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第3章 ソロプレイヤー

第百一話

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「シャアッ!」
「【フォースシールド】!」

 ラフレシアの触手攻撃をジェイクさんの防御スキルが見事に防ぐ。

「【兜割り】!」
「【突・一閃】!」
「【暗黒竜牙破斬】!」

 satoruくん、ゼル、そしてレイモンドさんの攻撃スキルがラフレシアのHPを確実に削っていく。
 よし、そろそろ頃合いだ。
 ラフレシアの残りHPを確認した僕は近くにいたNANAさんに声をかけた。
 
「NANAさん詠唱準備」
「はい!」

 ラフレシアの正面にジェイクさん、左右にゼルとレイモンドさん、背後にsatoruくんといった具合にラフレシアを囲んでいた。
 ジェイクさんがスキルでラフレシアのタゲを取り、ゼル達がガンガン攻め立てる。
 ラフレシアは煩わしそうに触手を振り回すと溜めの姿勢に入った。
 マズい…!

「ブレスくるよ!」

 ラフレシアは【夢現の息】を吐いた。
 狙いは正面のジェイクさん。
 避けきれないと悟ったジェイクさんはブレスを盾で防ごうとしたけど防ぎきれなかった。
 ジェイクさんはダメージは受けたうえに状態異常にかかってしまった。

「NANAさん、ヴァイスをお願い!」

 僕は地面に寝かせていたヴァイスをNANAさんに頼むと戦線に上がった。

「NANAさんは詠唱準備、ルーネさんはジェイクさんの回復!レイモンドさんはタンクにスイッチ!」
「はい!」
「了解です!」
「ったく、しょうがねーなあ」

 左に陣取っていたレイモンドさんがラフレシアの正面に回り、レイモンドさんの抜けた所に僕が入った。
 事前に状態異常にかかったら後ろに控えているルーネさんに治してもらい、抜けた穴は復帰するまで僕が補うと決めていた。
 ただMTメインタンクのジェイクさんが抜けた時は【暗黒騎士】のレイモンドさんがSTサブタンクとしてフォローすることになっている。
 レイモンドさんは攻撃重視でスキルを上げているけど一応は騎士職、防御系のスキルも習得していたし、【暗黒騎士】はヘイト値を溜める攻撃スキルが多い。
 熟練度は低いけど、他のメンバーよりVITが高いしタンクとしては十分だと判断した。
 
「【ウインドカッター】!」

 NANAさんの放った攻撃魔法は多段ヒットする風属性魔法。
 かまいたちのような風の刃がラフレシアの触手を数本断ち切りHPが一気に削れた。
 ラフレシアの残りHPが少ない。
 陣形を態勢を立て直した僕はここが勝負所だと決断した。

「全員フルアタック!」
「「「「オオオオオオオオオ!」」」」

 タンクにまわったレイモンドさんを含めたアタッカー陣がラフレシアに向かってそれぞれの武器を振るいまくる。

「キャアアアァァァ…!」

 断末魔のような声を上げてラフレシアがポリゴンのカケラとなって砕け散った。

『戦闘に勝利しました!』
『ファントムはEXPを476獲得しました!』
『【指揮官】のLVが8に上がりました!』
『ゼルはEXPを2857獲得しました!』
『ルーネはEXPを2857獲得しました!』

「おおっ!またレベルアップだ!」
「やったねマモル、お姉ちゃんもレベルアップしたよ!」
「俺らもレベルが上がったし、もうラフレシアは敵じゃねえな」
「レイ、過信は禁物だよ」
「へいへい…」

 NANAさんPTに目をやるとレベルが上がったことに喜んでいた。
 こんな感じで僕とNANAさんのPTは戦闘を繰り返し【惑いの林道】を踏破していった。
 何度も戦闘を重ねていくうちに連携がうまくとれるようになっていってる。
 全体的にレベルも上がってきたし、短い時間でもうこの森最強wのラフレシアを倒せるようになっていた。
 先頭を歩く白黒エルフのコンビは一度も道を間違えることなく、道中に潜む罠(落とし穴)もゼルがいち早く察知し教えてくれた。
 マンドラゴラの花壇?は通る度に緊張したけどなんとか気付かれずに通り抜けられた。
 このまま油断せず進んでいけば問題なく目的地に辿り着けると半ば確信していた。
 

「疲れたぁ…まだ着かねえの…?」
 
 疲労困憊といった感じでsatoruくんが呟いた。
 時刻はもう夕方十七時。
 迷路のような林道をひたすら歩き続けてもうクタクタだ…

「もうじき着くよ」
「ほら頑張れサトル、あとひと踏ん張りだ」

 先頭を歩くジェイクさんとレイモンドさんに励まされたsatoruくんは、嫌々ながらも歩き続けた。
 分岐を右へ左へ進み、エンカウントした魔物と戦闘を行い、奥へ奥へと突き進んでいく。
 日が沈み辺りが暗くなってきた頃には、みんなの口数が少なく顔には疲労の色が浮かんでいた。
 どうでもいいけど疲労っていう状態異常がないのはどういうわけだろう?
 そんな本当にどうでもいいことを考えながら歩いていると、急に目の前が開けた。

「着いたぜ」

 えっ!?
 気がつけば高い木の塀と門が僕達の目の前にそびえ立っていた。
 ちょっと待って!?いつの間に!?
 道が続いていたはずなのに………

「うわっ!急に現れた!?」

 と驚くsatoruくん。
 うん…僕もびっくりだよ…

「アルフヘイムは妖精の森に住まう精霊達が施した結界に守られているんだ」

 ジェイクさんが説明口調でそう言った。

「惑いの林道も結界のひとつで、僕達エルフにしかわからない道標を置いて他の種族を入れないようにしている。その結界を抜けたからアルフヘイムが皆にも見えるようになったというわけ」

 ふーん…まあ、とにかく無事に辿り着いて良かったよ…
 NANAさん達がいなかったらもっと時間がかかっていたと思うし、エンカウントした魔物にヘタしたらやられていたかもしれない。
 それを考えると一緒に行動して良かったと思う。

 門の脇には検閲所らしき小屋が建っていた。
 僕達はそこへ足を向けると中から皮鎧姿のエルフが出てきた。
 門番かな?

「珍しいな、人間種か…」
「ええ、僕はフォレスト族のジェイク・フレン・リョースアールヴ。この子もフォレスト族のルーネ・フレイ・リョースアールヴ。こちらのダークエルフは…」
のレイモンド・ユーリ・スヴァルトアールヴだ」
「彼らは僕の連れです」
「連れねえ…」

 値踏みをするかのような目で僕達を見つめる門番のエルフ。

「精霊鎧の家紋を見る限り本物か…失礼しました。どうぞお連れの方共々お通りください」
「ありがとう」

 ジェイクさんを先頭に僕達は門をくぐった。
 ようやくエルフの王都アルフヘイムへ足を踏み入れることができた。
 朝から出発して着いたのが夜。
 本当に長かったな…(しみじみ)

「ようやく着きましたね兄貴、これからどうしますか?」

 ゼルが振り向き訊ねた。
 とりあえずヴァイスを安全な場所に寝かしたいから宿でもとるか。
 目的地には着いたしNANAさん達ともここで別れたほうがよさそうだ。
 じゃあ僕達はこれで…と言う前にsatoruくんが口を開いた。

「もう疲れたからさ、宿で休みたい。なあ、ニイちゃん達も一緒の宿にしようぜ?」
「え?あ、うん…」
「じゃあ決まりですね!ジェイク、安くてご飯が美味しい宿屋ってないかしら?」
「そうだね、どこがいいかな…?」

 NANAさんに訊ねられたジェイクさんは腕を組み思い当たりそうな宿を考えている。
 ていうか僕はなんで頷いたの!?
 一期一会で、はいさよならお疲れ様でしたでよくない?

「あの…宿に着いたら僕ちょっと別行動とっていいですか?」
「なんだよルーネ。何か用事でもあんのか?」
「用事というか、あの、ここから東の区域に僕の実家があるので、ちょっと寄ってみたいなぁと…」

 申し訳なさそうに言うルーネさん。
 ああ、そういえばルーネさんの家があるのか。

「なんだよ水臭えな。なら俺達もついていくぜ。ね、兄貴」
「え?あ、うん、いいと思うよ?」
「いいんですか!?」

 ルーネさんは嬉しそうな顔をした。

「ならなら、僕の家に泊まっていってください!お願いします!」
「お、おう」
「あ、うん…」

 ものすごい勢いで勧められた僕とゼルは思わず頷いてしまった。
 ていうか、人の家に泊まるって何気に初めてじゃない僕…
 うわっ…なんか緊張してきた…!!!

「いいじゃんルーネん!早速行ってみようぜ!」
「ふふふ、こらサトル慌てないの」
「ルーネの自宅か…高名な鍛治剣士であったベイラ様のご実家だね。行くのは初めてだよ」
「なんだジェイク、身内なのに行ったことねえのか?」
「身内といっても遠縁だからね」

 あれ…?
 なんかNANAさんPTもついていく流れになってるんですけど…:-()

「…むにゃむにゃ…RIP……」

 背負ったヴァイスがなにか寝言を言ったけど、なにを言ったのか聞き取れなかった。








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