ていうかシードラゴン倒すのに何時間かかるんだよ?
 そもそもダンジョンの入り口でウロチョロしてただけだし。
 オクトパスキング倒すのに二時間くらいかかるという体たらく…(ToT)
 
 これはもしや…!

 あることを思いついた僕はチラリとフィールさんを見た。

 倒す倒す詐欺じゃないだろうか?

 例えば「ターゲット倒すの手伝ってあげるよ。時給10000で♪」「ホント!?わーいありがとう」と言いつつなんだかんだ理由をつけてターゲットを倒さず時間をかけて金を頂く。
 そしてお金を巻き上げるだけ巻き上げたら「ごめーんやっぱ倒せなかった(テヘペロ)」みたいな感じで最後はトンズラするんじゃ…!?

「………アチャ!」
「あべし!」

 いきなりフィールさんが僕の頬を殴った。
 目にも止まらぬ速さで繰り出された拳が僕のHPを九割近くまで削った。
 瀕死になった僕を見てゼルが激昂して立ち上がった。

「テメエ!うちの兄貴になにしてくれてんだコラァ!」
「………そこの変態が、なにかよからぬことを考えてた」
「なにふざけたこと言ってんだこのアマ!【ペネトレイト】ぶちかますぞコラァ!」

 ゼルが短剣を抜き、攻撃スキルのエフェクトが…!

「ちょっ!?ゼルやめて!僕なら大丈夫だから」
「離してください兄貴!」

 瀕死の身体にムチ打って背後からゼルを羽交い締めにする僕。
 他のみんなも怒り狂ったゼルを宥めようと協力してくれたおかげで、なんとか危機を回避することができた。
 うぅ…この人達ホントいい人だ(感涙)
 この人達とならうまくやっていけるかもしれない…と思った僕はチョロい人間なんだろうな(苦笑)
 また痛い目に遭っても知らないぞ健一w


 惨劇を無事回避できた僕達は街に戻ってこれた。

「ニイちゃんまたな」
「お疲れ様でした」
「うん、お疲れ様でした」

 その足で街の転移門へ行き僕はNANAさん姉弟と別れた。
 あ…どうせならフレンド申請すればよかったかな?
 なんとなく言いづらくて言えなかったけど、まあいっか。

「さて、俺らも行くか」
「ああ、それじゃ僕達もここで」
「え?あ、はい、お疲れ様でした…?」

 レイモンドさんとジェイクさんが転移門を潜りどこかへ行ってしまった。
 あれ?あの二人とも別れちゃったけど…と疑問に思う僕。
 もしかしてレイモンドさんとジェイクさんはNANAさんのパーティメンバーだから、リーダーが落ちたからNPCの二人も落ちたってこと?
 NPCにログアウトもないだろうけどパーティリーダーでもないPCプレイヤーとは一緒に冒険プレイできないってことなのかな?

 でもそうなると………

 僕は隣に佇むフィールさんに視線を移した。

「………なに?」
「え、いや、えっと…フィールさんはこの後どうするんですか?」
「………ん」

 なんか訊ねたらフィールさんが右手を僕に差し出してきた。
 えっ!?それはまさか握手ですか?
 ちょ、ちょっと恥ずかしいけど、ここは勇気を出して手を握ってみよう(ドキドキ)
 恐る恐る右手をあげ、フィールさんの差し出された右手に近づいていく。

 ドッドッドッドッドッドッドッドッ!

 鼓動が尋常じゃないくらいにまで高鳴ってきた。
 キン○エンジン並みの鼓動の音がフィールさんにも聞こえるんじゃないかと思うとヒヤヒヤものだ。
 それでも、今さら引くことは許されない…!
 僕はフィールさんの手を握った。
 柔らかい!温かい!なにこれ!?リアルすぎるでしょ!?
 ていうか現実リアルで女子の手を握ったことなんてないから、ぶっちゃけ女子の手の感触なんてわからないんですけどね!
 その時、フィールさんが小首を傾げた。

「………なにしてるの?」
「え…?」
「………報酬、あと10000G受け取ってない」
「え…!?」

 こ、この手はアレですか?
 報酬ちょうだいの手でしたか…:-c

「あ、はい、報酬ですね、わかってますよ?(汗)ていうかいま手持ちないので、ちょっと素材売りに行ってもいいですか?」
「………(こくり)」

 僕は何事も無かったかのように握った手を離し頭をガリガリとかきながら言うと、フィールさんは小さく頷いた。

「じゃあ、とりあえず店までついてきてくれませんか?」
「………(こくり)」

 僕とゼルはフィールさんを連れて近くの店へ向かうことにした。
 さて、問題はオクトパスキングの素材って高く売れるかどうかなんだけど…

「あの…つかぬ事をお聞きしますが、もし払えなかった場合は…」
「殺す」

 間を置く間もなくフィールさんが即答した。
 め、目が本気マジだ…本気と書いてマジな瞳で言いやがった…(恐)
 最悪手持ちのアイテム全部売ってでも払おうと僕は心に決めて店へ向かった。






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