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第3章 ソロプレイヤー
第七十五話
しおりを挟むドワーフの国【ドゥリンカザード】
洞窟の先には大きな空間が広がっていてそこに王都ドゥリンカザードがある。
広さ的にはアトラスに匹敵するほどの大きさと公式サイトに記載されていた。
街の至る所に天井を支える複数の石柱があって、街の天井には一定の間隔で設置されているクリスタルのような鉱石が光を発していて街を照らしていた。
光はけっこう明るくてまるで天気のいい昼間のような明るさだった。
レンガのようなモノで作られた建物。道は石畳。
歩きながら街の様子を見てみるとさすがドワーフの国。
背の低い髭を生やしたおじさん面のNPCがそこかしこにいた。
ていうか、女の人も髭生えてるんだ…!?
すれ違った女のドワーフを見かけて、胸の内で驚く僕。
男のドワーフは口元が髭で覆われていて顎髭が胸まで垂れてるくらいに長いけど、女のドワーフの髭は短く刈り揃えられていた。
ぱっと見男女の区別がわかりづらそうだけど、髭の長さと胸の膨らみで大体見分けがつく。
男女ともに太い腕を捲し上げていて筋骨隆々な感じだ。
公式サイトによるとドワーフはSTRとVITが高くて【鍛治師】や【石工】に長けた職業を有していて種族ボーナスが付くらしい。
ちなみに種族ボーナスとはその種族に適した職業やスキル、魔法などの成長を速める効果がある。
だけど何故か僕やゼル達のような人間種には種族ボーナスがないという仕様で、他の種族、エルフとか魔族、竜人族には種族ボーナスがある。
近いうちに実装されるアップデートでレベル上限解放やクエスト配信の他にエルフとドワーフに転生できるようになるらしい。
種族転生は最初に始める際のチュートリアルで職業の他に種族も選択できるようになって、人間種としてもうプレイしているPCは課金すれば種族を変えれるようになるらしい。
課金か…何気に課金推奨するよねこのゲーム。
エルフ一万円。ドワーフ五千円で転生の証を購入すれば、レベルや習得したスキル、魔法などをそのまま移せるみたいだけど、種族ボーナスを考えるとレベル1から始めたほうがいいと思う。
そうなるとまた一から職業やスキルや魔法を構成しないといけなくなるから、最前線でプレイしているPCや無課金勢は転生を避けてそのままプレイすると思う。
僕も興味はあるけどお金ないから転生しないし。
ていうかエルフとドワーフのこの金額差はなんなんだろう?
人気のありそうなエルフは高額で、逆になさそうなドワーフは安いのか?
こういう差別化を図るからエルフとドワーフは仲悪いんじゃないのだろうか?
僕はそんなことを考えながら街を散策していた。
「うーん…」
僕は立ち寄った武器屋で腕を組んで悩んでいた。
目の前にあるウインドウには、この武器屋が取り扱っている武器がずらりと並んでいる。
『【アイアンソード(武器剣種、物理攻撃力+25、加護付)】2000G』
『【鉄の剣(武器長剣種、物理攻撃力+25、加護付)】2300G』
『【ロングソード(武器長剣種、武器攻撃力+25、加護付)】3000G』
『【ダマスカスブレード(武器長剣種、物理攻撃力+40、魔法攻撃力+40、加護付)】10000G』
『【ウーツバスタードソード(武器大剣種、物理攻撃力+66、加護付)】8000G』
『【ミスリルの剣(武器剣種、物理攻撃力+70、魔法攻撃力+60、加護付)】15000G』
『【ミスリルソード(武器長剣種、物理攻撃力+75、魔法攻撃力+65、加護付)】16500G』
etc…。
剣のみで検索してもかなりの数だ。
スクロールしながら見ていくと下は鉄系、上はまだミスリル系の武器までしかない。
いつになったらオリハルコンとかアダマントクラスの上位が解放されるんだろう?
次のアプデかな?いや、次のアプデはレベル上限解放と種族転生、あと追加クエストくらいしか発表されてないから上位はまだか?
「それにしても…なんか強くない?」
普通にアトラスとかで売られている武器よりも高性能な気がする。
「ドワーフが作った武具は人間種が作った武具よりも優れてますから」
とゼルが言った。
「…鍛治を司る神、アウレの眷属が作る物は、神の恩恵が宿る…」
ヴァイスが呟くように言った。
なるほど。ということは種族ボーナスの恩恵は作成した武器にも付くのか。
だから同じ武器でもこっちの方が性能がいいと。
ていうか加護ってなんだろ?
僕は【ロングソード】の項目にある加護の部分をタップしてみた。
『ドワーフ工匠ルドルフの作品。鍛治神アウレの加護が宿った長剣。強化の際、耐久値にもボーナスが付与される』
なるほど…強化する時、耐久力も強化されるってことか。
じゃあ耐久力を選択したら更に耐久力が上がるのかな?
ふと疑問に思ったけど、そのことについては記載されていなかった。
これは要検証かな。
他の加護付きの武器を調べてみたけど鋭利値や速度値など、どれも強化に関するボーナスが付く。
こうなるともうドワーフ産の武器しか使いたくなくなるな。
ミスリル系の武器は魔法攻撃力も付いてるし、ここで装備を整え直すか?
けっこう値段高めだけど、ここに来るまでのレベル上げで懐具合は何気にいいし。
「ああでも、鎧買い直したいしなぁ」
山賊相手に日和ったせいで、僕の装備している鉄の鎧の耐久値がヤバい。
ミスリルの盾も減ってはいるけど、整備すればまだリカバリーできる範囲だ。
武器と違って防具は耐久値の他に重量値という隠しパラメータの二つしかない。
防具の耐久値はダメージを受けすぎたり許容量を上回ると壊れてしまう。
補修などの整備をしないと使い物にならなくなる。
重量値は強化すれば軽くしたり重くしたりできて、PCのAGIに補正がかかったり職業無視で装備できることが可能になる。
僕は武器ばかり鍛えていたから防具の方は基本的なことしかわからない。
さすがに全員分の武器と防具を整えるほどの予算はないし。
今は武器だけにして防具はディーノさん工房借りてメンテでもするか……
「馬鹿野郎!」
そんなことを考えていたその時、店の奥で怒鳴り声が聞こえた。
怒鳴り声がした方へ視線を向けると、カウンターにいるドワーフと客らしき少年がいた。
目立つくらい耳長い。あの少年はエルフか。アイコンを見るとNPCっぽいけど。
椅子に立ち上がってエルフの少年を見下ろしているドワーフのおじさんは怒り心頭って感じでキレていた。
「そこをなんとか…お願いします!」
エルフの少年がその場で土下座した。
え?なに?何事!?
突然の展開に僕は目を白黒させた。
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