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第3章 ソロプレイヤー
第九十二話
しおりを挟む「きゃあああぁぁぁぁぁぁ!!!」
女の人の悲鳴を聞いたヴァイスが声がした方向へ向かって駆け出した。
え、ちょっと、行くの!?
ヴァイスの後を僕は慌てて追いかけた。
行くと絶対トラブルに巻き込まれそう。
今のところそういうイベントはできる限り避けたい僕は追いついたヴァイスの襟首を思いっきり掴んだ。
「はぐっ…!」
首が絞まったのか変な声をあげるヴァイス。
「ちょっと待って。今はできるだけ人目につかないほうがいいよ」
「………俺だけなら大丈夫」
「ごめん、悪いけどそれもダメ」
もしヴァイスがトラブルに巻き込まれて危険な目に遭ったらシャレにならない。
万が一死んだら目も当てられない。
「帰ろうヴァイス。ねっ?」
「………」
ヴァイスは黙って踵を返した。
『ヴァイスの好感度が30下がりました』
そのシステムメッセージを目にした瞬間、僕は言いようのないショックを受けた…
◇
「はぁ………」
狩りからの帰り道、一人僕は何度目かのため息をついた。
ヴァイスには嫌われるし、せっかく捕まえた鹿は逃げてたし、あのあとお互いに気まずくて無言のまま拠点(予定地)に帰ってきた。
話しづらくてちょっとヴァイスから離れたら、ヴァイスはアーデさんとミストルティンさんの三人でどこかに行ったらしく僕一人残されてしまった。
とりあえず僕は逃した鹿のかわりを獲ってこようと思い、一人で狩りに出かけた。
【隠蔽】スキルで鹿に近づきブーメランで鹿をスタンさせた。
その隙に剣でトドメを刺した僕は見事鹿を狩れた。
そのまま剣で鹿を切り裂くと【剥ぎ取り】スキルを習得した。
アイテムストレージが使えないので、その場に【鹿肉】【鹿の皮】【牡鹿の大角】などがばら撒かれるように置かれた。
それを魔法の袋に入れて回収した僕は一人でレベル上げをすることにした。
妖精の森は首なし騎士のデュラハンや木の魔物のトレントしかいなくて、ろくにレベル上げができなかった。
デュラハンはアーデさんの支配下にあるからエンカウントしても無視されるし、トレントはメチャクチャ強くてすぐ逃げた。
ここでソロのレベル上げは無理と思った僕は大森林の方まで行き、そこでレベル上げをした。
ここら辺の魔物はキラーラビットという角の生えたウサギや狼タイプのワーウルフが多くて、なんとかソロで狩れるレベルの魔物だった。
僕はなにも余計なことを考えずにただただ剣を振るい攻撃スキルを使い続けながら、夕方まで狩りを続けた。
おかげでレベルが一上がったし、スキルは長剣スキルの【刺突】が五になった。
そういえば【斬撃】と【連撃】はCSしてるからCSしてない【刺突】を中心に戦闘をこなせばよかったかな。
「はぁ………」
今日は散々な一日だっな…ため息が止まらない。
思ったよりヴァイスに嫌われたことが堪えてるみたいだ。
どうでもいい人に嫌われてもなんとも思わないけど、仲のいい人に嫌われるのはけっこう堪える。
「はぁ………」
足取りが重いまま、僕はとぼとぼと帰り道を歩いた。
拠点に帰るとゼル達が帰ってきていた。
「あ、兄貴、お疲れ様です。先程帰ってきました」
「うん、おかえり…」
「ファントムさん、僕【薬師】になれました!」
「あ、おめでとう」
「これで【付与錬金鍛治師】に一歩近づきました!」
嬉しそうに言うルーネさんを目にして、落ち込んでいた僕の心が癒されていくのを感じた。
「ところで兄貴、お話ししたいことが…」
「え、なに?」
なんか深刻そうな顔をしているゼル。
そこはかとなくイヤな予感が…
「まずはこれを見てください」
そう言ってゼルは一枚の紙を僕に差し出した。
なにこれ?手配書?
「えっ!?」
受け取った僕はそれを見て思わず声を上げた。
WANTED DEAD OR ALIVE
【脱獄囚ファントム】
懸賞金30000G
「………(汗)」
開いた口が塞がらなかった…:-()
「アトラスじゃ兄貴のことを捜してる冒険者や賞金稼ぎがいました」
「あと教会の人も捜してましたよ」
マジか…僕PCに狙われてるの!?
それにしても三万って…何気に高いな。
賞金首のランクで言えばDランクくらいあるんじゃないの?
ご丁寧に僕の人相書きが載っている。
なんか悪そうな似顔絵だ…ていうか写真じゃないのね。
逃走プレイからの賞金首プレイか…(泣)
これはなるべく早く装備とレベルを上げないとヤバい…(慄)
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