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第3章 ソロプレイヤー

第六十九話

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 神殿を後にした僕達はレベル上げにアイゼン村へ向かうことにした。
 色々調べた結果、安全マージンをとれて狩りが出来そうな場所は【龍住まう山脈】がベストだと判断した。
 地下に続く洞窟を抜けた先にドワーフの国もあるみたいだし、レベル上げをしながらドワーフの国に向かおうと思った。
 
 鍛治で有名なドワーフの国ならなにかいい武器や防具があると思うし、鍛治系のイベントもあるかも?
 
 そんなわけで僕達はアトラスの転移門からアイゼン村の転移門まで飛ぶことにした。
 
 でもあれだよね…無駄に広いからまた何キロも歩かないといけないのか…
 それを思うとテンション下がってしまう。
 
「兄貴、山脈に行くなら馬を借りませんか?」
「馬?」
「はい。馬です」

 聞けばアトラスの街の商業区に馬を貸してくれる店があるみたい。
 馬といっても召喚アイテムで召喚する馬らしく、馬で移動できる場所ならどこでも召喚できるらしい。
 料金は一日千Gと割とリーズナブルだ。

「いいねそれ。三人分借りよう。ゼル、案内してくれる?」
「わかりました、こちらです」

 ゼルを先頭に僕達は馬を貸してくれる店に向かった。
 ていうか、そんな便利なモノがあったんだ…全然知らなかったよ。
 攻略サイトの掲示板に載せてみるかと思った僕は歩きスマホならぬ歩きメニューをしながら攻略サイトを閲覧した。
 サイトを見るとそのことはすでに書かれていてちょっと残念に思った。
 ダメだな…こまめにサイトをチェックして新しい情報を仕入れないと。
 歩きメニューをしながら僕はそんなことを思った。
 
 
 その店は馬車を取り扱う店で街の定期馬車を運営している業者の店だった。
 
「邪魔するぜ」

 店に入るとゼルがいきなり横柄な態度になった。

「番頭のジンを呼んでくれや」
「あ、あのどちら様でしょうか?」

 従業員らしい人が恐る恐るゼルに訊ねた。

「なんだお前?見ない顔だな…まあいい。ゼルだ、ゼルが来たと伝えればいい」

 従業員が奥に引っ込むとゼルが僕の方に振り向いた。
 
「すみません兄貴。少々お待ちいただけますか?」
「え、あ、はい…」

 なにこの変わりよう…
 二重人格ですか?ってくらいに豹変するんですけど…

 しばらくすると人の良さそうなNPCひとがやってきた。
 
「これはこれはゼルさん、お久しぶりですねえ。いつ出てきたんですか?」
「ついこの間さ…そんなことより今日は頼みがあってきたんだが…」
「なんでしょう?ゼルさんの頼みならこのジン、多少の無茶は覚悟しております」
「なに、大したことじゃねえよ。お前のとこの【召喚笛】を貸してほしいってだけさ」
「【召喚笛】ですか?」
「ああ。実はよ俺は堅気になって冒険者になったんだ。それでアシが欲しくてな、ここに顔出したんだよ」
「そちらのお二人は、ゼルさんのお仲間で?」

 ジンさんが僕の方に視線を向けた。
 僕はペコリと頭を下げる。

「おうよ。自己紹介が遅れたがこちらの方が俺の兄貴分のファントムさん。そっちがヴィンスだ」

 ゼルは僕達をジンさんに紹介した。
 改めて僕はペコリと頭を下げその隣でヴァイスも頭を下げた。

「兄貴、こいつがこの店の番頭を任されてるジンです。こいつは前の仕事で色々と世話してやってたんですよ」
「ええ。ゼルさんにはお世話になりました」
「そういえば順調か?」
「ええゼルさん。ゼルさんの後任の方が問題なくやってくれているので」
「そうか。まあ、なんかあったら俺に言ってこいよ?」

 ゼルって昔盗賊やってたんだよね?
 ………なんか、ものすごい危険な匂いがするから深く聞くのはやめとこう…

「少々お待ちください」とジンさんは僕達(正確にはゼル)に断りを入れると奥に引っ込んだ。
 すぐにジンさんが戻ってきてゼルに両手を差し出した。
 ジンさんの両手の平には小さな笛が三つ乗っていた。

「ご要望の【召喚笛】です。兄貴分のお方とお仲間の分もご用意させて頂きました」
「すまねえな。で?」

【召喚笛】を受け取ったゼルが値段を訊ねるとジンさんは大げさにかぶりを振った。

「いえいえ!大恩あるゼルさんからお代は頂けません。出所祝いの意味も込めてその【召喚笛】は差し上げます」
「そうか。悪いなジン」
「いえいえ。お気になさらずに」

 …なんか悪い気がするけど、まあいっか。
 目的のモノを手に入れた僕達は店を後にした。
 
 とりあえずアイゼン村に転移して、そこからもらった【召喚笛】で馬を召喚したら馬に乗って【龍住まう山脈】に向かうか。

 これからの予定を頭の中で組み立てていた僕はふとある事に気がついた。
 そういえば僕、馬に乗れないんだけど大丈夫かな…?
 一抹の不安を抱きながら僕達はアイゼン村へ向かった。

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