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第2章 獄中生活
第五十二話
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早速落ちたあと、僕はアーノルドさんにメールを送った。
牢獄で知り合った四人がギルドに加入したいとの旨を送ってみたけど、ぶっちゃけどうなるかわからない。
アーノルドさんのことだから多分OKはもらえると思うけど、一応念の為ちょっとレア職業な【盗賊】が一人いることも伝えた。
VRMMORPGっていうか、RPG系のゲームで【盗賊】という職業はありふれた職業だけど、ここアトランティスはちょっとレアな職業だ。
調べてみると盗賊になる条件のひとつに盗みをすることが必須になっている。
盗賊系のスキルも何々を盗んだり、どこそこに侵入したりしなければ熟練度が上がらない仕様らしい。
知っての通りこのゲームは犯罪防止コードが基本ないくせに犯罪を犯すとほぼ問答無用で捕まって牢獄に入れられる。
盗賊になるには、なにか盗みをして牢獄に一度入らなければいけなくなる。
窃盗は十年以下の懲役、又は五十万以下の罰金。
住居侵入は三年以下の懲役、又は十万以下の罰金に処せられる。
ちなみに罰金は円じゃなくてアトランティスの通貨のGで支払うことになるらしい。
罰金も拒否したり金銭的に支払えないと労役が科せられて牢獄に入れられる。
ここも現実と同じで一日五千円…じゃなくて五千Gの計算で牢獄に収監される。
例えば罰金十万なら、二十日収監されることになる計算だ。
そんな感じで現実と同じ刑期を喰らうから、好き好んでなりたいPCは少ないようだけど、攻略組のうちのギルドとしては【盗賊】は必要な人材だろう。
NPCとはいえ【盗賊】がうちのギルドに入るのはギルド的に美味しいはず…。
「まあ、なるようになるか…」
そう呟いた僕はアーノルドさんの返信を待ちつつ、スマホで求人サイトを見ることにした。
なんにせよ僕は課金して早めに牢獄を出たいし、その為にはなによりまずお金が必要だ。
っていうか、時間軸速めて刑期を短縮するのはいいんだけどあの四人の刑期はどうなるんだろう?
話の中で聞いたところだとたしかカイは一年八ヶ月。
アルフレッドは二年。
ヴァイスは一年六ヶ月。
ゼルは一年四ヶ月。
見事にみんなバラバラの刑期だ。
何事もなければ僕はヴァイスと同じ時期に仮退院できるけど、他のみんなは前後するな。
課金したらみんなの刑期も速まるのか?
うーん………。
考えてみてもわからない。
サイトにも掲示板にも載ってないし、出たとこ勝負な感じだな…。
っていうかPCの中で僕だけがこんなに長い間塀の中にいる気がする。
他のPCを牢獄で見たことがない。
もし牢獄がインスタンスマップだったら他PCのことなんて知りようがないしね。
「とりあえず半年くらい縮めてみようかな?」
熟考した僕はブツブツとそう呟いた。
半年だと一万五千円か…。
僕はスマホを机に置いて、財布と貯金箱を探して机に置いた。
今いくらあるんだろう?
ひい…ふう…みい………
「一万しかない………」
一万だと四ヶ月くらい短縮できるか。
僕の仮退院計画だと新入と前期は約半年いることになってる。
後期半年、仮退院準備房に移るのも半年くらいの期間だった。
今二ヶ月くらいいるから四ヶ月縮めたら後期に移れるか?
「とりあえずウォレットにチャージして四ヶ月ほど縮めてみよう」
それで向こうがどうなるか確認できる。
みんなの刑期も短縮してればそれに越したことないし、僕だけが進んでたらその時考えよう。
「多分大丈夫だと思うけど…」
早速コンビニいって一万円分のカード買ってこよう。
僕は財布に有り金全部入れると立ち上がった。
◇
「なに?どっか行くの?」
玄関で靴を履いていると、ナオがリビングから顔を出して聞いてきた。
「うん。ちょっとコンビニに」
「あたし生クリームプリンね」
「じゃあ金ちょうだい」
「はあ?」
「僕だって金ないんだよ…」
なにその奢ってもらうのが当然みたいな態度。
ナオはチッと舌打ちして
「じゃあ立て替えといて」
「ごめん…。ホントに余裕ないんだ」
チッ!とまた舌打ちして、コイツ使えねー的な表情をするナオ。
すまないマイシスター。お兄ちゃんは本当にお金がないんだよ…:-/
「ちょっと待ってて」
そう言うとナオは顔を引っ込めた。
すぐにリビングから出てきたナオの手には財布。
っていうか妹よ…。随分高そうな長財布だな。ビートンですか。
僕のところにまで来たナオは財布から千円札を取り出した。
っておい…なにその札の厚さ!
ちらりと見えた財布の中身を目にした瞬間、コイツ援助交際でもしてるんじゃないかと思ってしまった。
…いやいや、うちの妹がそんなことをするはずがない。
でもナオは美少女だからな、パパの一人や二人いてもおかしくは………
「はい。これで生クリームプリン3個買ってきて」
「え?ああうん、わかった」
「つうか、なに買い行くの?エロ本?」
「違うよ!アトランティスで課金したいからカード買いに行くだけだよ!」
力の限り否定の叫びをあげる僕。
「嘘。どうせDVD付きのエロ雑誌買うんでしょ?」
ナオは汚物を見るような目で疑わしそうに言った。
「違うから!」
っていうかコンビニのレジにエロ本もってく勇気なんて僕にはない!
大体そういうの買うときはネットで注文するわ!
「人の趣味に口挟む気ないけど、近所のコンビニでエロ本買うのやめてよね。家の恥だから」
「ナオさん…。僕の話聞いてます…?」
ナオは、あっとなにかに気がついたような顔をした。
「そっか、兄貴はエロ同人派だったっけ。つうか、エロ漫画でしか抜けないってどうなの?」
「ちょっと待って。なんで僕がエロ同人派になってるの?」
「だって普通に兄貴の本棚にあるじゃん。シンフ○ギアのエッチな薄い本」
「だああああああ!勝手に人の本棚見るなああああああ!」
「普通にワンピの隣に置いてある時点でアウトでしょ…。見られたくなきゃ隠せば?」
「うるさい!勝手に人の本棚あさるな!っていうかナオだろワンピの90巻からごっそり持っていったの返してよ!」
「まだワノ国編読み終わってないから無理」
「勝手に持ってくな!」
「つうか早くプリン買ってきてくれない?」
「話を逸らすな!僕のワンピを…」
「うるさい。黙れ。蹴るよ?」
情けないことに僕はナオのひと睨みで竦んでしまった…。
身の危険を感じた僕はこれ以上の追求をやめて、踵を返して玄関を開けようとした。
「行ってきます…」
「ねえ…さっき課金って言ってたよね」
振り向くとナオがこちらを見ていた。
バツが悪そうな表情。
「ゲームの課金?」
「うん…まあ」
「ふーん…」
ナオは財布を開けて札を僕の手に握らせた。
「あのゲーム課金高すぎ。これで足りる?」
僕の手には一万円札が四枚に五千円札が一枚。
四万五千円もの大金が握らされていた。
「え、いいよ。そんな…」
「あたしバイトしてる」
突き返す僕を遮ってナオが言った。
「はあ?」
「先月くらいにお母さんのコネでモデルのバイト始めて、昨日給料入ったから貸してあげる」
母さんのコネってモデルか?
レイヤーやってた母さんは昔スカウトされて少し普通のモデルの仕事をしてたって聞いたことあるけど、もしかしてそれ関係かな?
「これでチャラだから」
ナオはそう言うと踵を返してリビングへ歩を進めた。
「ナオ!」
呼び止められたナオは振り向いた。
「ありがとう、必ず返すよ」
「うん期待しないで待ってる」
「行ってきます!」
僕はダッシュで愛車のの松風に乗り込んでキーを差した。
セルを回してアクセルを吹かす。
アクセル全開で素直じゃない妹のために僕は最短で真っ直ぐ一直線にコンビニへ松風を走らせた。
牢獄で知り合った四人がギルドに加入したいとの旨を送ってみたけど、ぶっちゃけどうなるかわからない。
アーノルドさんのことだから多分OKはもらえると思うけど、一応念の為ちょっとレア職業な【盗賊】が一人いることも伝えた。
VRMMORPGっていうか、RPG系のゲームで【盗賊】という職業はありふれた職業だけど、ここアトランティスはちょっとレアな職業だ。
調べてみると盗賊になる条件のひとつに盗みをすることが必須になっている。
盗賊系のスキルも何々を盗んだり、どこそこに侵入したりしなければ熟練度が上がらない仕様らしい。
知っての通りこのゲームは犯罪防止コードが基本ないくせに犯罪を犯すとほぼ問答無用で捕まって牢獄に入れられる。
盗賊になるには、なにか盗みをして牢獄に一度入らなければいけなくなる。
窃盗は十年以下の懲役、又は五十万以下の罰金。
住居侵入は三年以下の懲役、又は十万以下の罰金に処せられる。
ちなみに罰金は円じゃなくてアトランティスの通貨のGで支払うことになるらしい。
罰金も拒否したり金銭的に支払えないと労役が科せられて牢獄に入れられる。
ここも現実と同じで一日五千円…じゃなくて五千Gの計算で牢獄に収監される。
例えば罰金十万なら、二十日収監されることになる計算だ。
そんな感じで現実と同じ刑期を喰らうから、好き好んでなりたいPCは少ないようだけど、攻略組のうちのギルドとしては【盗賊】は必要な人材だろう。
NPCとはいえ【盗賊】がうちのギルドに入るのはギルド的に美味しいはず…。
「まあ、なるようになるか…」
そう呟いた僕はアーノルドさんの返信を待ちつつ、スマホで求人サイトを見ることにした。
なんにせよ僕は課金して早めに牢獄を出たいし、その為にはなによりまずお金が必要だ。
っていうか、時間軸速めて刑期を短縮するのはいいんだけどあの四人の刑期はどうなるんだろう?
話の中で聞いたところだとたしかカイは一年八ヶ月。
アルフレッドは二年。
ヴァイスは一年六ヶ月。
ゼルは一年四ヶ月。
見事にみんなバラバラの刑期だ。
何事もなければ僕はヴァイスと同じ時期に仮退院できるけど、他のみんなは前後するな。
課金したらみんなの刑期も速まるのか?
うーん………。
考えてみてもわからない。
サイトにも掲示板にも載ってないし、出たとこ勝負な感じだな…。
っていうかPCの中で僕だけがこんなに長い間塀の中にいる気がする。
他のPCを牢獄で見たことがない。
もし牢獄がインスタンスマップだったら他PCのことなんて知りようがないしね。
「とりあえず半年くらい縮めてみようかな?」
熟考した僕はブツブツとそう呟いた。
半年だと一万五千円か…。
僕はスマホを机に置いて、財布と貯金箱を探して机に置いた。
今いくらあるんだろう?
ひい…ふう…みい………
「一万しかない………」
一万だと四ヶ月くらい短縮できるか。
僕の仮退院計画だと新入と前期は約半年いることになってる。
後期半年、仮退院準備房に移るのも半年くらいの期間だった。
今二ヶ月くらいいるから四ヶ月縮めたら後期に移れるか?
「とりあえずウォレットにチャージして四ヶ月ほど縮めてみよう」
それで向こうがどうなるか確認できる。
みんなの刑期も短縮してればそれに越したことないし、僕だけが進んでたらその時考えよう。
「多分大丈夫だと思うけど…」
早速コンビニいって一万円分のカード買ってこよう。
僕は財布に有り金全部入れると立ち上がった。
◇
「なに?どっか行くの?」
玄関で靴を履いていると、ナオがリビングから顔を出して聞いてきた。
「うん。ちょっとコンビニに」
「あたし生クリームプリンね」
「じゃあ金ちょうだい」
「はあ?」
「僕だって金ないんだよ…」
なにその奢ってもらうのが当然みたいな態度。
ナオはチッと舌打ちして
「じゃあ立て替えといて」
「ごめん…。ホントに余裕ないんだ」
チッ!とまた舌打ちして、コイツ使えねー的な表情をするナオ。
すまないマイシスター。お兄ちゃんは本当にお金がないんだよ…:-/
「ちょっと待ってて」
そう言うとナオは顔を引っ込めた。
すぐにリビングから出てきたナオの手には財布。
っていうか妹よ…。随分高そうな長財布だな。ビートンですか。
僕のところにまで来たナオは財布から千円札を取り出した。
っておい…なにその札の厚さ!
ちらりと見えた財布の中身を目にした瞬間、コイツ援助交際でもしてるんじゃないかと思ってしまった。
…いやいや、うちの妹がそんなことをするはずがない。
でもナオは美少女だからな、パパの一人や二人いてもおかしくは………
「はい。これで生クリームプリン3個買ってきて」
「え?ああうん、わかった」
「つうか、なに買い行くの?エロ本?」
「違うよ!アトランティスで課金したいからカード買いに行くだけだよ!」
力の限り否定の叫びをあげる僕。
「嘘。どうせDVD付きのエロ雑誌買うんでしょ?」
ナオは汚物を見るような目で疑わしそうに言った。
「違うから!」
っていうかコンビニのレジにエロ本もってく勇気なんて僕にはない!
大体そういうの買うときはネットで注文するわ!
「人の趣味に口挟む気ないけど、近所のコンビニでエロ本買うのやめてよね。家の恥だから」
「ナオさん…。僕の話聞いてます…?」
ナオは、あっとなにかに気がついたような顔をした。
「そっか、兄貴はエロ同人派だったっけ。つうか、エロ漫画でしか抜けないってどうなの?」
「ちょっと待って。なんで僕がエロ同人派になってるの?」
「だって普通に兄貴の本棚にあるじゃん。シンフ○ギアのエッチな薄い本」
「だああああああ!勝手に人の本棚見るなああああああ!」
「普通にワンピの隣に置いてある時点でアウトでしょ…。見られたくなきゃ隠せば?」
「うるさい!勝手に人の本棚あさるな!っていうかナオだろワンピの90巻からごっそり持っていったの返してよ!」
「まだワノ国編読み終わってないから無理」
「勝手に持ってくな!」
「つうか早くプリン買ってきてくれない?」
「話を逸らすな!僕のワンピを…」
「うるさい。黙れ。蹴るよ?」
情けないことに僕はナオのひと睨みで竦んでしまった…。
身の危険を感じた僕はこれ以上の追求をやめて、踵を返して玄関を開けようとした。
「行ってきます…」
「ねえ…さっき課金って言ってたよね」
振り向くとナオがこちらを見ていた。
バツが悪そうな表情。
「ゲームの課金?」
「うん…まあ」
「ふーん…」
ナオは財布を開けて札を僕の手に握らせた。
「あのゲーム課金高すぎ。これで足りる?」
僕の手には一万円札が四枚に五千円札が一枚。
四万五千円もの大金が握らされていた。
「え、いいよ。そんな…」
「あたしバイトしてる」
突き返す僕を遮ってナオが言った。
「はあ?」
「先月くらいにお母さんのコネでモデルのバイト始めて、昨日給料入ったから貸してあげる」
母さんのコネってモデルか?
レイヤーやってた母さんは昔スカウトされて少し普通のモデルの仕事をしてたって聞いたことあるけど、もしかしてそれ関係かな?
「これでチャラだから」
ナオはそう言うと踵を返してリビングへ歩を進めた。
「ナオ!」
呼び止められたナオは振り向いた。
「ありがとう、必ず返すよ」
「うん期待しないで待ってる」
「行ってきます!」
僕はダッシュで愛車のの松風に乗り込んでキーを差した。
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