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第1章 ギルド入会

第三十六話

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 翌日、僕はドンペリキングさんの連絡をうけてアトランティスにログインした。
 どうやら今日冒険者組合にギルドの申請をするらしい。
 というわけでインしたはいいんだけど………

「ギルドネームなににする?」

 冒険者組合に集合しいざ申請のときドンペリキングがそんなことを口にした。
 みんな顔を見合わせて沈黙する。
 僕、アーノルドさん、ちーずプリンさん、ヴィンスさん、見知らぬPCプレイヤー、いちご大福、masato(新規加入者?)そして言った本人であるドンペリキングさんすら口を閉ざして誰かか口を開くのを待っていた。
 僕はみんなの様子をこっそり伺う。
 こういった名前はみんなで考えようとするとラチがあかない。
 ギルドを旗揚げすると決めた最初の人が決めればいいと思う。
 ぶっちゃけどんな名前でもいい。
 あまりセンスを疑うような頭のおかしい名前はどうかと思うけどね(苦笑)

「はい!トーキョーバウンサーでいいと思います!」

 ちーずプリンさん…それは違うゲームで名乗ってた名前です。
 ていうかちーずプリンという名前に聞き覚えはないけどもしかしてTBにいた人かな?

「うーん、ここは傭兵ギルドって感じじゃねーからなあ……ないわ」

 ドンペリキングさんがちーずプリンの意見を却下した。
 ていうかなんかドンペリキングさんが仕切ってるんですけど、ここはギルドを作るって言い出したアーノルドさんが決めるんじゃないの?
 不満に思う僕を他所にちーずプリンさんを皮切りに、みんなそれぞれの考えを言い始めた。

「黒龍騎士団とかは?」

 masatoが言った。
 はい。きました。なんとか騎士団。よくギルドにあるよね(笑)
 ていうかこのPCひと誰?
 普通に我が物顔でドンペリキングさんの隣にいるけど…。
 赤髪のイケメン剣士風だけど、顔が太々しい感じがする。
 第一印象は苦手な部類に入る人だなと思った。
 さらにmasatoの隣にいる女性PCプレイヤーのいちご大福も知らない顔だった。
 神官っぽいローブを着ている金髪の綺麗なお姉さんキャラ。 
 綺麗すぎてまともに直視できないレベルだ…。
 この人も当然の如くここにいる。
 アーノルドさんと僕のだよね?
 釈然としないまま胃がムカムカしてきた…。

「鷹の鷲団」

 どっちやねんw

「超絶暗黒波動滅龍波」

 なにそれ必殺技?

「ウィキ○ディア」

 どこかのネトゲでいますそのギルドw

「自宅警備隊」

 それは僕に言われてるみたいでキツイです…!

「S.O.D」

 なんの略称ですか?

「暗黒の堕天使」

 なんか厨二っぽい名前つける人がいる…。

「ギルドオブナイスセンス」

 ぱっと見いい名前wナイスセンス!

 みんなの意見を心の中でツッコミを呟く僕。
 なかなかギルドの名前が決まらない。やっぱりこうなった。
 これは!って思う名前って難しいよね。

「ファントムっちはなんかないの?」

 ドンペリキングさんが僕に話を振ってきた。

「いや、特に思いつかないです…」
「いやいやファントムっちだけなにも出してないじゃん!なんでもいいから考えようぜ?」

 そう言われても……。

 「トレインとか言うのやめろよ?」
「あははマジ受けるwそれじゃうちらMPK集団とか思われるじゃん」

 考える僕にmasatoと口を挟んできた。
 それを聞いたいちご大福が茶化すように笑う。

「ちょっと。その言い方はないんじゃないんですか?」

 そう言うアーノルドさんの声には怒気が含まれていた。

「えー?だってその人トレインMPKしたファントムってプレイヤーでしょ?なにも間違ってはないじゃん」
「本人にその気はありませんでしたよ。不可抗力です」
「だとしてもコイツのせいでプレイヤーが何人も死んだのは事実だろ?」
「じゃあそれを言ったらファントムさんに指示をしたドンペリキングさんと、それを黙認した上に楽しんだ俺にもがありますよね?」
「いやいやアーノルドさん、俺は別にファントムっちにあそこまでやれとは言ってないっすよ」
「ドンペリキングさん、貴方が連れてきたプレイヤーですよね?なんなんですかコイツの態度。マジでありえないし正直不快なんで?」

 …こんなにブチ切れたアーノルドさん見たの初めてかも?
 かばってくれて嬉しい反面キレたアーノルドさんを見てちょっと引く僕がいた。
 だって超怒ってて怖いんだもん…。言われた僕のムカつきがびっくりして吹フッ飛んだし……=)

「ちょっ、なにマジになってんの?冗談なんだけど…」
「んなつまんねえ言い訳してんじゃねえよ?詫びのひとつも入れられねえなら消えろよ」

 若干引きつった顔で笑ってそう言うmasatoに冷ややかな視線を向けるアーノルドさん。
 全然怒りがおさまる気配がないよ!?ガチでキレてて口調がヤ○ザ屋さんになってますよ!

「まあまあまあまあ落ち着いてくださいよ~アーノルドさん。ここは俺に免じて許してやってくれませんか?」
「………」
「そんな睨まないでくださいよ~!ほらmasatoも謝って。これから同じギルドでやってく仲間なんだからさあ~」
「………すいませんした」

 ドンペリキングさんに言われて不承不承ながらアーノルドさんに頭を下げるmasato。
 でもあの表情かおは強がってるようだけど内心ビビっちゃってる顔だね。
 うんその気持ちはわかる。今のアーノルドさん引くくらい怖いし…。

「俺じゃなくてファントムさんに謝れよ」

 ええー!アーノルドさんそこで僕に振りますか!?

「い、いえ、別に僕は気にしてないんで…」

 アーノルドさんが代わりにキレてくれたおかげで溜飲が下がりまくりましたし。
 ………ここは勇気を出して自虐ネタでも言うか?それで笑いをとって和ませよう!

「あの、ギルドネームなんですけど、電車騎士団とかどうですかね?」
「………………………」

 僕を中心に沈黙が辺りを支配した………。
 スベったー!思いっきりスベったぁぁぁ!
 僕は恥ずかしくなって下を向いて俯いてしまった。
 
「電車騎士団…。いいですね。じゃあそれで」
「ええー!いやいやアーノルドさんそれはないっすよ!?」
「そうだよ!もっと可愛い名前にしましょうよー!」
「イイト思イマス」
「なんか鉄オタなギルドだと思われそうでイヤ」
「それは普通に考えてないでしょ?」

 アーノルドさんが僕の決死のボケに賛成の意を示したことでみんなが一斉に否定し始めた。
 さっきまでの険悪な空気をなかったかのようにみんなでワイワイああでもないこうでもないと騒ぐ始末。
 僕は苦笑いを浮かべてそれを黙って見ていた。
 結局、ギルドネームは決まらなかった。
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