31 / 48
29話 シェルヴィ様は諦めない!1
しおりを挟む
「みんな、おはようなのだ!」
「おはようございます!」
今日はシェルヴィ様が1番得意とする授業があるらしく、朝からとにかくテンションが高い。
「シェルヴィ様おはよう!」
「ナタリアおはよう!」
あっ、シェルヴィ様もおはようって言われてる。
なんだろう、俺も自分の事のように嬉しい。
「じゃあ、俺はいつも通り後ろで見てますね」
「いや、今日は違うのだ」
「え?」
「今日の授業はすぐ近くの平原でやるのだ」
「へぇ」
というわけで、校区内にある平原へ先生と2-1組全員、モノレールで移動しました。
「……モノレールあったのかよ!」
『魔王モノレール』の文字がプリントされた車体は上半分が青、下半分が白に彩られ、4両編成で校区内上空を走っているらしい。
どうしてこんな便利な物をシェルヴィ様は使わないのか、後でちゃんと理由を聞いておこう。
「おいハース、ちゃんとついてくるのだ」
「はい、すみません」
そして、モノレールを降りてから少し歩くと、何も無い平原に突然円形の的が5つ見えてきた。
「シェルヴィ様、あれは的……ですか?」
「ふっふっふ、そうなのだ。
しかも、あの的にスノーボールを当てた者は、自由時間を与えられるのだ」
おぉ、それはいいな。
報酬が準備されていれば、生徒の意欲が高まると同時に、達成感が得られ、魔法技術の習得が出来る。
非常によく考えられた授業だ。
「よーし、じゃあ今日は150メートルの位置からな。
で、最初は誰から行く?」
先生を中心に円を作る生徒たち。
しかし、一向に手があがる気配はない。
やっぱり、最初は緊張もするし、恥ずかしいのかな……。
なんて事を考えていると、隣でシュパッと手があがった。
「我、我が行くのだ!」
ぴょんぴょんジャンプし、全力でアピールするシェルヴィ様。
と、尊い……。
「分かった。
じゃあ、シェルヴィから時計回りな」
「ふっふっふ、ハースよく見ておけ」
「はい」
シェルヴィ様は先生が指さした位置まで歩くと、1度深呼吸をした。
そして、右の手のひらを前に出すとこう唱えた。
「スノーボール!」
すると、シェルヴィ様の手のひらから小さく丸い雪玉が放たれた。
その雪玉は目で追える程度の速さだが、非常によく制御されている。
バスッ。
そして、雪玉は見事に的を捉えた。
「よし、やってやったのだ!」
「シェルヴィちゃんすごい!」
「流石はシェルヴィ様です!」
見事的を捉えたシェルヴィ様は、先生や生徒たちから拍手喝采を受けた。
あっ、もちろん俺からも。
「よしお前ら、どんどん行けよ」
先生の指示を受け、生徒たちはローテーションしながら、次々とスノーボールを放った。
しかし、これが面白いほど当たらない。
俺は先にクリアしてしまったシェルヴィ様に尋ねた。
「これってやっぱり、難しいんですかね?」
「うーむ……。
我はまだ1度もミスをしたことがないから分からないのだ。
でも、ナタリアがミスしてるところを見ると、難しいのかも知れぬ」
「なるほど……」
あぁ、すごくやってみたい。
「シェルヴィ様、俺もやってみていいですかね?」
「うむ。
でも、そう簡単に当たるものではないのだ」
「それはそうだと思うんですけど、俺もやってみたいです!」
「う、うむ。
そこまで言うのなら仕方がないのだ。
ミーシャ先生、ハースに1回だけやらせてあげて欲しいのだ」
あっ、今更だけどあの先生の名前ってミーシャだったんだ。
一応覚えておこう。
「あぁ、いいよ。
その代わり、2つ以上の的を狙うことが条件ね」
「はい、ミーシャ先生ありがとうございます!」
「あれぇ、冗談のつもりだったんだけど……。
まぁいっか」
俺はみんなと同じように列に並び、その時を待った。
そしてついに、俺の順番がやってきた。
「イケメンさん頑張れ!」
「シェルヴィ様が見てるよ!」
「失敗したら私と付き合って!」
勝手に上がっていくハードル。
しかも、なぜかみんな手を止め、じっと俺を見つめている。
流石に失敗できないな。
「じゃあ、いきます」
悪いが、スノーボールなんてものを俺は知らない。
だから、自己流でいかせてもらう。
再び俺の中に生まれるあの感覚。
俺ならできる。
右の手のひらを上に向け、そこへ魔力を集中させる。
その際、以前より魔力制御が明らかに上達しているのを実感した。
そして、魔力が溜まりきったその瞬間、俺は手のひらを正面に向けた。
「魔静術……霜雪」
雪に霜が降り、一回り大きく硬くなった雪玉は5方向に放たれた。
もちろん、5つ全ての的を射抜くためである。
でも、ここで疑問が1つ。
魔静術って何なんだ?
今のは初めて味わう感覚だったが、並大抵の人には扱えない研ぎ澄まされた感覚だということくらいは俺にも理解出来た。
ほんと、まだまだ分からないことばかりだ。
バシッ!
そして、俺の放った雪玉は5つの的全てを何とか捉えた。
特に1番右の的なんて、ギリギリ右上に当たっている。
「ふぅ、なんとか当たったな。
シェルヴィ様、どうでした?」
俺が振り返るとそこには……。
「ほ、本当にやりよったのだ……」
「ハースさん、ほんとに何者なんですか……」
「おいおい、嘘だろ……。
あの魔力制御技術、魔王様に匹敵するんじゃないか……」
空いた口が塞がらないシェルヴィ様、ナタリアさん、先生の姿があった。
「イケメンさんかっこいい!」
「キャーッ!」
ただ、他の子たちはいつも通り黄色い声援を送ってくれた。
それでも、3人の反応が頭から離れない。
だって3人とも、夢を見ているかのような顔で俺を見ているから。
「おはようございます!」
今日はシェルヴィ様が1番得意とする授業があるらしく、朝からとにかくテンションが高い。
「シェルヴィ様おはよう!」
「ナタリアおはよう!」
あっ、シェルヴィ様もおはようって言われてる。
なんだろう、俺も自分の事のように嬉しい。
「じゃあ、俺はいつも通り後ろで見てますね」
「いや、今日は違うのだ」
「え?」
「今日の授業はすぐ近くの平原でやるのだ」
「へぇ」
というわけで、校区内にある平原へ先生と2-1組全員、モノレールで移動しました。
「……モノレールあったのかよ!」
『魔王モノレール』の文字がプリントされた車体は上半分が青、下半分が白に彩られ、4両編成で校区内上空を走っているらしい。
どうしてこんな便利な物をシェルヴィ様は使わないのか、後でちゃんと理由を聞いておこう。
「おいハース、ちゃんとついてくるのだ」
「はい、すみません」
そして、モノレールを降りてから少し歩くと、何も無い平原に突然円形の的が5つ見えてきた。
「シェルヴィ様、あれは的……ですか?」
「ふっふっふ、そうなのだ。
しかも、あの的にスノーボールを当てた者は、自由時間を与えられるのだ」
おぉ、それはいいな。
報酬が準備されていれば、生徒の意欲が高まると同時に、達成感が得られ、魔法技術の習得が出来る。
非常によく考えられた授業だ。
「よーし、じゃあ今日は150メートルの位置からな。
で、最初は誰から行く?」
先生を中心に円を作る生徒たち。
しかし、一向に手があがる気配はない。
やっぱり、最初は緊張もするし、恥ずかしいのかな……。
なんて事を考えていると、隣でシュパッと手があがった。
「我、我が行くのだ!」
ぴょんぴょんジャンプし、全力でアピールするシェルヴィ様。
と、尊い……。
「分かった。
じゃあ、シェルヴィから時計回りな」
「ふっふっふ、ハースよく見ておけ」
「はい」
シェルヴィ様は先生が指さした位置まで歩くと、1度深呼吸をした。
そして、右の手のひらを前に出すとこう唱えた。
「スノーボール!」
すると、シェルヴィ様の手のひらから小さく丸い雪玉が放たれた。
その雪玉は目で追える程度の速さだが、非常によく制御されている。
バスッ。
そして、雪玉は見事に的を捉えた。
「よし、やってやったのだ!」
「シェルヴィちゃんすごい!」
「流石はシェルヴィ様です!」
見事的を捉えたシェルヴィ様は、先生や生徒たちから拍手喝采を受けた。
あっ、もちろん俺からも。
「よしお前ら、どんどん行けよ」
先生の指示を受け、生徒たちはローテーションしながら、次々とスノーボールを放った。
しかし、これが面白いほど当たらない。
俺は先にクリアしてしまったシェルヴィ様に尋ねた。
「これってやっぱり、難しいんですかね?」
「うーむ……。
我はまだ1度もミスをしたことがないから分からないのだ。
でも、ナタリアがミスしてるところを見ると、難しいのかも知れぬ」
「なるほど……」
あぁ、すごくやってみたい。
「シェルヴィ様、俺もやってみていいですかね?」
「うむ。
でも、そう簡単に当たるものではないのだ」
「それはそうだと思うんですけど、俺もやってみたいです!」
「う、うむ。
そこまで言うのなら仕方がないのだ。
ミーシャ先生、ハースに1回だけやらせてあげて欲しいのだ」
あっ、今更だけどあの先生の名前ってミーシャだったんだ。
一応覚えておこう。
「あぁ、いいよ。
その代わり、2つ以上の的を狙うことが条件ね」
「はい、ミーシャ先生ありがとうございます!」
「あれぇ、冗談のつもりだったんだけど……。
まぁいっか」
俺はみんなと同じように列に並び、その時を待った。
そしてついに、俺の順番がやってきた。
「イケメンさん頑張れ!」
「シェルヴィ様が見てるよ!」
「失敗したら私と付き合って!」
勝手に上がっていくハードル。
しかも、なぜかみんな手を止め、じっと俺を見つめている。
流石に失敗できないな。
「じゃあ、いきます」
悪いが、スノーボールなんてものを俺は知らない。
だから、自己流でいかせてもらう。
再び俺の中に生まれるあの感覚。
俺ならできる。
右の手のひらを上に向け、そこへ魔力を集中させる。
その際、以前より魔力制御が明らかに上達しているのを実感した。
そして、魔力が溜まりきったその瞬間、俺は手のひらを正面に向けた。
「魔静術……霜雪」
雪に霜が降り、一回り大きく硬くなった雪玉は5方向に放たれた。
もちろん、5つ全ての的を射抜くためである。
でも、ここで疑問が1つ。
魔静術って何なんだ?
今のは初めて味わう感覚だったが、並大抵の人には扱えない研ぎ澄まされた感覚だということくらいは俺にも理解出来た。
ほんと、まだまだ分からないことばかりだ。
バシッ!
そして、俺の放った雪玉は5つの的全てを何とか捉えた。
特に1番右の的なんて、ギリギリ右上に当たっている。
「ふぅ、なんとか当たったな。
シェルヴィ様、どうでした?」
俺が振り返るとそこには……。
「ほ、本当にやりよったのだ……」
「ハースさん、ほんとに何者なんですか……」
「おいおい、嘘だろ……。
あの魔力制御技術、魔王様に匹敵するんじゃないか……」
空いた口が塞がらないシェルヴィ様、ナタリアさん、先生の姿があった。
「イケメンさんかっこいい!」
「キャーッ!」
ただ、他の子たちはいつも通り黄色い声援を送ってくれた。
それでも、3人の反応が頭から離れない。
だって3人とも、夢を見ているかのような顔で俺を見ているから。
0
お気に入りに追加
40
あなたにおすすめの小説
悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業
ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
魔攻機装
野良ねこ
ファンタジー
「腕輪を寄越すのが嫌ならお前、俺のモノになれ」
前触れもなく現れたのは世界を混沌へと導く黒き魔攻機装。それに呼応するかのように国を追われた世界的大国であるリヒテンベルグ帝国第一皇子レーンは、ディザストロ破壊を目指す青年ルイスと共に世界を股にかけた逃避行へ旅立つこととなる。
素人同然のルイスは厄災を止めることができるのか。はたまたレーンは旅の果てにどこへ向かうというのか。
各地に散らばる運命の糸を絡め取りながら世界を巡る冒険譚はまだ、始まったばかり。
※BL要素はありません
錬金術師が不遇なのってお前らだけの常識じゃん。
いいたか
ファンタジー
小説家になろうにて130万PVを達成!
この世界『アレスディア』には天職と呼ばれる物がある。
戦闘に秀でていて他を寄せ付けない程の力を持つ剣士や戦士などの戦闘系の天職や、鑑定士や聖女など様々な助けを担ってくれる補助系の天職、様々な天職の中にはこの『アストレア王国』をはじめ、いくつもの国では不遇とされ虐げられてきた鍛冶師や錬金術師などと言った生産系天職がある。
これは、そんな『アストレア王国』で不遇な天職を賜ってしまった違う世界『地球』の前世の記憶を蘇らせてしまった一人の少年の物語である。
彼の行く先は天国か?それとも...?
誤字報告は訂正後削除させていただきます。ありがとうございます。
小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで連載中!
現在アルファポリス版は5話まで改稿中です。
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)
いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。
全く親父の奴!勝手に消えやがって!
親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。
俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。
母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。
なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな?
なら、出ていくよ!
俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ!
これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。
カクヨム様にて先行掲載中です。
不定期更新です。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる