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05.嫉妬
しおりを挟む「……怜央くん?」
「なに?」
「……なんか、怖いよ」
ベッドの上で服を脱がされるのはいつものことだ。でも今日はその手つきが荒々しい。引きちぎる勢いでシャツを脱がされブラジャーも取り外されてしまう。
「っ……怖くないよ?」
「んっ」
首筋にかぶりつかれた。歯を立てているのか、ぴりっとした痛みが走った。はぁ、と熱い息が首筋をくすぐる。首の根元を吸われながら、怜央くんの手は荒々しくふくらみを手で押しつぶす。怜央くんの手で胸が形を変えていく。
「んっ、あ……ぅ」
優しくないのに、声は勝手に出てしまう。怜央くんの手にふれられているだけで身体が快感を覚えてしまっている。
はだけた素肌に、怜央くんの唇がふれた。ちゅ、とキスを落としながらも手の動きは激しい。全身を撫で回され、身体が熱を持っていく。器用に服が脱がされていき、怜央くんの前で何度目かの肌を晒すことになる。
「……こういうこと倉本さんにもさせるつもりだった?」
「っ、なんで」
「だって迷ってるんでしょ? つき合うの」
倉本さんのことなんて、もうとっくに頭には残っていない。今はもう怜央くんのことでいっぱいだ。
「そういうんじゃ……っん!」
怜央くんが鎖骨に歯を立てるので、言葉にならなくなった。怜央くんの唇は噛んだ場所を舐めて、そのまま舌が胸のほうへと降りていく。胸のふくらみを撫でながら、先端をぺろりと舐める。その場所に歯を立てられて、腰が浮いた。
「んっ!」
私の強い反応に、怜央くんは上目遣いでこちらを見る。
「……へえ、紗江こういうの好きだった? 初めて知ったな」
「ち、違うっ……」
「でも紗江の身体はそうじゃないみたいだよ」
怜央くんは新しいおもちゃを見つけたかのように、私の肌に歯を立てていく。ちくりとした痛みがあるのに、なぜか甘い声が出てしまう。自分でも自分の身体がよくわからない。
「あ……っ、んっ」
胸の先端を甘く吸ったり、歯を立てたり、緩急をつけた動きに私の身体は熱く熟れていく。その間も怜央くんの手は全身を撫でるように動く。太ももの内側をするすると撫で、熱のこもっている身体の中心に近づいていく。
身体を隠していた最後の一枚の、下着の中に怜央くんの手が入ってくる。
「……あれ」
「っ」
怜央くんの指が秘部にふれ、手が止まった。
「いつもより濡れてるよ」
「……っ」
蜜をすくい上げると、指先を舐めた。カッと身体が熱くなる。
「へえ、やっぱり紗江ってひどいほうが好きなんだ?」
「……そんなこと、ないっ」
「そうかな?」
「んぅっ!」
怜央くんの指が、中に入ってきて腰が跳ねる。
「いつもより簡単に二本飲み込んでるよ」
「ン……や、だ」
「中も、すごい熱くなってる」
中を怜央くんの指がこすっている。くちくちと水音がし始めて蜜が溢れているのがわかる。だんだん指の動きが激しくなり、こすりながら中を行き来し始めた。何度も続けている行為によって、怜央くんは私が強く反応するところをよく知っている。かき回しながら、指の腹で入り口の裏側あたりをこすられると、腰が大きく跳ねる。息が乱れて呼吸がうまくできない。
「中、締め付けてる。もうイキそう?」
「っ……は、……ぅん!」
怜央くんの言葉に応える余裕もない。
首を振って訴えるけれど怜央くんはさらに私が弱い場所をぐりぐりと責める。
「っ――!」
目の奥がバチリと光り、怜央くんに言いようにされてすぐに気をやってしまった。
「……紗江」
「ん……」
まだ呼吸が乱れて苦しい。大きく胸を上下させながら怜央くんを見上げた。
「気持ちよかった?」
「……ん……」
気づけば、怜央くんの怒りのような表情は消えていた。その代わりに、表情が無い。取り繕うような優しい笑顔もないのが逆に怖い。
「今日は最後までしようか」
「っ」
嘘だよ、といたずらっぽく笑うのを想像していたのに、怜央くんは真面目な表情のまま、黙っていた。
「紗江もしてみたいでしょ」
「……」
想像をしていなかった提案に、唾を飲み込んだ。今まで何度も怜央くんのベッドの上で裸になっていたのに、最後までは絶対にしなかった。怜央くんが発散するための行為のはずなのに、前に一度だけ、達したところを見たくらいだ。
だからもう最後までする気はないんだと思っていた。
「もう……挿れるよ」
「えっあ、待って」
迷っている間にも怜央くんは準備を進めていた。ゴムをつけた昂ぶりが視界に入る。
「ごめんね、待つのは無理。紗江の初めて、俺にちょうだい」
くちゅりと音を立てて、お互いの秘部が合わさる。でも今日はこするだけではない。入り込もうと、怜央くんの熱が私の蜜口をじわじわと押し開いていく。
「あ、ぅ……痛い……」
鋭い痛みが襲う。当たり前だけれど指とは比べ物にならないくらいの質量だ。自然と視界が濡れて揺らいでいく。
「痛い? もう少し我慢して」
「……んん……」
徐々に入ってくるのが痛みでわかる。苦しくて息を吐こうとしても、喉が詰まってしまってうまくできない。
「紗江、泣かないでよ」
怜央くんの指が、私の目尻にふれて涙をぬぐってくれる。
「か、勝手に出るの!」
「大丈夫だって。紗江、可愛いよ」
痛いのは私だけのはずなのに怜央くんも苦しげに息を吐いた。
「もう少しだから、がんばって」
「んん……」
怜央くんのさらりとした汗が肌に落ちてくる。徐々に腰を進めて、少しずつ少しずつ中へ入ってくるのがわかった。圧迫感は強く痛みも続いているが、もうやめてほしいとは思わなかった。
「……ハ……、挿ったよ」
長い時間をかけて怜央くんの熱が、ようやく中へと入ったみたいだ。その頃にはもう私も怜央くんも汗だくだった。
「……紗江の中、すごく気持ちいい」
「……ん……」
私の中は怜央くんでいっぱいで苦しい。少し動くだけで痛みが走る。初めて受け入れた男の人の熱に、下腹部は違和感だらけだ。
「ごめんね。少しずつするから」
怜央くんは私の熱くなった身体を撫でながら、動かずにじっとしてくれていた。中はびくびく震えるもので埋まっている。とうとう怜央くんと最後までしてしまったんだ。何度も身体にふれられてきたけれど、やっぱり最後までするのとは全然違う。怜央くんの体温が直接送り込まれてくるような、身体の内側から怜央くんの熱に移されていくような、おかしな感覚だ。
「は、ぁ」
怜央くんがちょっと動いた時、息が洩れた。痛みが薄れていくと同時に、快感が頭をもたげる。
「気持ちよくなってきた?」
「ん……」
気持ちがいいというよりも痛みが薄れ感覚が戻ってきた、という感じだ。
「ほら、濡れた音すごいよ」
怜央くんが動くたびに粘着質な音が響く。耳を塞ぎたくてもそんな力など出ない。ゆるゆると腰を動かされるだけで、甘い声が出てしまう。じっとりと見下ろされる怜央くんの視線から逃れるようにかぶりを振った。
「や、だ」
「紗江可愛い」
「……っ」
「……、締まった」
怜央くんが眉根を寄せ、喉仏を上下させる。怜央くんも苦しそうだ。
「俺に抱かれてる紗江、可愛い」
「も、もういいからっ」
「はぁ……ごめん、もう限界」
「あ、ぅ!」
ゆっくりだった腰の動きは、律動を速める。行き来する熱の質量が大きくなり、中を圧迫する。
「紗江、大丈夫?」
時折怜央くんの手が私の頭や頬を優しく撫でる。揺さぶられている間も大切にされているような錯覚をしてしまう。
部屋に入った時から優しくなかった怜央くんに優しくされると混乱する。どっちが本当の彼なのかわからない。
「ん……、怜央、くん……っ」
「ごめんね、もうちょっと」
ぐちゅぐちゅと音がする。怜央くんを見上げると、今までにないくらいつらそうな表情で汗を滲ませて、息を吐いていた。その表情を見た時に胸がきゅんと疼いた。
「……っ……」
黙ったままびくびくと腰を震わせる怜央くんは、熱い息を吐いた。少しして、中から熱が引き抜かれたのに、下腹部にはまだ大きな違和感が残っている。
ついに、怜央くんと最後までしてしまった。
最後までしてしまったら、あの隣で聞いた女の人と同じになってしまった。
今まで以上に、ただ性欲を発散させるためだけの関係の出来上がりだ。
自分の気持ちに気づいてしまって、胸が苦しくてどうにかなりそうだった。
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