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学校の嫌われ者⑤
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そしてついに作戦決行の日がやってきた。
「よっしゃあ! 今日は全力で行くぜ~!」
俺は起きるなり朝ご飯の支度を高速で済まし、身支度を済ませた。
「なんか今日の夢さん、朝から張りきってますね」
「そうですね。私もかなり早起きだったのですが、夢さんの方が先に起きられてましたから」
朝ごはんのサンドウィッチを食べながら、イムとヴェントスが話している。
そう思うのも無理はないだろう。
なぜなら、今日の俺は何か違うのだ。
いつもより体が軽いというか、やる気がみなぎってくるというか不思議な感じがする。
まるで何か魔法にかけられているみたいだ。
俺は不思議な感覚を有効利用し、掃除に洗濯といったできる限りの家事を全て済ました。
そして気づけば、学校へ行く時間になっていた。
みんなも時間通りにエントランスに集まってきた。
「よし、行こうか」
みんなは学校に向け歩き始めた。
俺は道中、メルに一つ質問をした。
「そういえば、昨日泊まったこと親に言ってなかったよな。
心配してるんじゃないのか?」
「学校から直接このマンションに来たのに、伝える機会ありましたっけ?」
そう言われればそうだ。
スラの通信用スライムがある生活が当たり前になっている俺たちと、通信手段を持たないこの世界の人たちでは生きている世界が違う。
電話ができる前は、飛脚とか手紙とかその当たりが主流だったはず。
俺たちって実はとんでもないものを持っているのかもしれない。
そう思うと、命を狙われそうで少し怖くなった。
もう死ぬのはごめんだ。
「そうだな。確かに機会はなかったけど、心配はしてるんじゃないのか?」
「いいえ、親も肩身の狭い生活を送っているので私に構っている余裕は無いと思いますよ」
「そうなのか。大変なんだな」
「はい……」
悲しそうなメルの顔を見て、俺は益々救ってやらなくてはと思った。
それから二十分ほど歩き、学校に到着した。
「作戦決行は、二時間目の算数にしよう」
「わかりました。みなさんよろしくお願いします」
俺たちは、いつも通り教室の中に入っていった。
今日も一部の生徒がメルの陰口を言っているようだ。
本当に腹立たしい。
席に着いたメルの手も少し震えている。
この作戦は絶対に失敗出来ない。
そして二時間目がやってきた。
俺は目で水月に合図をした。
水月は自身のリュックからボタンを取り出し、机の下でボタンを押した。
すると、ブッという大きな音が教室全体に響き渡った。
もちろん予想通り、教室にいるみんなの視線はメルに向く。
そして、
「はぁ。まじでメルふざけんなよ」
「空気腐っちゃったんじゃない?」
といった酷い言葉が飛び交う。
水月が使った道具こそ、今回の作戦の秘密兵器である。
俺の頼みを聞き入れたスラが作り上げた、ワンプッシュおならボタン。
ボタンを一度押せば教室全体におならの音が響き渡るが、誰がおならをしたのかはわからないという優れものだ。
ただし、このクラスにおいては犯人が強制決定される。
本当にこの作戦のためだけに作られた特注品なのである。
話を戻そう。
メルがみんなから責め立てられる中、水月が手を挙げた。
「おいおいみんな、今の俺だぜ?
なんであいつがしたみたいになってんだ?」
この状況で堂々と発言できる水月は、やはり適任だった。
「なんだよ、水月だったのかよ」
「私気づかなかったわ」
クラスの雰囲気が一気に切り替わった。
これこそが問題なのだ。
メルにあれだけ言っておいて、違うと分かれば何事も無かったかのように振る舞う。
すぐに誰かに共感を求め、自分は間違っていなかったと主張する。
人間とはなんて愚かな生き物なのだろうか。
でも逆にこの心理を利用することも出来る。
つまり、メルのことを少しでも心配してくれているクラスメイトをこちら側に引き入れる。
そうすることで少しでも相手の数を削る。
「今、メルがおならしたって言ったやつ普通に最低じゃね?
俺が女の子だったら絶対泣いてたぜ」
俺のこの言葉こそ、共感を煽る第一歩目だ。
俺に続いてイムとキースも乗ってくる。
「確かに、最低ですね」
「おならなんて誰でもする」
こうなってくると、メルに対して酷いことを言ったやつらの肩身が狭くなる。
そしてトドメに、ソフィが先生を仲間に引き入れる。
「あらあら、先生はノーコメントかしら?」
先生は常に正しさを追い求めている。
つまり、この状況ではこちら側に着くしかないのだ。
「確かに、どうしてメルちゃんだと思ったのか気になりますね。
シオンくんと、ジェシカちゃん教えて貰えるかな?」
あの率先してメルに噛み付く二人は、シオンとジェシカというらしい。
ちなみにシオンは鹿人、ジェシカは狐人だ。
追い込まれた二人は周りの人の顔を見るが、誰も目を合わせようとしない。
つまり、完全に孤立したというわけだ。
その様子を見ていたメルは満足そうにしている。
しばらくして、ようやく諦めた二人は素直に理由を話した。
「メルはスカンクだから疑ったんだよ」
「私も同じよ」
「つまり、ただ偏見で疑ったというわけね……。
二人はあとで職員室に来なさい。
あとみんなに教えておくけど、スカンクは身の危険が迫っていないとおならはしないわ」
先生はサポートのつもりで言ったのだろうが、メルは気に入らなかったらしく手を挙げた。
「先生!」
「あら、メルちゃんどうしたの?」
「スカンクが出すのは……おならじゃなく分泌液です!」
俺は思わず笑ってしまった。
先生がいい感じに話を終わらせようとしてくれたのに、細かいことにこだわり変に目立ってしまうメルが面白かったからだ。
「何を笑ってるんだ!」
気づけば教室中が笑いに包まれた。
「それじゃあ、授業の続きをしましょうか」
そして算数の授業が終わり、二時間目の放課になった。
自然な笑顔を見せるメルに、シオンとジェシカは何回も謝罪をした。
聞こえてきた感じだと、今まで自分がしてきたことの愚かさを理解した上で今後は友達として関わっていきたいといった内容だった。
メルは彼らを許し、友達になることにしたらしい。
とりあえず一件落着だ。
「よっしゃあ! 今日は全力で行くぜ~!」
俺は起きるなり朝ご飯の支度を高速で済まし、身支度を済ませた。
「なんか今日の夢さん、朝から張りきってますね」
「そうですね。私もかなり早起きだったのですが、夢さんの方が先に起きられてましたから」
朝ごはんのサンドウィッチを食べながら、イムとヴェントスが話している。
そう思うのも無理はないだろう。
なぜなら、今日の俺は何か違うのだ。
いつもより体が軽いというか、やる気がみなぎってくるというか不思議な感じがする。
まるで何か魔法にかけられているみたいだ。
俺は不思議な感覚を有効利用し、掃除に洗濯といったできる限りの家事を全て済ました。
そして気づけば、学校へ行く時間になっていた。
みんなも時間通りにエントランスに集まってきた。
「よし、行こうか」
みんなは学校に向け歩き始めた。
俺は道中、メルに一つ質問をした。
「そういえば、昨日泊まったこと親に言ってなかったよな。
心配してるんじゃないのか?」
「学校から直接このマンションに来たのに、伝える機会ありましたっけ?」
そう言われればそうだ。
スラの通信用スライムがある生活が当たり前になっている俺たちと、通信手段を持たないこの世界の人たちでは生きている世界が違う。
電話ができる前は、飛脚とか手紙とかその当たりが主流だったはず。
俺たちって実はとんでもないものを持っているのかもしれない。
そう思うと、命を狙われそうで少し怖くなった。
もう死ぬのはごめんだ。
「そうだな。確かに機会はなかったけど、心配はしてるんじゃないのか?」
「いいえ、親も肩身の狭い生活を送っているので私に構っている余裕は無いと思いますよ」
「そうなのか。大変なんだな」
「はい……」
悲しそうなメルの顔を見て、俺は益々救ってやらなくてはと思った。
それから二十分ほど歩き、学校に到着した。
「作戦決行は、二時間目の算数にしよう」
「わかりました。みなさんよろしくお願いします」
俺たちは、いつも通り教室の中に入っていった。
今日も一部の生徒がメルの陰口を言っているようだ。
本当に腹立たしい。
席に着いたメルの手も少し震えている。
この作戦は絶対に失敗出来ない。
そして二時間目がやってきた。
俺は目で水月に合図をした。
水月は自身のリュックからボタンを取り出し、机の下でボタンを押した。
すると、ブッという大きな音が教室全体に響き渡った。
もちろん予想通り、教室にいるみんなの視線はメルに向く。
そして、
「はぁ。まじでメルふざけんなよ」
「空気腐っちゃったんじゃない?」
といった酷い言葉が飛び交う。
水月が使った道具こそ、今回の作戦の秘密兵器である。
俺の頼みを聞き入れたスラが作り上げた、ワンプッシュおならボタン。
ボタンを一度押せば教室全体におならの音が響き渡るが、誰がおならをしたのかはわからないという優れものだ。
ただし、このクラスにおいては犯人が強制決定される。
本当にこの作戦のためだけに作られた特注品なのである。
話を戻そう。
メルがみんなから責め立てられる中、水月が手を挙げた。
「おいおいみんな、今の俺だぜ?
なんであいつがしたみたいになってんだ?」
この状況で堂々と発言できる水月は、やはり適任だった。
「なんだよ、水月だったのかよ」
「私気づかなかったわ」
クラスの雰囲気が一気に切り替わった。
これこそが問題なのだ。
メルにあれだけ言っておいて、違うと分かれば何事も無かったかのように振る舞う。
すぐに誰かに共感を求め、自分は間違っていなかったと主張する。
人間とはなんて愚かな生き物なのだろうか。
でも逆にこの心理を利用することも出来る。
つまり、メルのことを少しでも心配してくれているクラスメイトをこちら側に引き入れる。
そうすることで少しでも相手の数を削る。
「今、メルがおならしたって言ったやつ普通に最低じゃね?
俺が女の子だったら絶対泣いてたぜ」
俺のこの言葉こそ、共感を煽る第一歩目だ。
俺に続いてイムとキースも乗ってくる。
「確かに、最低ですね」
「おならなんて誰でもする」
こうなってくると、メルに対して酷いことを言ったやつらの肩身が狭くなる。
そしてトドメに、ソフィが先生を仲間に引き入れる。
「あらあら、先生はノーコメントかしら?」
先生は常に正しさを追い求めている。
つまり、この状況ではこちら側に着くしかないのだ。
「確かに、どうしてメルちゃんだと思ったのか気になりますね。
シオンくんと、ジェシカちゃん教えて貰えるかな?」
あの率先してメルに噛み付く二人は、シオンとジェシカというらしい。
ちなみにシオンは鹿人、ジェシカは狐人だ。
追い込まれた二人は周りの人の顔を見るが、誰も目を合わせようとしない。
つまり、完全に孤立したというわけだ。
その様子を見ていたメルは満足そうにしている。
しばらくして、ようやく諦めた二人は素直に理由を話した。
「メルはスカンクだから疑ったんだよ」
「私も同じよ」
「つまり、ただ偏見で疑ったというわけね……。
二人はあとで職員室に来なさい。
あとみんなに教えておくけど、スカンクは身の危険が迫っていないとおならはしないわ」
先生はサポートのつもりで言ったのだろうが、メルは気に入らなかったらしく手を挙げた。
「先生!」
「あら、メルちゃんどうしたの?」
「スカンクが出すのは……おならじゃなく分泌液です!」
俺は思わず笑ってしまった。
先生がいい感じに話を終わらせようとしてくれたのに、細かいことにこだわり変に目立ってしまうメルが面白かったからだ。
「何を笑ってるんだ!」
気づけば教室中が笑いに包まれた。
「それじゃあ、授業の続きをしましょうか」
そして算数の授業が終わり、二時間目の放課になった。
自然な笑顔を見せるメルに、シオンとジェシカは何回も謝罪をした。
聞こえてきた感じだと、今まで自分がしてきたことの愚かさを理解した上で今後は友達として関わっていきたいといった内容だった。
メルは彼らを許し、友達になることにしたらしい。
とりあえず一件落着だ。
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