異世界マンションの管理人

ゆざめ

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天使降臨①

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 二日が経過し、ラプスとカプラがマンションにやってくる日になった。
 空も二人を出迎えるかのような快晴だ。
 エミーから事前に手紙をもらっていた俺は、外で二人を待った。
 しばらくすると、スーツケースを手に持ちこちらへ歩いてくる二人の姿が見えた。
 まだまだマンションまで距離はあるが、カプラはその場で立ち止まりぴょんぴょん跳ねながら手を振っている。
 そんな子供らしいカプラを見て、俺は苦笑いしながら手を振り返した。
 そして待つこと十分。

「待たせたな」

「帰ってきたのです!」

 二人はマンションに到着した。

「二人とも待ってたぞ! 
 えーっと……積もる話も特にないし……説明とかもないから……とりあえず部屋に案内します!」

「なぜ敬語?」

 俺は二人を連れ、十四階に向かった。
 共用通路の途中、一部屋だけ扉の空いている部屋がある。
 俺は二人をその部屋の前に案内した。

「ここが二人の部屋、一四三号室だよ」

 俺は二人に部屋の中を覗いてもらった。

「おお! 
 ここが新たな部屋か……って、さすがに広すぎないか!」

「とても大きいのです!」

 それもそのはず、この一四三号室はなぜか隣の部屋と繋がっているのだから。
 つまり、一四二号室から入っても同じ部屋だということだ。

「これ鍵な」

 俺は鍵をフワッと投げ渡した。

「おっとっと、感謝する」

 新生活に落ち着かない様子の二人。
 俺が色々な準備を手伝ってもいいが、こんな時こそ二人で協力して準備した方がいい思い出になるだろう。

「じゃあ俺はもう行くから。
 なんかあったら、いつでも言えよ」

「ああ」

 俺はエレベーターへ向かい歩き始めた。

「夢!」

「ん?」

 数歩進んだところでラプスに呼び止められた。

「本当に色々とすまなかった。
 これからは住人として、護衛として、しっかりと頑張っていくつもりだ。
 更にたくさん迷惑をかけてしまうかもしれないが、どうかよろしく頼む」

「お、おう」

 なんか、すごいお姉ちゃんって感じがする。

「カプラには料理を教えて欲しいのです!」

「お、おう」

 なんか、すごい妹って感じがする。
 それに……。

「今自分のことカプラって言ったか?」

「あっ、えーっと、その……今のはミスなのです!」

 カプラは明らかに動揺している。
 俺がなにか地雷を踏んでしまったのか?
 そんな時ラプスがカプラにこう言った。

「カプラ、もういいんだ。
 確かに私はカプラに殺し屋として相応しい一人称に変えろと言ったが、もう何も気にすることは無い。
 私たちは、ただの住人だからな」

「確かになのです!
 カプラはカプラなのです!」

 よくわからないが、結果的に良かったらしい。
 その後、俺は食材の残りを確認するため十六階に向かった。

「冷蔵庫の中身は~っと……空っぽ!
 これは今から買い物に行かないとな」

 確認を済ませ、買い物に行くためエレベーターに向かおうとすると、突如不思議な光が俺の目の前に現れた。

「はぁ。これまたなんか来るやつだろ」

 異世界に慣れた俺は、もう驚かなくなっていた。
 不思議な光はフワフワとその場にとどまった後、突然発光した。
 俺は、やはり驚かなかった。
 少しの間目を閉じていると、悔しそうな女の子の声が聞こえてきた。

「ねぇねぇ君さぁ、もっと驚いてくれてもいいじゃん!
 つまんない! つまんない!」

 目を開くとそこには、金髪ショートの少女がいた。
 天使のような綺麗な羽根を生やした彼女は、女神に引けを取らない美しさだ。

「ごめんごめん。少々異世界耐性がついちゃってて……」

「なにそれ!」

「すいません、俺もよくわからないです」

「あ~もうむかつく!
 いっその事このまま帰っちゃおうかな?
 いやいや、でもこれはユキノ様のため。
 ユキノ様に褒めてもらうためなら、こんな用事どうって事ない!」

 まず初めに、彼女が一人でよく喋る女の子だと言うことがよく分かった。
 それから、あの女神様と知り合いだということも。
 確か天使って、神様の使いだったような……。

「俺に何か用ですか?」

「そうそう! とりあえず、今から買い物に行こうか!」

「はい?」

「いいから早く!」

 俺は無理やり外に連れていかれた。
 少し抵抗しようと試みたが、謎の力に制御されているようだった。
 抵抗するのにスタミナを使い果たし、俺は地面に寝転がった。

「はぁはぁ……それであなたは誰なんですか?」

「よ~く覚えておけ!
 私は天使キュレル、ユキノ様の使いだ!」

 見た目は天使、中身は子供。
 俺はキュレルという天使に出会った。
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