無表情いとこの隠れた欲望

春密まつり

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ごめん、嫉妬した。

03

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――今日も遅くなる。

 雪哉からメッセージが入り、半分ほっとした。
 告白(?)をされてから、雪哉の距離感は明らかに変わった。
 なぜだか距離が近いように思える。
 キスはしないけれど、梓が夕食の準備をしていたら後ろから抱き着いたり、ソファでくつろいでいたらぴたりとくっついて隣に座ったり、物理的な距離が近い。
 だから雪哉と二人きりの夜の時間は緊張しているので、最近残業が多いらしく帰りが遅いとちょっと安心する。
 残りの半分は、心配だ。
 残業続きでたまにソファで寝てしまっているところを朝方に見かけることがある。
 ベッドで眠らなければ疲れもとれないだろうに。

 残業続きの雪哉に、梓は雪哉の好物を作ろうと決めた。雪哉が疲れているのはあまり見たくない。
 梓はさっそく、雪哉の好物のハンバーグを作り始めた。前とは違って中にチーズも入れた豪華版だ。しかも、特大サイズ。
 たくさんのひき肉と玉ねぎで、作ったことのない大きさのハンバーグを作った。ソースもたくさん作って選べるようにした。それからたくさんのごはんとお味噌汁。雪哉がもういらないと言うほどの量を用意した。

 出来上がったのは7時。
 遅くなると連絡がある日の帰宅はいつも10時くらいだ。
 梓はそれまでにお風呂を済ませて、リビングのソファに座り、テレビを見ながら雪哉を待つことにした。


「……ずさ」
 遠くで梓を呼ぶ声が聞こえる。
 うっすらと目を開けると、見覚えのある人がいた。

「……梓?」
「……雪哉くん……?」

 いつの間にか眠っていたみたいだ。
 目をこすってハッキリ目を覚ますと、雪哉が梓の顔を上から覗き込んでいた。
 スマホで時間を確認すると、もう0時を回っていた。雪哉はまだスーツ姿だ。今帰ってきたばかりなのだろうか。こんな時間に帰ってくるほど仕事をしていたなんて、信じられない。

「こんなとこで寝てどうしたの」
「……おかえり」
「え?」
「雪哉くんを待ってたの。こんなに遅くまでお仕事お疲れさま。あのね、今日は雪哉くんの大好きなハンバーグを作って待って……わっ」
 梓が話している途中に、雪哉にぎゅっと抱きしめられた。温かい体温が伝わってくる。

「雪哉くん?」
「……梓、ありがと」
「……うん。お疲れ様」

 ぽんぽんと、背中を叩いた。
 ぎゅっと強く抱きしめられたあと、雪哉は身体を離して微笑む。顔には疲れが見えて、胸が苦しくなる。

「ハンバーグ食べていい?」
「うん! 温めなおすね」
 梓は立ち上がり、すっかり冷えたハンバーグに火を通す。お味噌汁も。たくさんお皿に盛って、ダイニングテーブルに用意した。

「すごいな」
「でしょう? 大きいの作ってみたんだ」
「今日はなんか特別な日?」
「……違うけど、雪哉くんが仕事がんばってるから」
「……」
「雪哉くん?」
「いや、ありがとう。梓」

 にっこりと微笑む。
 あの雪哉が、だ。
 わかりやすい笑顔を見せてくれた。
 梓はしばらく見惚れてしまっていた。

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