異世界マンションの管理人

ゆざめ

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学校の嫌われ者①

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 次の日になり、マンションが目的地に到着したようだ。
 俺はいつも通り早起きをし、みんなの朝ご飯を準備した。
 さらに、今日は学校に初めて通う日だったため、人数分のお弁当も準備しておいた。
 喜んで貰えたら嬉しいな。
 それから俺は一枚のメモを残し、今日の朝ポストに届いていた学校の教材をリュックに詰めるなど朝の支度をした。
 早起きだったこともあり少し早めに準備が済んだ俺は、隣の部屋に住む水月を呼び出した。
 水月は寝起きだったため、朝ごはんのおにぎりと学校の教材を渡しておいた。
 水月はすぐに支度を済ませ、一緒に外へついてきてくれた。
 しかし、外に出てみたはいいものの……。

「あれ、学校なんてどこにも見当たらないんだけど」

 マンションをぐるっと一周してみたが、どこにも学校らしき建物は見当たらない。

「確かに見当たらないな」

 水月も見つけられないようだ。
 ここで俺は閃いてしまった。
 もしかしたらこれはマンションの粋な計らいなのではないかと。

「おい水月……これって自分の足で登校してねってやつなんじゃねえの!」

「おい親友……絶対それだ!」

 テンションが高くなった二人はハイタッチをした。
 実に高校生らしい。
 とりあえず学校が見当たらない理由を考えることが出来たので、俺は屋上に学校を探しに、水月は十六階に飲み物を飲みに向かった。
 屋上へ上がると、まるで日本のような街並みが広がっていた。
 居酒屋にカラオケ、それに商店街もある。
 これはたっぷり遊ぶことが出来そうだ。
 そして肝心の学校は……見つけた。
 ここから南西方向に約三キロ、歩いて四十五分といったところか。
 もう支度を済ませていた俺は、時間になるまで屋上で時間を潰した。
 時間とは残しておいたメモに書かれている時間のことだ。
 メモには『朝七時半に出発予定』と書いておいた。
 実は昨日の夜、学校から手紙が届いていたのだ。
 内容は、
『あなた達のクラスはCクラスです。
 八時半に間に合うよう登校してください』
 だった。
 大体一時間前に出発すれば間に合うだろうという魂胆だ。
 約束の時間まであと数分、みんな続々とエントランスに集まってきた。

「待たせたな、親友!」

 水月は五分前に。

「我、参上」

「夢さん、朝からスラお姉様が変なんです。
 大丈夫でしょうか」

「まあスラなら大丈夫だろ」

 スラとイムは二分前に。

「夢お待たせ」

「すみません! お待たせしました~!」

 キースとヴェントスは一分前に。

「みんな……早いわね……」

 俺が時間ギリギリの人用に準備しておいた食パンを咥え、ソフィが時間ちょうどにやってきた。
 準備しておいて正解だった。

「これでみんな揃ったな。よし、行こうか」

 俺が先頭に立ち、みんなを学校まで案内した。
 その道中、慣れない景色に気を取られどんどん時間が削れていった。
 結果的に、本来なら余裕を持って登校できたはずが走って登校する羽目になった。
 早めにマンションを出ておいて本当に良かった。
 確か、俺たちのクラスはCクラスだったっけ。

「ついに学校が始まるんですね!」

「私ドキドキしてきました!」

 イムとヴェントスは落ち着かない様子だ。
 校内に入り少し歩くと、Cクラスと書かれた教室を見つけた。

「ここだな」

 俺たちは教室に入った。

「失礼します」

 教室の中にいたのは、たった十五人。
 俺たちを含めて、二十二人という小さな教室だ。
 そして教室にいる人たちを見ると、Cクラスにいるのは動物系統の種族だとわかった。
 俺は早速自分の席を探した。
 教室全体を見渡すと、一人だけ席が離れている子がいることに気がついた。

「俺の席はあそこか」

 しかも、その子の隣が俺の席のようだ。
 教室のみんなは何かコソコソと話している。
 中には笑っている人もいた。
 少し違和感を覚えたが、俺は席につき隣の子に話しかけた。

「俺は夢、これからよろしくね」

「うん」

 その子は全くこっちを向いてくれず、会話する気もないようだった。
 それでも俺は話しかけ続けた。

「君、名前はなんて言うの?」

「メル」

「へえ、メルっていうのか。いい名前だな!」

 俺が名前を褒めると、メルは顔を上げてくれた。
 そして俺の顔をしっかりと見ながら、笑顔でこういった。

「お母さんがつけてくれたんだ。私もこの名前が好き」

 綺麗な紫色の髪は襟足が長く、外側にくるんと跳ねていてとても可愛らしい。
 歳も近そうだし、仲良くなれそうだ。
 それにしてもなぜこの子だけ席が離れているのだろうか。
 そんなことを考えていると、猫耳の生えた先生が入ってきて自分の自己紹介をし始めた。
    話を聞いていなかった俺は、若くて綺麗な先生だなとしか思わなかった。
 先生の自己紹介が終わると、マンションのみんなが自己紹介を始めた。
 そんな中、俺の頭の中はメルの席がなぜ離れているのかという疑問でいっぱいだった。

「じゃあ次、夢くん。
 お~い、夢くん。夢くん!」

 ツンツンと腕をつつかれ、メルの方を見るとこう言われた。

「ねえ呼ばれてるよ」

 メルに言われて、ようやく呼ばれていることに気がついた。

「は、はい!
 俺は鹿島夢っていいます。
 好きなことはみんなと楽しく話すことです。
 よろしくお願いします」

 みんなは大きな拍手でお出迎えしてくれた。

「メル、ありがとな」

「うん、いいよ」

 俺はメルと少しは親しくなれた気がした。
 しかし、なぜ彼女の席はみんなから離れているのだろう。
 とにかく気になる。
 そしてやってきた昼ごはんの時間。
 俺はこの疑問の答えを知ることになる。
 俺はキースに、

「二人で食べない?」

 と誘われ外に来ていた。
 食べる場所を探すため学校の敷地内を歩いていると、校舎の裏側から声がする。
 俺は隠れ人気スポットなのかと思い、キースを連れてその場所へ向かった。
 しかし、そこにいたのは二人の男と壁際に追い詰められているメルだった。

「これって……大変だよ早く止めないと!」

 俺はすぐにでも止めに入ろうと思ったが、キースに腕を掴まれ前に進めなかった。

「キース離せ!」

「今捕まえたところで、あいつらは何も罰を受けない。
 まずは証拠の確保が優先」

 確かにキースの言う通りだ。
 はっきりとした証拠がない限り、俺の取り押さえる行動が罪になる可能性がある。

「お前は臭いから教室に来んなって言ったよな!」

「なんか言ってみろよ。
 チッ、これだから臭獣人スカンクは嫌いなんだ」

「でも私……何もしてない……」

「はぁ? お前舐めてんの?
 だ~か~ら、存在が臭いって言ってんだろうが!」

 メルは男にお腹を蹴られ、その場に倒れ込んでしまった。
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