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第1章 ギルド入会
第三十四話
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盾役必須の挑発スキル。
開幕早々僕は使った。
「【咆哮!】」
僕を中心にスキル発動際に起こるエフェクトが一瞬で駆け巡った。
ちなみに言わなくても発動できるけど、パーティーメンバーに使ったことを教えるためにわざとスキル名を口にした。
「なんだテメー!」
「やっちまうぞコラァ!」
「ヒャッハー!」
【喧嘩屋カインの手下A、B、C】が僕に狙いを定めて襲ってきた!
僕は盾を構えて防御態勢をとった。
僕は手下に殴る蹴るの暴行を受けた!
軽すぎる衝撃と振動。
視界の片隅に表示されてる僕らのHPゲージをちらりと確認。
僕のHPはほとんど削られていない。
ダメージ軽微すぎる!ダメージ1~2くらいか?
ていうか手下はホントにモブだな!さすが頭の上にある名前がアルファベットなだけある。
「FU○K!」
汚い言葉を発しながら手にした剣で手下を斬りつけるヴィンスさん。
斬られた手下のHPゲージが一気に半分ほど削れる。
たたらを踏み二三歩後退する手下。
「業火よ爆ぜろ【ファイアーボール】!」
そこにちーずプリンさんの放った火の玉が追撃!
おお魔法!
ちーずプリンさんの魔法がダメージを受けた手下にヒット!
手下のHPが全損して粉々に砕けた。
あれ?手下は消えるのか?
「ファントムサン!余所見シナイヨ!」
「あはい!すみません!」
守りながらぼけっと考え事をしてた僕にヴィンスさんの叱責が飛んだ。
ヴィンスさん怖っ!
「FU○K!F○CK!FU○K!」
「はあっ!やっ!とぅ!」
と汚い言葉を叫びながら僕がタゲを取った手下を斬り続けるヴィンスさん。
そこへ横手からアーノルドさんが大剣を振るう。
ていうかヴィンスさん…。マジで怖いんですけどこの人……。
戦闘になると性格変わるPCなのかな?と思ってる間に手下が全員倒していた。
「この野郎!よくも俺の舎弟を!」
喧嘩屋カインの身体が赤い光に包まれた!
えっ!?あれってまさか…。
「STR上昇!気をつけて!」
僕と同じことを考えていたアーノルドさんがみんなに警告を発してくれた。
手下がやられると発動するスキルか!?
「兄貴!」
「このヤロテメー!」
「どこのもんだゴラァ!」
人垣から新たな手下が乱入!
【喧嘩屋カインの手下D、E、F】が現れた!
「ファントムさんはボスを!モブは俺達が!」
「りょ、了解です!」
「サポートは任せて!守りの障壁よ、【プロテクション】!」
僕の身体が青色の光に包まれた。
【プロテクション】VIT+25%上昇する魔法。…だったっけ?
ちーずプリンさんは見た目攻撃職の【黒魔導士】っぽいけど現在【白魔法】が使える【白魔道士】だ。
本人曰く両方使える【賢者】か【大魔導士】を目指しているとのこと。
【白魔道士】のレベルは2と弱いけど回復魔法の【ヒール】と付与魔法【プロテクション】の二つ使える。
(ナイスバフ!)
僕は革の盾を構えながら喧嘩屋カインの前に立った。
「死ねやコラ!」
カインの右ストレート!
盾を構えていたけど、あまりの迫力に僕は反射的に目を瞑ってしまった。
「っ!?」
かなりの衝撃!
大きい振動が受けた盾から全身に伝わっていく。
おお…ブルブルする。(けっこう気持ちいい///)
僕のHPゲージが二割ほど削られた。
ボスと手下のレベルの差がすごすぎるんですけど!?
攻撃力上昇したとはいえこれが一番弱い賞金首なの!?
「ファントムさん回復いる?」
後ろでちーずプリンさんの声がした。
でもまだ攻撃受けて硬直してるから声が出ない!
「もー!返事してよー!」
「ちーずプリンさん回復!」
新手の手下と戦っていたアーノルドさんが喧嘩屋カインの追撃を防ぐために僕を助けに入ってくれた。
アーノルドさんが喧嘩屋カインに向かって大剣を振り下ろす。
「クソが!」
喧嘩屋カインはアーノルドさんの攻撃を腕でガードした。
カインのHPゲージが三割ほど削れた!
おお!けっこうダメージ受けたな!案外VIT低い?
「慈愛の光よ【ヒール】!」
ちーずプリンさんの回復魔法が僕の受けたダメージを癒していく。
ていうかちーずプリンさん。事前に作戦会議して決めたこと忘れてない?
僕が盾役として敵のタゲを取る。取りきれなかったらヴィンスさんも盾役として参戦。ヴィンスさんはまだ【咆哮】を習得してないので攻撃してヘイトを稼ぐ。
前衛のアーノルドさん攻撃に専念手下を倒してボーナスを稼ぐ。
唯一の後衛ちーずプリンさんは攻撃魔法で攻撃しつつ僕とヴィンスさんのサポートをする。
…はずなんだけどヴィンスさんはヘイト稼いでないよね?ていうか普通に手下倒してるよね?
まあそれは別にいいんだけど、ちーずプリンさんがちょっと問題か?
「任せて」って自信満々に言ってたくせに状況把握ができてない!?と思ってるうちに硬直が解けた。
大体5秒くらいか?思ったより長い。追撃受けてボコられてたら死んでたかも?
「硬直5!バフ付きで2割!ボスのDPSに注意!」
僕は喧嘩屋カインに受けた攻撃をみんなに聞こえるように大声を出して叫んだ。
「ごめんファントムさーん!」
ちーずプリンさんが後ろで叫び返してきた。
「でぃーぴーえすってなんだっけ?」
僕はコケそうになった。
「コノ場合ノDPSハ、ボスノ攻撃ヲ受ケルト、5秒動ケナイ。コンボデ喰ラウト危ナイヨ。トイウ意味」
ヴィンスさんが代わりにちーずプリンさんに教えてくれた。
なんか説明が微妙だけど、まあ大体同じような意味だから間違ってはいないからスルー。
「ふーん。私後衛だから喰らわないけど、わかった了解でーす!」
もしかしてちーずプリンさんはこういうゲームは経験少ないのかもしれない。
次はもっとわかりやすく言おうと僕は思った。
「アーノルドさん!」
僕が喧嘩屋カインと殴り合ってるアーノルドさんに声をかけると、アーノルドさんは大剣を横薙ぎに振るい後ろへ退がった。
僕はクールタイムの終えた【咆哮】を発動させて二人の空いた間に割り込んだ。
「漢のタイマンに割り込むんじゃねー!」
キレた喧嘩屋カインの蹴りが僕に向かって放たれた!
僕は盾でパリングを試みた。
蹴りが思いのほか鋭くて盾で完全に受け流すことができなかった。
けどダメージは軽減できた。
ダメージで受ける衝撃と振動も硬直するほど強くはない。
僕はのまま盾を前面に構えて、喧嘩屋カインの目の前に立った。
「アーノルドさん回復する?」
「俺はいいですからファントムさんのサポートに!HPが半分きらないように気をつけて見ててください!あとバフも忘れずに!クールタイムも考慮して魔法を!」
「え~!そんなに言われてもわからないよ~…。でも了解でーす!」
………ヤバい。果てしなく不安だ…。
なるべく攻撃喰らわないように立ち回らないと…。
攻撃パターン分析と時間稼ぎも含めた僕の十八番、定番の戦法を行うことにした。
僕は対峙する喧嘩屋カインとの間合いを計りながら、ジリジリと反時計周りに回り始めた。
喧嘩屋カインがファイティングポーズをとったまま僕に突っ込んできた!
(近接攻撃パンチとキック。火力はパンチの方が強い。手下がやられるとSTR上昇。重ねがけの兆候なし。パンチはモーション大きい。回避可能。キックはモーション速い。特に前蹴り注意)
僕は喧嘩屋カインの攻撃を躱しながら敵の攻撃を分析していく。
隙を突かれて強いダメージを受ける度に、アーノルドさんの素早い指示を受けてちーずプリンさんの【ヒール】が飛んできた。
心の中で感謝しながら僕は敵の攻撃パターンを見極めていった。
「オラ死ねやクソが!」
(左ジャブ2…右ストレート…1。1秒隙。なっ………!一気に距離を詰めてからのコンビネーション。っ………。左からのボディ、顔へ右フック。左のアッパーか?最後のは把握できなかった…!)
今のはダメージが大きい!ディレイした!
硬直して動けなくなってしまった僕へ追撃をかけるカイン!
「攻撃して!」
「業火よ爆ぜろ【ファイアーボール】!」
アーノルドさんが叫んだ。
ちーずプリンさんの攻撃魔法が喧嘩屋カインの足を止めた!
GJアーノルドさん!ちーずプリンさん!
「FU○K!」
「【斬撃】!」
ヴィンスさんとアーノルドさんが喧嘩屋カインの手下PとQを同時に倒した。
残りの手下はRのみ。
ていうかいつの間にそんなに手下倒したの!?
喧嘩屋カインの相手をしている間にアーノルドさんとヴィンスさんが雑魚モブをかなりのペースで倒していた!
雑魚なだけあって二、三撃で倒せるみたいだけど二人の戦い方が全然違う。
ヴィンスさんは手当たり次第に手下を襲ってる感じで周りが見えてない気がする。
盾役のタンクを目指してるっぽいけどそんな戦い方をしているようじゃタンクは難しいと思う。
その点アーノルドさんは前衛のアタッカーだけど周りをよく見ている。
僕は挑発スキルで賞金首とその手下のタゲを集めて敵の攻撃を集中させている。
アーノルドさんは僕の邪魔をする手下を優先的に潰している。
ヴィンスさんはそういう所を見ていない。
アーノルドさんのフォローのおかげで僕は手下に対する警戒を一段階落として、その分をボスの賞金首に集中できている。
もちろん油断は禁物だけど、ネトゲ時代からアーノルドさんとパーティーを組むことが多かったからお互いの思考がなんとなく読める。
だから僕は安心して賞金首に集中できる(さっきは賞金首に油断したけどねw))
まだ慣れてない感じのちーずプリンさんの指示はアーノルドさんに丸投げだ。
ホントは僕が言わなきゃいけないのかもしれないけど、なんか言いづらいから言ってくれるアーノルドさんに甘えることにした。
「ファントムさんに回復を!」
「了解でーす!慈愛の光よ【ヒール】!」
「そろそろファントムさんのバフが解けます!クールタイム過ぎたらかけ直してください!」
「はーい!了解でーす!」
ほらね(笑)こうやって的確な指示を出してくれる。
ぶっちゃけボスの相手で精一杯だから代わりに指示を出してくれるのはホントに助かる。
「オラアアア!」
喧嘩屋カインの右ストレートを左手に持った盾でパリングした僕は右手に持った剣を突き出した。
「ぐはあああ!」
剣からいい感触とともにカインがノックバックした。
うん?普通に突いただけなんだけど…?クリティカルでも入ったのかな?
喧嘩屋カインのHPゲージが残り二割をきっている。
五割以上あったのに…。やっぱり今の感触はクリティカルかな?
これだと強い攻撃かスキル一撃で死ぬんじゃないの?
…もう攻撃は控えて防御に専念するか。
チクチク攻撃し続けたら倒しちゃいそうだし。
ちらりとアーノルドさんのほうを向く。
アーノルドさんは無限ポップする手下を大剣で振るってまた一体倒したところだった。
その近くでヴィンスさんが剣で倒れている手下を刺していた。
「KI○L!KI○L!KI○L!剣デKI○L!」
ザクザク剣で刺して倒したヴィンスさん…。
ていうかファ○クからキ○になってる…(怖っ!)
「おおコラ!」
「いい加減にしろよクソ野郎ども!」
「ぶっ殺すぞクラァ!」
喧嘩屋カインの手下V、W、Xが乱入してきた。
…ってV、W、X!?
頭の中で素早く計算する僕。
もう21体倒してるよこの人達…!
「ファントムさんZまでいきます!」
そう言ってアーノルドさんは新たに乱入してきた手下に向かっていった。
「YZデテコイヤアアア!」
狂ったように叫びながらヴィンスさんも手下に向かって特攻していく。
「メッチャクチャだなあのPC……」
そう呟いた僕はあと一踏ん張りだと心の中で気合いを入れ直して喧嘩屋カインと対峙した。
無限ポップする賞金首の手下はその後乱入してきたY、Zの二体で打ち止めだった。
誰だよ無限ポップするっていった最初にPCは?
ちゃんと検証してから人に話せよ。僕達鵜呑みにしちゃったじゃんwww
「テメーらァァァ!よくも舎弟達をォォォ!」
怒りと悲しみの入り混じった慟哭する声をあげる喧嘩屋カイン。
その隙をついて僕はトドメを刺すべく剣を突き出した。
「がっ!」
僕の剣がカインの胸に当たりカインのHPがゼロになった。
仰向けになって倒れる喧嘩屋カイン。
僕らは賞金首【喧嘩屋カイン】を倒した。
開幕早々僕は使った。
「【咆哮!】」
僕を中心にスキル発動際に起こるエフェクトが一瞬で駆け巡った。
ちなみに言わなくても発動できるけど、パーティーメンバーに使ったことを教えるためにわざとスキル名を口にした。
「なんだテメー!」
「やっちまうぞコラァ!」
「ヒャッハー!」
【喧嘩屋カインの手下A、B、C】が僕に狙いを定めて襲ってきた!
僕は盾を構えて防御態勢をとった。
僕は手下に殴る蹴るの暴行を受けた!
軽すぎる衝撃と振動。
視界の片隅に表示されてる僕らのHPゲージをちらりと確認。
僕のHPはほとんど削られていない。
ダメージ軽微すぎる!ダメージ1~2くらいか?
ていうか手下はホントにモブだな!さすが頭の上にある名前がアルファベットなだけある。
「FU○K!」
汚い言葉を発しながら手にした剣で手下を斬りつけるヴィンスさん。
斬られた手下のHPゲージが一気に半分ほど削れる。
たたらを踏み二三歩後退する手下。
「業火よ爆ぜろ【ファイアーボール】!」
そこにちーずプリンさんの放った火の玉が追撃!
おお魔法!
ちーずプリンさんの魔法がダメージを受けた手下にヒット!
手下のHPが全損して粉々に砕けた。
あれ?手下は消えるのか?
「ファントムサン!余所見シナイヨ!」
「あはい!すみません!」
守りながらぼけっと考え事をしてた僕にヴィンスさんの叱責が飛んだ。
ヴィンスさん怖っ!
「FU○K!F○CK!FU○K!」
「はあっ!やっ!とぅ!」
と汚い言葉を叫びながら僕がタゲを取った手下を斬り続けるヴィンスさん。
そこへ横手からアーノルドさんが大剣を振るう。
ていうかヴィンスさん…。マジで怖いんですけどこの人……。
戦闘になると性格変わるPCなのかな?と思ってる間に手下が全員倒していた。
「この野郎!よくも俺の舎弟を!」
喧嘩屋カインの身体が赤い光に包まれた!
えっ!?あれってまさか…。
「STR上昇!気をつけて!」
僕と同じことを考えていたアーノルドさんがみんなに警告を発してくれた。
手下がやられると発動するスキルか!?
「兄貴!」
「このヤロテメー!」
「どこのもんだゴラァ!」
人垣から新たな手下が乱入!
【喧嘩屋カインの手下D、E、F】が現れた!
「ファントムさんはボスを!モブは俺達が!」
「りょ、了解です!」
「サポートは任せて!守りの障壁よ、【プロテクション】!」
僕の身体が青色の光に包まれた。
【プロテクション】VIT+25%上昇する魔法。…だったっけ?
ちーずプリンさんは見た目攻撃職の【黒魔導士】っぽいけど現在【白魔法】が使える【白魔道士】だ。
本人曰く両方使える【賢者】か【大魔導士】を目指しているとのこと。
【白魔道士】のレベルは2と弱いけど回復魔法の【ヒール】と付与魔法【プロテクション】の二つ使える。
(ナイスバフ!)
僕は革の盾を構えながら喧嘩屋カインの前に立った。
「死ねやコラ!」
カインの右ストレート!
盾を構えていたけど、あまりの迫力に僕は反射的に目を瞑ってしまった。
「っ!?」
かなりの衝撃!
大きい振動が受けた盾から全身に伝わっていく。
おお…ブルブルする。(けっこう気持ちいい///)
僕のHPゲージが二割ほど削られた。
ボスと手下のレベルの差がすごすぎるんですけど!?
攻撃力上昇したとはいえこれが一番弱い賞金首なの!?
「ファントムさん回復いる?」
後ろでちーずプリンさんの声がした。
でもまだ攻撃受けて硬直してるから声が出ない!
「もー!返事してよー!」
「ちーずプリンさん回復!」
新手の手下と戦っていたアーノルドさんが喧嘩屋カインの追撃を防ぐために僕を助けに入ってくれた。
アーノルドさんが喧嘩屋カインに向かって大剣を振り下ろす。
「クソが!」
喧嘩屋カインはアーノルドさんの攻撃を腕でガードした。
カインのHPゲージが三割ほど削れた!
おお!けっこうダメージ受けたな!案外VIT低い?
「慈愛の光よ【ヒール】!」
ちーずプリンさんの回復魔法が僕の受けたダメージを癒していく。
ていうかちーずプリンさん。事前に作戦会議して決めたこと忘れてない?
僕が盾役として敵のタゲを取る。取りきれなかったらヴィンスさんも盾役として参戦。ヴィンスさんはまだ【咆哮】を習得してないので攻撃してヘイトを稼ぐ。
前衛のアーノルドさん攻撃に専念手下を倒してボーナスを稼ぐ。
唯一の後衛ちーずプリンさんは攻撃魔法で攻撃しつつ僕とヴィンスさんのサポートをする。
…はずなんだけどヴィンスさんはヘイト稼いでないよね?ていうか普通に手下倒してるよね?
まあそれは別にいいんだけど、ちーずプリンさんがちょっと問題か?
「任せて」って自信満々に言ってたくせに状況把握ができてない!?と思ってるうちに硬直が解けた。
大体5秒くらいか?思ったより長い。追撃受けてボコられてたら死んでたかも?
「硬直5!バフ付きで2割!ボスのDPSに注意!」
僕は喧嘩屋カインに受けた攻撃をみんなに聞こえるように大声を出して叫んだ。
「ごめんファントムさーん!」
ちーずプリンさんが後ろで叫び返してきた。
「でぃーぴーえすってなんだっけ?」
僕はコケそうになった。
「コノ場合ノDPSハ、ボスノ攻撃ヲ受ケルト、5秒動ケナイ。コンボデ喰ラウト危ナイヨ。トイウ意味」
ヴィンスさんが代わりにちーずプリンさんに教えてくれた。
なんか説明が微妙だけど、まあ大体同じような意味だから間違ってはいないからスルー。
「ふーん。私後衛だから喰らわないけど、わかった了解でーす!」
もしかしてちーずプリンさんはこういうゲームは経験少ないのかもしれない。
次はもっとわかりやすく言おうと僕は思った。
「アーノルドさん!」
僕が喧嘩屋カインと殴り合ってるアーノルドさんに声をかけると、アーノルドさんは大剣を横薙ぎに振るい後ろへ退がった。
僕はクールタイムの終えた【咆哮】を発動させて二人の空いた間に割り込んだ。
「漢のタイマンに割り込むんじゃねー!」
キレた喧嘩屋カインの蹴りが僕に向かって放たれた!
僕は盾でパリングを試みた。
蹴りが思いのほか鋭くて盾で完全に受け流すことができなかった。
けどダメージは軽減できた。
ダメージで受ける衝撃と振動も硬直するほど強くはない。
僕はのまま盾を前面に構えて、喧嘩屋カインの目の前に立った。
「アーノルドさん回復する?」
「俺はいいですからファントムさんのサポートに!HPが半分きらないように気をつけて見ててください!あとバフも忘れずに!クールタイムも考慮して魔法を!」
「え~!そんなに言われてもわからないよ~…。でも了解でーす!」
………ヤバい。果てしなく不安だ…。
なるべく攻撃喰らわないように立ち回らないと…。
攻撃パターン分析と時間稼ぎも含めた僕の十八番、定番の戦法を行うことにした。
僕は対峙する喧嘩屋カインとの間合いを計りながら、ジリジリと反時計周りに回り始めた。
喧嘩屋カインがファイティングポーズをとったまま僕に突っ込んできた!
(近接攻撃パンチとキック。火力はパンチの方が強い。手下がやられるとSTR上昇。重ねがけの兆候なし。パンチはモーション大きい。回避可能。キックはモーション速い。特に前蹴り注意)
僕は喧嘩屋カインの攻撃を躱しながら敵の攻撃を分析していく。
隙を突かれて強いダメージを受ける度に、アーノルドさんの素早い指示を受けてちーずプリンさんの【ヒール】が飛んできた。
心の中で感謝しながら僕は敵の攻撃パターンを見極めていった。
「オラ死ねやクソが!」
(左ジャブ2…右ストレート…1。1秒隙。なっ………!一気に距離を詰めてからのコンビネーション。っ………。左からのボディ、顔へ右フック。左のアッパーか?最後のは把握できなかった…!)
今のはダメージが大きい!ディレイした!
硬直して動けなくなってしまった僕へ追撃をかけるカイン!
「攻撃して!」
「業火よ爆ぜろ【ファイアーボール】!」
アーノルドさんが叫んだ。
ちーずプリンさんの攻撃魔法が喧嘩屋カインの足を止めた!
GJアーノルドさん!ちーずプリンさん!
「FU○K!」
「【斬撃】!」
ヴィンスさんとアーノルドさんが喧嘩屋カインの手下PとQを同時に倒した。
残りの手下はRのみ。
ていうかいつの間にそんなに手下倒したの!?
喧嘩屋カインの相手をしている間にアーノルドさんとヴィンスさんが雑魚モブをかなりのペースで倒していた!
雑魚なだけあって二、三撃で倒せるみたいだけど二人の戦い方が全然違う。
ヴィンスさんは手当たり次第に手下を襲ってる感じで周りが見えてない気がする。
盾役のタンクを目指してるっぽいけどそんな戦い方をしているようじゃタンクは難しいと思う。
その点アーノルドさんは前衛のアタッカーだけど周りをよく見ている。
僕は挑発スキルで賞金首とその手下のタゲを集めて敵の攻撃を集中させている。
アーノルドさんは僕の邪魔をする手下を優先的に潰している。
ヴィンスさんはそういう所を見ていない。
アーノルドさんのフォローのおかげで僕は手下に対する警戒を一段階落として、その分をボスの賞金首に集中できている。
もちろん油断は禁物だけど、ネトゲ時代からアーノルドさんとパーティーを組むことが多かったからお互いの思考がなんとなく読める。
だから僕は安心して賞金首に集中できる(さっきは賞金首に油断したけどねw))
まだ慣れてない感じのちーずプリンさんの指示はアーノルドさんに丸投げだ。
ホントは僕が言わなきゃいけないのかもしれないけど、なんか言いづらいから言ってくれるアーノルドさんに甘えることにした。
「ファントムさんに回復を!」
「了解でーす!慈愛の光よ【ヒール】!」
「そろそろファントムさんのバフが解けます!クールタイム過ぎたらかけ直してください!」
「はーい!了解でーす!」
ほらね(笑)こうやって的確な指示を出してくれる。
ぶっちゃけボスの相手で精一杯だから代わりに指示を出してくれるのはホントに助かる。
「オラアアア!」
喧嘩屋カインの右ストレートを左手に持った盾でパリングした僕は右手に持った剣を突き出した。
「ぐはあああ!」
剣からいい感触とともにカインがノックバックした。
うん?普通に突いただけなんだけど…?クリティカルでも入ったのかな?
喧嘩屋カインのHPゲージが残り二割をきっている。
五割以上あったのに…。やっぱり今の感触はクリティカルかな?
これだと強い攻撃かスキル一撃で死ぬんじゃないの?
…もう攻撃は控えて防御に専念するか。
チクチク攻撃し続けたら倒しちゃいそうだし。
ちらりとアーノルドさんのほうを向く。
アーノルドさんは無限ポップする手下を大剣で振るってまた一体倒したところだった。
その近くでヴィンスさんが剣で倒れている手下を刺していた。
「KI○L!KI○L!KI○L!剣デKI○L!」
ザクザク剣で刺して倒したヴィンスさん…。
ていうかファ○クからキ○になってる…(怖っ!)
「おおコラ!」
「いい加減にしろよクソ野郎ども!」
「ぶっ殺すぞクラァ!」
喧嘩屋カインの手下V、W、Xが乱入してきた。
…ってV、W、X!?
頭の中で素早く計算する僕。
もう21体倒してるよこの人達…!
「ファントムさんZまでいきます!」
そう言ってアーノルドさんは新たに乱入してきた手下に向かっていった。
「YZデテコイヤアアア!」
狂ったように叫びながらヴィンスさんも手下に向かって特攻していく。
「メッチャクチャだなあのPC……」
そう呟いた僕はあと一踏ん張りだと心の中で気合いを入れ直して喧嘩屋カインと対峙した。
無限ポップする賞金首の手下はその後乱入してきたY、Zの二体で打ち止めだった。
誰だよ無限ポップするっていった最初にPCは?
ちゃんと検証してから人に話せよ。僕達鵜呑みにしちゃったじゃんwww
「テメーらァァァ!よくも舎弟達をォォォ!」
怒りと悲しみの入り混じった慟哭する声をあげる喧嘩屋カイン。
その隙をついて僕はトドメを刺すべく剣を突き出した。
「がっ!」
僕の剣がカインの胸に当たりカインのHPがゼロになった。
仰向けになって倒れる喧嘩屋カイン。
僕らは賞金首【喧嘩屋カイン】を倒した。
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