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天使降臨②
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俺はキュレルに連れられ街に出た。
なぜ彼女が買い物に連れてきたのかはわからないが、今日の買い物でもクルルという名義から振り込まれたお金を有難く使わせていただくことにしよう。
ああ、クルル様の仰せのままに……。
俺は天に向かって手を合わせた。
「ねぇねぇ、何してるの?」
「うん。これはクルル様を拝んでたんだよ」
「クルル様……だと……。
君、まさか知り合いなのか?」
「う~ん……知り合いではないような……」
神様と知り合いなんて言ったら、どうなるのか想像出来なかったため曖昧な答え方しか出来なかった。
キュレルは少し羨ましそうな顔をしていたが、すぐに元通りの顔に戻った。
「まぁいい! とりあえず買い物を済ませよう!」
キュレルから羽根が消えた。
「はいはい、わかったよ」
それから俺とキュレルは、肉に野菜に魚といった色々な食材を買いに商店街に向かった。
出張でマンションを離れているメルの両親を除いても、住人は十人。
なんだかダジャレみたいだが、買う量が多いのは事実。
俺はキュレルの腕を掴み、急ぎ足で次々とお店を回った。
「ちょっ、ちょっと~!」
ところで、今日は一年に一度だけ開催される福引の日らしい。
俺もリザードマンの肉屋さんで一枚、オークの魚屋さんで一枚、オーガの八百屋さんで一枚の計三枚、福引券をもらった。
「結構買えたね!」
「……買いすぎだろっ!」
俺は両手に、キュレルは両手で大きな袋を持っている。
キュレルはとても重そうな顔をしている。
もしかして天使って非力なのだろうか。
見た目が違うだけで、ほとんど人みたいな感じなのか?
俺が考え事をしながら歩いていると、キュレルに肩をトントンされた。
「ん? どうした?」
「どうしたではない。福引会場に着いたぞ」
「お、おう……」
キュレルの指さす方を見ると、俗に言うガラガラ抽選と呼ばれる方式の福引会場があった。
「はい一回分ね。ゆっくり回してよ~」
「うん!」
猫耳を付け、法被を着たお姉さんがリザードマンの子供に優しく対応している。
ただ一つ気になることが……まぁいいか。
どうせすぐに分かる。
「まぁせっかく貰ったし、どうせ当たらないけど引いてくか……」
「はっはっは~! よくぞ言ってくれた。
安心しろ、私に任せてくれ!」
「はぁ」
何を言っていたのかよくわからなかったが、とりあえず受付のお姉さんに福引券を見せた。
「三回分ですね。ゆっくり回してくださいね!」
「あの~……先生ですよね?
俺鹿島夢って言います。覚えてますか?」
「ん? んんん?」
猫耳お姉さんは俺の顔をじーっと見つめると、ハッと驚いた。
「夢くん……?」
「はい! やっぱり先生だったんですね!」
この人は異世界にある学校の先生である。
お邪魔したのは数日だったが、本当にお世話になった。
「久しぶりじゃん!」
「でもどうして先生がここに? 学校ってここの近くでしたっけ?」
俺の住むマンションが移動することを隠すため、学校の場所を忘れかけている設定で行くことにした。
「そうそう、結構遠いよ。
私地元がこっちだから、毎年この福引の日に帰省も兼ねて商店街のお手伝いをしてるんだよ!」
「へぇ、先生らしくていいと思います!」
「でしょでしょ!」
先生と会話で盛りあがっていると、後ろから強めのグーパンが飛んできた。
「痛っ!」
急いで振り返ると、怖い顔をしたキュレルが俺を睨んでいた。
「私を無視してまで会話とは随分楽しそうね」
「あっすいません、完全に忘れてました」
「おいっ!」
なぜ彼女が買い物に連れてきたのかはわからないが、今日の買い物でもクルルという名義から振り込まれたお金を有難く使わせていただくことにしよう。
ああ、クルル様の仰せのままに……。
俺は天に向かって手を合わせた。
「ねぇねぇ、何してるの?」
「うん。これはクルル様を拝んでたんだよ」
「クルル様……だと……。
君、まさか知り合いなのか?」
「う~ん……知り合いではないような……」
神様と知り合いなんて言ったら、どうなるのか想像出来なかったため曖昧な答え方しか出来なかった。
キュレルは少し羨ましそうな顔をしていたが、すぐに元通りの顔に戻った。
「まぁいい! とりあえず買い物を済ませよう!」
キュレルから羽根が消えた。
「はいはい、わかったよ」
それから俺とキュレルは、肉に野菜に魚といった色々な食材を買いに商店街に向かった。
出張でマンションを離れているメルの両親を除いても、住人は十人。
なんだかダジャレみたいだが、買う量が多いのは事実。
俺はキュレルの腕を掴み、急ぎ足で次々とお店を回った。
「ちょっ、ちょっと~!」
ところで、今日は一年に一度だけ開催される福引の日らしい。
俺もリザードマンの肉屋さんで一枚、オークの魚屋さんで一枚、オーガの八百屋さんで一枚の計三枚、福引券をもらった。
「結構買えたね!」
「……買いすぎだろっ!」
俺は両手に、キュレルは両手で大きな袋を持っている。
キュレルはとても重そうな顔をしている。
もしかして天使って非力なのだろうか。
見た目が違うだけで、ほとんど人みたいな感じなのか?
俺が考え事をしながら歩いていると、キュレルに肩をトントンされた。
「ん? どうした?」
「どうしたではない。福引会場に着いたぞ」
「お、おう……」
キュレルの指さす方を見ると、俗に言うガラガラ抽選と呼ばれる方式の福引会場があった。
「はい一回分ね。ゆっくり回してよ~」
「うん!」
猫耳を付け、法被を着たお姉さんがリザードマンの子供に優しく対応している。
ただ一つ気になることが……まぁいいか。
どうせすぐに分かる。
「まぁせっかく貰ったし、どうせ当たらないけど引いてくか……」
「はっはっは~! よくぞ言ってくれた。
安心しろ、私に任せてくれ!」
「はぁ」
何を言っていたのかよくわからなかったが、とりあえず受付のお姉さんに福引券を見せた。
「三回分ですね。ゆっくり回してくださいね!」
「あの~……先生ですよね?
俺鹿島夢って言います。覚えてますか?」
「ん? んんん?」
猫耳お姉さんは俺の顔をじーっと見つめると、ハッと驚いた。
「夢くん……?」
「はい! やっぱり先生だったんですね!」
この人は異世界にある学校の先生である。
お邪魔したのは数日だったが、本当にお世話になった。
「久しぶりじゃん!」
「でもどうして先生がここに? 学校ってここの近くでしたっけ?」
俺の住むマンションが移動することを隠すため、学校の場所を忘れかけている設定で行くことにした。
「そうそう、結構遠いよ。
私地元がこっちだから、毎年この福引の日に帰省も兼ねて商店街のお手伝いをしてるんだよ!」
「へぇ、先生らしくていいと思います!」
「でしょでしょ!」
先生と会話で盛りあがっていると、後ろから強めのグーパンが飛んできた。
「痛っ!」
急いで振り返ると、怖い顔をしたキュレルが俺を睨んでいた。
「私を無視してまで会話とは随分楽しそうね」
「あっすいません、完全に忘れてました」
「おいっ!」
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