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第十三話
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下水道の中は真っ暗で、マリアさんが用意してくれていた【ランプ】がなければ早々に引き返すことになっていただろう。
マリアさん有能!超使える!と僕は心の中でマリアさんに喝采をおくったことは内緒だ。
(こういうダンジョンは【ランプ】必須なんだ…)
帰ったら買おうと心のメモに書き留めて、マリアさん先導のもと下水道を進んで行く。
下水道の中は高さ3メートルくらいのトンネルになっている。
下水はそんなに溜まってなく、くるぶしくらいの水深で緩やかに流れていた。
下水の臭いニオイはあまり感じなかった。
だから下水=汚物という図式を思い出さなければそんなに抵抗はなかった。
【ランプ】で周囲を照らしているけど、流れてる下水の色がよくわからないから汚いってイメージが湧かないのもある。
しばらく歩いていると分かれ道に遭遇した。
右と左に下水道が分かれている。
「どちらへ行きましょうか?ファントムさん」
マリアさんが僕のほうに目を向けて問いかけてきた。
「そうですね…」
マリアさんから視線をそらした僕は、分かれ道に視線を向けた。
どっちに行こうか?
視界のMAPは先が記載されていない。
こういうダンジョン?は足で稼いでMAPを作れということなんだろう。
普通に家でお菓子を食べながらコントローラーをいじっていた時は、適当に歩きまわってMAPを埋めてたんだけど、仮想現実世界でそれはちょっとやりたくない…。
自動マッピングでひたすら歩くのは苦行以外のなにものでもないでしょ?(笑)
そんな時、マリアさんが緊張した声を上げた。
「ファントムさん敵です!」
なんですと!
左側の下水道から、いくつかのの影が蠢いていた!
敵対を示す赤ゲージが三つ!
「あれはワーラットです!汚物の中にいるのを好むモンスターてす!」
説明ありがとうマリアさん。
近づいてきたワーラットの姿をようやくはっきりと見えるようになってきた。
小型犬くらいの大きさのネズミだな。
ネズミにしては大きすぎる、なんか怖っ!
「よ、よし。ここは試しに…」
ちょっと怖いけど、借りた【ロングソード+1】の試し斬りをしてみようと構えたその時………
「せいやああああああ!!!」
マリアさんがワーラットに向かって突っ込んでいった!
「ウソ!?」
【ランプ】放り投げて突っ込んでいったマリアさんに驚く僕。
マリアさんは両手に持った大剣【バスターソード+6】をすくい上げるように振り向いた!
「「「ちゅちゅぅぅぅううう!!!」」」
派手な水しぶきとともにワーラットの断末魔が聞こえた。
ワーラットの赤ゲージ三本が一瞬で減り、キラキラとポリゴンのカケラと化した。
「ふう…」と息をつき、爽やかな笑みを浮かべて【バスターソード+6】を肩に置くマリアさん。
「………………」
僕は開いた口が塞がらなかった…。
なにあれ…?一撃ですか…。一撃で三体一気に倒しちゃいましたよこのコ……。
アホみたいにメチャクチャ強いんですけど…!?
『ワーラットAを倒した!』
『ワーラットBを倒した!』
『ワーラットCを倒した!』
『パーティーメンバーそれぞれにEXPを6獲得しました』
テキストメッセージが視界に映る。
しかし僕は驚きが抜けずに、ただ呆然としていた。
驚きのあまりフリーズしている僕を尻目に、マリアさんは放り投げた【ランプ】を拾った。
「ファントムさん、どちらへ行きましょうか?」
何事もなかったかのように笑顔で問いかけるマリアさん。
僕は「ははは…」と引きつった笑みを浮かべることしかできなかった…。
下水道での初戦闘、ワーラットを見事倒した僕達は、右の分かれ道へと進むことにした。
左の分かれ道はワーラットが来たから、逆に右にしただけなんだけど、進んですぐにモンスターとエンカウントしてしまった!
「せいやああああああ!!!」
裂帛の気合いを込めて放たれたマリアさんの大剣が煌めく!
『ワーラットを倒した!』
『パーティーメンバーそれぞれにEXPを4獲得しました』
「せいやああああああ!!!」
『ワーラットを倒した!』
『パーティーメンバーそれぞれにEXPを4獲得しました』
『ファントムのLVが3に上がりました!SPを3獲得しました』
「オオオ…!」
「きゃあああ!」
「はっ!ゾンビ!神よ我に聖なる力を!【斬撃(光属性)】せいやああああああ!!!」
『ゾンビを倒した!』
『パーティーメンバーそれぞれにEXPを8獲得しました』
『マリアは大剣熟練度を3獲得しました』
「ちゅちゅー!」
「またワーラットですか!せいやああああああ!!!」
『ワーラットを倒した!』
『パーティーメンバーそれぞれにEXPを4獲得しました』
『マリアのLVが5に上がりました!SPを5獲得しました』
「きゃああああああ!!!」
「むむ!?今度は大軍で来ましたね。負けません!せいやああああああ!!!」
『ゾンビを倒した!』
『スケルトンを倒した!』
『ワーラットを倒した!』
入り組んだ下水道の探索を進みながら、マリアさん無双が続く。
巨大ネズミのワーラットが紙のように斬り裂き光カケラとなって砕けていく。
ゾンビが現れたとき、思わず僕は叫んでしまったけど、マリアさんがかけ声とともに速攻で粉砕してしまった。
スケルトンが現れたときもゾンビと同じで以下同文………。
そして今、下水道いっぱいに群がるモンスター大軍をマリアさん一人で片付けてしまった…。
『パーティーメンバーそれぞれにEXPを10獲得しました』
『ファントムは【指揮官】のスキルを習得しました』
なにもせずに僕のレベルが上がってしまった。
下水道に入る前はレベル2だったのに、この短時間で3になってしまった。
【アトランティス】の戦闘の経験値は、パーティーメンバーに等しく分割されるわけだから、楽してパワーレベリングするのにはいいかもしれないけど、これはちょっといただけない。
【アトランティス】はレベルのほかにスキルがある。
戦闘で使うスキルは、戦闘でスキルを使わないとスキル経験値、熟練度が溜まらない。
これじゃあ、レベルは上がるけどスキルが上がらないよ…。
それなのに、なんかよくわからないスキル得たし…。
なに【指揮官】って?
僕はメニューを開き、スキル一覧に目を通した。
僕は【指揮官】と表示されている箇所をタップしてみた。
【指揮官】LV:1
下級特殊スキル。
戦闘時パーティー内にいるNPCのステータスを3%上昇させるパッシブスキル。
これは、僕がなにもしてないから得たスキルなのか?
こんな初日の序盤で特殊スキル習得できるとは思わなかったよ…。
ていうか別に指揮してないんですけど…(失笑)
それはともかく、このスキルは戦闘になるとマリアさんのステータスが3%上がるのか…。
「うーん…。困ったぞ……」
【指揮官】スキルでマリアさんが少しとはいえ強くなるのか。
これじゃあ僕の出る幕全然なくない?
あまりのマリアさんの無双っぷりに、僕はグチっぽく呟いてしまった。
ていうかこんなに強いんだったら、一人で助けにいけるでしょ?依頼出す必要なくない?と、身もふたもないことを思ってしまった。
「せめて自分で操作できるアクティブスキルが良かったな…」
パッシブスキルじゃ止めようがない。
………。
よし、ここは勇気を出して、「僕も戦うから少しはモンスター残しといて」とお願いするしかないか…。
(言いづらいなあ…)
でもこのままじゃなにもしないまま終わる。
せっかく武器屋のおじさんに借りた武器が無駄になってしまうし…。
はあ…。仮想体なのに胃のところがキリキリする。
小首を傾げてこちらを見つめているマリアさんのもとに、僕は重い足を動かした。
マリアさん有能!超使える!と僕は心の中でマリアさんに喝采をおくったことは内緒だ。
(こういうダンジョンは【ランプ】必須なんだ…)
帰ったら買おうと心のメモに書き留めて、マリアさん先導のもと下水道を進んで行く。
下水道の中は高さ3メートルくらいのトンネルになっている。
下水はそんなに溜まってなく、くるぶしくらいの水深で緩やかに流れていた。
下水の臭いニオイはあまり感じなかった。
だから下水=汚物という図式を思い出さなければそんなに抵抗はなかった。
【ランプ】で周囲を照らしているけど、流れてる下水の色がよくわからないから汚いってイメージが湧かないのもある。
しばらく歩いていると分かれ道に遭遇した。
右と左に下水道が分かれている。
「どちらへ行きましょうか?ファントムさん」
マリアさんが僕のほうに目を向けて問いかけてきた。
「そうですね…」
マリアさんから視線をそらした僕は、分かれ道に視線を向けた。
どっちに行こうか?
視界のMAPは先が記載されていない。
こういうダンジョン?は足で稼いでMAPを作れということなんだろう。
普通に家でお菓子を食べながらコントローラーをいじっていた時は、適当に歩きまわってMAPを埋めてたんだけど、仮想現実世界でそれはちょっとやりたくない…。
自動マッピングでひたすら歩くのは苦行以外のなにものでもないでしょ?(笑)
そんな時、マリアさんが緊張した声を上げた。
「ファントムさん敵です!」
なんですと!
左側の下水道から、いくつかのの影が蠢いていた!
敵対を示す赤ゲージが三つ!
「あれはワーラットです!汚物の中にいるのを好むモンスターてす!」
説明ありがとうマリアさん。
近づいてきたワーラットの姿をようやくはっきりと見えるようになってきた。
小型犬くらいの大きさのネズミだな。
ネズミにしては大きすぎる、なんか怖っ!
「よ、よし。ここは試しに…」
ちょっと怖いけど、借りた【ロングソード+1】の試し斬りをしてみようと構えたその時………
「せいやああああああ!!!」
マリアさんがワーラットに向かって突っ込んでいった!
「ウソ!?」
【ランプ】放り投げて突っ込んでいったマリアさんに驚く僕。
マリアさんは両手に持った大剣【バスターソード+6】をすくい上げるように振り向いた!
「「「ちゅちゅぅぅぅううう!!!」」」
派手な水しぶきとともにワーラットの断末魔が聞こえた。
ワーラットの赤ゲージ三本が一瞬で減り、キラキラとポリゴンのカケラと化した。
「ふう…」と息をつき、爽やかな笑みを浮かべて【バスターソード+6】を肩に置くマリアさん。
「………………」
僕は開いた口が塞がらなかった…。
なにあれ…?一撃ですか…。一撃で三体一気に倒しちゃいましたよこのコ……。
アホみたいにメチャクチャ強いんですけど…!?
『ワーラットAを倒した!』
『ワーラットBを倒した!』
『ワーラットCを倒した!』
『パーティーメンバーそれぞれにEXPを6獲得しました』
テキストメッセージが視界に映る。
しかし僕は驚きが抜けずに、ただ呆然としていた。
驚きのあまりフリーズしている僕を尻目に、マリアさんは放り投げた【ランプ】を拾った。
「ファントムさん、どちらへ行きましょうか?」
何事もなかったかのように笑顔で問いかけるマリアさん。
僕は「ははは…」と引きつった笑みを浮かべることしかできなかった…。
下水道での初戦闘、ワーラットを見事倒した僕達は、右の分かれ道へと進むことにした。
左の分かれ道はワーラットが来たから、逆に右にしただけなんだけど、進んですぐにモンスターとエンカウントしてしまった!
「せいやああああああ!!!」
裂帛の気合いを込めて放たれたマリアさんの大剣が煌めく!
『ワーラットを倒した!』
『パーティーメンバーそれぞれにEXPを4獲得しました』
「せいやああああああ!!!」
『ワーラットを倒した!』
『パーティーメンバーそれぞれにEXPを4獲得しました』
『ファントムのLVが3に上がりました!SPを3獲得しました』
「オオオ…!」
「きゃあああ!」
「はっ!ゾンビ!神よ我に聖なる力を!【斬撃(光属性)】せいやああああああ!!!」
『ゾンビを倒した!』
『パーティーメンバーそれぞれにEXPを8獲得しました』
『マリアは大剣熟練度を3獲得しました』
「ちゅちゅー!」
「またワーラットですか!せいやああああああ!!!」
『ワーラットを倒した!』
『パーティーメンバーそれぞれにEXPを4獲得しました』
『マリアのLVが5に上がりました!SPを5獲得しました』
「きゃああああああ!!!」
「むむ!?今度は大軍で来ましたね。負けません!せいやああああああ!!!」
『ゾンビを倒した!』
『スケルトンを倒した!』
『ワーラットを倒した!』
入り組んだ下水道の探索を進みながら、マリアさん無双が続く。
巨大ネズミのワーラットが紙のように斬り裂き光カケラとなって砕けていく。
ゾンビが現れたとき、思わず僕は叫んでしまったけど、マリアさんがかけ声とともに速攻で粉砕してしまった。
スケルトンが現れたときもゾンビと同じで以下同文………。
そして今、下水道いっぱいに群がるモンスター大軍をマリアさん一人で片付けてしまった…。
『パーティーメンバーそれぞれにEXPを10獲得しました』
『ファントムは【指揮官】のスキルを習得しました』
なにもせずに僕のレベルが上がってしまった。
下水道に入る前はレベル2だったのに、この短時間で3になってしまった。
【アトランティス】の戦闘の経験値は、パーティーメンバーに等しく分割されるわけだから、楽してパワーレベリングするのにはいいかもしれないけど、これはちょっといただけない。
【アトランティス】はレベルのほかにスキルがある。
戦闘で使うスキルは、戦闘でスキルを使わないとスキル経験値、熟練度が溜まらない。
これじゃあ、レベルは上がるけどスキルが上がらないよ…。
それなのに、なんかよくわからないスキル得たし…。
なに【指揮官】って?
僕はメニューを開き、スキル一覧に目を通した。
僕は【指揮官】と表示されている箇所をタップしてみた。
【指揮官】LV:1
下級特殊スキル。
戦闘時パーティー内にいるNPCのステータスを3%上昇させるパッシブスキル。
これは、僕がなにもしてないから得たスキルなのか?
こんな初日の序盤で特殊スキル習得できるとは思わなかったよ…。
ていうか別に指揮してないんですけど…(失笑)
それはともかく、このスキルは戦闘になるとマリアさんのステータスが3%上がるのか…。
「うーん…。困ったぞ……」
【指揮官】スキルでマリアさんが少しとはいえ強くなるのか。
これじゃあ僕の出る幕全然なくない?
あまりのマリアさんの無双っぷりに、僕はグチっぽく呟いてしまった。
ていうかこんなに強いんだったら、一人で助けにいけるでしょ?依頼出す必要なくない?と、身もふたもないことを思ってしまった。
「せめて自分で操作できるアクティブスキルが良かったな…」
パッシブスキルじゃ止めようがない。
………。
よし、ここは勇気を出して、「僕も戦うから少しはモンスター残しといて」とお願いするしかないか…。
(言いづらいなあ…)
でもこのままじゃなにもしないまま終わる。
せっかく武器屋のおじさんに借りた武器が無駄になってしまうし…。
はあ…。仮想体なのに胃のところがキリキリする。
小首を傾げてこちらを見つめているマリアさんのもとに、僕は重い足を動かした。
応援ありがとうございます!
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