今夜、夏の終わりを二人で

【第三章】流れゆく季節、別れの先に

新しい季節

夏が終わり、秋の風が吹き始めた。海辺の町は少し冷え込み、学校も再びいつもの日常へと戻っていた。しかし、隼人にとっては以前の生活とはどこか違っていた。真由がいない学校は、まるで色を失ったかのように感じられた。
「瀬川、最近どうした？元気ないじゃん。」
サッカー部の友人たちはそんな隼人の様子を心配して声をかけたが、彼は軽く笑ってごまかすだけだった。自分でも、こんなにも真由のことが心に残るとは思わなかった。
ある日、隼人は真由が通っていた図書室にふらりと足を運んだ。いつも彼女が座っていた窓際の席に腰を下ろし、ふと目を閉じると、真由と過ごしたあの日々が蘇ってきた。
「……真由、今頃どうしてるんだろう。」
引っ越し先の連絡先を聞いていなかったことを悔やみながらも、彼は彼女が幸せであることを願うしかなかった。隼人の手には、祭りの日にもらったお守りがまだ握られていた。小さな木彫りのそれは、彼にとって真由との唯一の繋がりだった。