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しおりを挟む夜会は通常より早い時間に切り上げられた。
というのも、祭りのフィナーレとして花火の打ち上げを予定しているからだ。
その夜会が終わった後、王宮内のとある部屋で、リベラートとラファエロがゆったりと寛いでいた。
「それにしても、エドアルドの奴………あれは本気で惚れ込んでいるな」
「惚れ込んでいるどころではありませんよ。クラリーチェ嬢が悪女だったら今頃、この国は本当に終わっていたでしょうね」
「………そんな女だったら、エドアルドが惚れる訳ないだろう?それに、気がついた時点でラファエロが消しているだろうしな」
「………人聞きが悪い事を仰らないでください。私は、あなたとは違って、平和主義者なんですよ?」
リベラートの言葉に、心外だといった風にラファエロは形の良い眉を持ち上げた。
「それは初耳だな。平和主義者というのは、争いを好まない者の事を指すのだとばかり思っていたが、平和のために手段を選ばない者の事も指すのか。その理屈で言えば、私も立派な平和主義者だぞ?」
ラファエロを誂いながら、リベラートはグラスに注がれた葡萄酒を一気に呷る。
「………冗談はさておき、安心したよ」
ふっと表情を緩めたリベラートはラファエロを見つめた。
「正直、お前達兄弟の事を心配していたんだ。いくら優秀だの何だのと言われていても、こんなにも腐った国の立て直しが、本当に出来るのかってね。………だが、エドアルドは強くなった。愛する者を見つけ、彼女を守るために。………次はお前の番だな、ラファエロ。グロッシ侯爵令嬢にはきちんと気持ちを伝えたのか?」
「なっ…………!余計なお世話です!」
真っ赤になって声を荒らげるラファエロの様子を愉しそうに眺めると、リベラートはふと窓の外を見た。
「………そろそろ、時間だな。エドアルドは愛しの姫君と逃避行に出掛けたのか?」
「半刻程前に、城門を出たそうです」
「予定通りだな。今頃いい雰囲気になっているだろうから、エドアルドはさぞかし怒り狂う筈だぞ。………この目で見れないのが残念だな」
「………本当に、親子揃って性格が悪いですね」
「煩い。『頃合いを見計らって派手に祝ってやれ』との父上からの指示だからな」
「伯父上らしいというか、何というか………」
ラファエロが溜息をつくのと同時に、輝く月の真横に、大輪の花がぱっと咲く。
それを追いかけるように次々と花火が打ち上がり、腹の底に響くような重たい音が聞こえてきた。
「きっと、思い出の場所で、特別な日に見る花火は最高に美しいんだろうな」
静かに、リベラートが微笑んだ。
というのも、祭りのフィナーレとして花火の打ち上げを予定しているからだ。
その夜会が終わった後、王宮内のとある部屋で、リベラートとラファエロがゆったりと寛いでいた。
「それにしても、エドアルドの奴………あれは本気で惚れ込んでいるな」
「惚れ込んでいるどころではありませんよ。クラリーチェ嬢が悪女だったら今頃、この国は本当に終わっていたでしょうね」
「………そんな女だったら、エドアルドが惚れる訳ないだろう?それに、気がついた時点でラファエロが消しているだろうしな」
「………人聞きが悪い事を仰らないでください。私は、あなたとは違って、平和主義者なんですよ?」
リベラートの言葉に、心外だといった風にラファエロは形の良い眉を持ち上げた。
「それは初耳だな。平和主義者というのは、争いを好まない者の事を指すのだとばかり思っていたが、平和のために手段を選ばない者の事も指すのか。その理屈で言えば、私も立派な平和主義者だぞ?」
ラファエロを誂いながら、リベラートはグラスに注がれた葡萄酒を一気に呷る。
「………冗談はさておき、安心したよ」
ふっと表情を緩めたリベラートはラファエロを見つめた。
「正直、お前達兄弟の事を心配していたんだ。いくら優秀だの何だのと言われていても、こんなにも腐った国の立て直しが、本当に出来るのかってね。………だが、エドアルドは強くなった。愛する者を見つけ、彼女を守るために。………次はお前の番だな、ラファエロ。グロッシ侯爵令嬢にはきちんと気持ちを伝えたのか?」
「なっ…………!余計なお世話です!」
真っ赤になって声を荒らげるラファエロの様子を愉しそうに眺めると、リベラートはふと窓の外を見た。
「………そろそろ、時間だな。エドアルドは愛しの姫君と逃避行に出掛けたのか?」
「半刻程前に、城門を出たそうです」
「予定通りだな。今頃いい雰囲気になっているだろうから、エドアルドはさぞかし怒り狂う筈だぞ。………この目で見れないのが残念だな」
「………本当に、親子揃って性格が悪いですね」
「煩い。『頃合いを見計らって派手に祝ってやれ』との父上からの指示だからな」
「伯父上らしいというか、何というか………」
ラファエロが溜息をつくのと同時に、輝く月の真横に、大輪の花がぱっと咲く。
それを追いかけるように次々と花火が打ち上がり、腹の底に響くような重たい音が聞こえてきた。
「きっと、思い出の場所で、特別な日に見る花火は最高に美しいんだろうな」
静かに、リベラートが微笑んだ。
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