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01ーシュニャ
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体にわずかな振動を感じて、俺は目を覚ました。
ガタガタ、となにかが細やかに震える音と振動。目線を上げる。よほど深く眠っていたらしい。まだ眠くて頭がぼうっとする。目がじゅうぶんに開かない。
顔を上げて、まず目に飛び込んできたのは暗闇に浮かぶさまざまな色の光だった。赤、青、紫。熱帯魚のうろこみたいに色とりどりな色のネオンが、夜の空にぶちまけられた宝石みたいにぴかぴか光っている。
次に目に飛び込んできたのは、どこまでも続くアスファルトの道と、一定間隔で並んで、道路を照らす街灯。氷の上をなめらかに滑る船みたいに、次々に道路を疾走していく車。それも公道では出せないようなスピードを出して、俺の乗る車を抜き去っていく。
どうやら俺は高速道路を走る車に乗せられているらしいとわかった。目線の位置が高い。トラックに乗っているのだと思われる。運転席と助手席に加えて、俺の座っている後部座席がある。めずらしいタイプのトラックだ。たしか、ダブルデッカーって呼ばれる種類のトラックだった気がする。
頭がすこし、はっきりとしてきた。
ここ、どこだろう。きょろきょろと左右を見まわす。窓越しの都会的な風景から、ここは首都高なのかと思った。けれど林立するビルの感じが、すこし違う気がする。蔦のある植物をモデルにしたような変わった形状の細長いビルがいくつも、空に向かってにょきにょき生えている。
外は真っ暗だ。ちょうど窓ガラスが鏡の役割を果たしてくれる。ぼんやりとではあったけれど、窓に自分の姿が映る。その姿にぎょっとした。髪の毛が異様に長く伸びている。毛先が腰まで届くくらいだ。かつらでもかぶせられているみたいだった。
それから――驚愕した。口に金属製のマスクみたいなものをはめられている。そしてなぜか、真っ白な拘束衣を着せられていた。筒の太い長袖が左右に交差するように腕組みをさせられたうえに、縦横に複数本走るベルトで上半身をがっちりと固定されている。映画でしかお目にかかったことがない、凶暴な犯罪者を拘束する目的で使われる特殊な衣服。俺はベルトでぐるぐる巻きにされた拘束衣の上からさらにシートベルトをかけられて、車の後部座席に固定されていた。
な、なんで拘束されてるの……!?
正面に視線を戻すと、ヘッドレストからのぞく二つの頭。一人は運転席に、もう一人は助手席に。男が二人、まえの座席に座っている。
ま、まさか、誘拐……!?
本格的に恐怖が走って、思わず叫び声を上げた。口を塞がれているから、うむうー! っていう力のない叫び声にしかならなかったけど。
いくらなんでも成人した男が。この平和な日本で誘拐されるなんて、ありえない。この二人組にどこかで拉致されて、車に乗せられた記憶もない。
直近で覚えている記憶をたどってみる。今日は、勤めさきの会社の入社式だった。
俺は高校を卒業後、いまの勤めさきに契約社員として入社した。以来、勤続四年目になる。これまでの真面目な勤務態度が評価されたようで、正社員へと転向させてもらえることになった。ちょうど今年、大卒の新入社員と同じ年齢になったこともあり、会社からの好意で、扱いも正社員入社の子たちと同じようにしてくれた。入社式へ参加し、新入社員と同じ研修が受けられる。
入社式の帰り道。今年度入社の新入社員に、飲みに行こうと誘われた。これからともに働く仲間との交流を口実に、昼から居酒屋で酒を酌み交わす。あまり遅くならないうちに解散し、俺は家に帰るまえにコンビニに立ち寄った。たしか炭酸水を買って……。そこから記憶がない。
俺の家は残念ながら、身代金を要求できるような資産家じゃない。だから誘拐しても人質としての価値なんか皆無だ。まして唯一、俺の肉親と呼べる人とは数年まえから音信不通。身代金の宛先がない。
俺が叫び声(もとい強めの鼻濁音)を上げたのに気がついたのだろう。助手席に座っていた一人がうしろを振り返った。
「やあ、お目覚めかい。お姫さま?」
振り向いたその人はとびきり魅力的な笑顔で、ウィンクをよこしてみせた。俺は自分が誘拐されたかもしれないってことを一瞬忘れて、その笑顔にみとれた。
ハイウェイの薄明かりが照らしたその人は、明るい髪と目の色をしていた。毛先にすこしウェーブのかかった髪をサイドに流して、形のいい四角いおでこが見えている。顔のパーツが大きいのにくどさはない。パーツの大きさと配置が完璧だからだろう。ハリウッド映画に出てくる優美な俳優、もしくは北欧のフィギュアスケート選手を思わせる華やかな美貌だ。
「起きたみたいだよ、フェイ」
俺に笑顔を見せたその男の人は隣の人――運転席でハンドルを握っているべつの男の人に話しかけた。フェイと呼ばれた運転手は一瞬だけ顔を横に向けて、ちらりと俺に目線をくれると、またすぐに正面を向いてしまった(運転中だからあまり、よそ見ができなかったせいだと思う)。
すこし横顔が見えただけだけれど、運転席の人もまたものすごい美貌だった。
美人画の大家が画家人生最大の注意を払って繊細なひと筆で描いたような、流麗な額から鼻筋にかけての線。ちらりと俺を見つめた瞳は、真夏の暑さを一瞬で忘れさせてくれる冷たい湖水みたいな清涼さに満ちていた。
「特区に入るまで眠ったままかと思ったのに。麻酔薬、全量を打たなかったの?」
「……その線の細さだ。全量でなくても、効くと思った」
そっけなく、どこかいらだっているように、フェイが答える。
「優しいねえ、フェイ。深層麻酔は効きすぎると目覚めるときぐったりだから。お姫さまのかわいさに、手加減してあげたんだ?」
「そんなんじゃ、ない」
きゅっと視線鋭く、フェイは助手席の男をひとにらみした。
「またまた。俺、知ってるんだぜ。お姫さまって、フェイのもろタイプだろ?」
「……アッシュ……!」
フェイは怒りをあらわに、金髪の人――アッシュを叱りつけた。
「口を慎め。仕事中だぞ」
棘のある声でフェイは注意をうながす。叱られているはずのアッシュはにこにこして、
「わかった、わかった。そう、カリカリしなさんなって」
英語圏の人がよくやる「やれやれ」ポーズみたいに、腕をWの形にしただけだった。
いまの二人のやり取りから、助手席のイケメンはアッシュという名前なんだとわかった。それから運転席にいるのがフェイ。フェイがイライラしているように見えたのは気のせいじゃなくて、本当にいらだっていたらしい。体から無数のスパイクが飛び出ているみたいに、アッシュに対する態度がきりきり緊張している。
「ああ、ごめんね。びっくりさせて」
喧嘩みたいなやり取りで俺が萎縮したのがわかったのか。アッシュはもう一度こちらを振り返り、安心させるようににっこり笑顔を作る。
「おっと、それから。口枷をはめたままだったか」
アッシュは胸元を探って小さな黒い塊を取り出した。なんだろう、小さいリモコン? アッシュがボタンを押すと、がちん、と音がして急に口元が涼しくなった。膝のうえにぼとりと俺の口元を覆っていた金属製のマスクが落ちる。
「アッシュ……」
フェイがまた叱るようにアッシュのことをにらみつける。
「口枷をはずすのは規則違反だろ?」
「あはは、まあこのくらいは大目に見てもらおう。一方通行のコミュニケーションは、お姫さまをおびえさせるだけだよ」
フェイが顔をかたむけてちらっと俺を見た。すばやくまえを向いたあとでふうーっと深いため息を吐くと、だんまりになる。もうアッシュに対してお小言を言うつもりはないみたいだ。規則違反を黙認してくれるってことなんだろう。
「あらためまして。俺はアッシュ・グリュフォードだよ。元連合軍所属で、いまは市に雇われていろいろな奉仕活動に従事してる。お姫さまの名前は?」
問われてきょとんとする。後部座席には俺以外いない。荷台に女の子でもいるんだろうか?
「きみだよ、きみ」
アッシュが戸惑う俺の様子をくすくす笑う。
「お、俺……?」
さっきから口にしていた「お姫さま」って、俺のことだったの? 照れて頬が赤くなる。べつに俺、お姫さまみたいに見える要素、ないと思うんだけど。中肉中背よりはやや痩せ気味で、中性的な見かけをしているからか?
「俺は……ソラ。七色ソラです」
「ナナツイロ・ソラ……。ナナツイロって、七つの色って意味?」
「あ、はい……」
耳慣れない名前だという自覚はある。俺はこれまで、自分と同じ名字の人にお目にかかったことはない。日本全国に三世帯いるかいないか、っていうレア度じゃないだろうか。
「へえ。空にかかる七つの色……。ああ、虹ってことか! ナナツイロ自体きれいな名前だけど、隠れた意味に気づくとさらにきれいな名前だね」
アッシュは再び笑う。満面の笑みに白い歯がこぼれる。きらーんって、歯が光る効果音が聞こえてきそうな笑みだ。
語順からしてアッシュは姓名の順を誤解をしていそうなので、そこは正しておく。
「あ、あの。名字が七色です。名前はソラ」
「ああ、そうなのか。ソラ・ナナツイロだね」
話せるようになって不思議なことに気づいた。容貌からしてアッシュはたぶん、欧米圏出身の人だと思われる。でも日本語で話している。それも外国訛りのいっさいない流暢な日本語だ。
「ほら、フェイも自己紹介」
まろやかな春日のあたたかさを含んだ声でうながされて、フェイが渋々といった様子で口を開く。
「フェイヤン・ウォン」
元軍人という軽い自己紹介も混ぜてくれたアッシュに対して、フェイは短く名乗っただけだった。フェイはフェイヤンを略した呼び名だったらしい。態度はそっけないけれど、うながされたら一応、答えてくれる優しさはあるみたいだ。
フルネームを聞いて、フェイはアジア圏の人みたいな名前だなと思った。見た目もどことなく日本人に近いものを感じて、親しみを覚える。
「フェイはアーレンなんだ。どうりで美人だろ?」
「アーレンって、なんですか……?」
これまで日本語で話していたアッシュから、急に知らない単語が出てきた。
誘拐犯にしては、アッシュはあまりにも気さくだ。それから転校初日に不安に包まれている学生を出迎える、学級委員長みたいなあたたかさに満ちてもいる。俺はいつのまにか恐怖を忘れて、自然と質問を放っていた。
「アーレンはね、東の果てから来た民族って言われてるんだ。青みがかった黒髪をして、瞳もダークなトーンの人が多い。目元が涼やかで、美人ばっかりだなんだ。そうそう、俺がひと月まえに町中で声をかけた子もアーレンの血が混ざってて……」
「アッシュ……!」
いらだった声が、ナンパ話を披露しようとしたアッシュの演説に割って入った。
「あまり余計なことをしゃべるな。相手は服役囚だぞ」
「はいはい。ごめんね、フェイ」
アッシュは多少、申し訳なさそうに一瞬、眉毛をハの字にする。
……フェイはいま、なんて言った……?
俺のことを「服役囚」って言ったのか……?
そう考えたら、拘束衣を着せられているのも納得だ。でも、なんで俺が服役囚? 二人とも俺のことを、だれかと取り違えているんじゃないのか。
「あのっ……。お、俺はどこに連れて行かれるんですか……? それに服役って、俺、なにも悪いことをした覚えがないんですけど……」
「……それはね」
アッシュが口を開きかけて、表情に緊張を走らせた。顔全体がきゅっと引き締まる。
「フェイ、尾けられてる」
アッシュが告げるまえにフェイもわかっていたようで、短くうなずいた。
「……やっぱり来たか」
フェイはすばやくルームミラーを見上げて、それから右側のサイドミラーで背後の様子を確認している。
アッシュは元軍人。そう自称したのにも納得する。フェイに叱られても絶えずにこにこふわふわの笑みを浮かべていたのに。左右を見まわして警戒を強めるいま、はるか遠くの敵をライフルで狙うスナイパーみたいに鋭い目つきをしている。
俺もルームミラーを見上げる。黒いトラックの影が一瞬見えて、そしてすぐに消えた。トラックはあっというまにスピードを上げて、俺たちの走る隣を併走してくる。トラックはぎりぎりと距離を詰め、そして……。
なんと、捨て身でこちらに体当たりをしてきた。
「うわっ……!」
巨大なトラック同士が衝突する。がつん、と車体が大きく揺れる。俺は思わず、叫び声を上げた。
隣の車線を併走する車両はまた何度も体当たりを試みてくる。ぶつかられるたびに大きく車体が揺れて、いまにもスピンしてしまいそうだ。このまま高速道路のガードレールをぶち破り、ビルの谷間にはじき出されてしまうんじゃないかっていう恐怖を味わった。時速百キロを超える速さで走りながら、体当たりを繰り返すなんて、正気の沙汰じゃない!
「こわいよね? 舌を噛まないように、ちゃんと口を閉じていて!」
俺の内心の恐怖を見透かしたように、険しい表情をややゆるめたアッシュがこちらを気遣って注意をうながしてくれる。俺は怖くて声も出ない。こくこくと首を縦に振ってうなずくのが精一杯だった。
「フェイ、逃げ切れる?」
「無論」
ぐんっと体に重力がかかり、シートに押しつけられる感じがした。フェイがアクセルを踏み込んだんだ。黒いトラックをみるみる引き離していく。
メーターはいくつを指しているんだろう? 法定速度なんて、とっくに振り切れている気がした。猛スピードで走っているのにフェイは見事なハンドルさばきで、まえを走る車をすいすい追い抜いていく。
「このまま経済特区まで飛び込むぞ」
スピードを維持し続けたまま、フェイが言う。高速道路はどこまでも平坦な道がまっすぐ続いていて、まだ料金所も見えない。でも、どこかに逃げられる場所があるみたいだ。
「……嘘だろ……!?」
チッと舌打ちをして、フェイがあせった声を出す。フェイと同じく、俺も絶望した。後方のトラックが追いついてきたんだ。引き離したのもつかの間、あっというまに隣に並ばれる。
相手の車の運転席から、にゅっと細長い筒のようなものが飛び出したかと思うと、車にものすごい衝撃を感じた。ばあん、ばあん、と巨人の手のひらで車体をぶったたかれているみたいな衝撃が何度も繰り返される。
「衝撃弾まで持ってるのか……!」
助手席上部の手すりを握って体を支えながら、アッシュが苦しそうにうめく。
衝撃弾ってなんだろう。銃弾……だとしたら、ガソリンに引火したら大変なことになりそうだ。俺たちの乗ったトラックが炎の膜に包まれ、あちこちで車がクラッシュする大事故が起こるさまを想像して、俺はさーっと頭が冷えた。
このままじゃまずい。本当に殺されるかもしれない。
ばあん、ばあん、と車体に感じる大きな衝撃。
死の恐怖。
車体が不安定に揺れるなかでも、フェイは必死にアクセルを踏み込んでハンドルをさばき、逃げ込むさきを目指している。
どうか、無事にたどり着いて。俺はぎゅっと目をつぶって、必死に祈った。
そのまま目をつぶっていると、急に周囲の音が消えた。タイヤがアスファルトにこすれる音も、衝撃弾をぶつけられる破裂音もしない。
車体の振動も感じなくなったのを不思議に思って目を開けると、目のまえは真っ白い光に包まれていた。
えっ、と思った次の瞬間。
俺たちの乗ったトラックは突然、空中に放り出された。
フリーフォールで落下するみたいに、体のなかで内蔵がひゅんと浮かび上がる気持ち悪さを一瞬だけ感じたあとで、トラックはどすんと地面に着地した。放り出されたときの惰性で地面を滑るのを、フェイが驚異の反射神経ですばやくハンドルを切って制止する。
きいいい、とタイヤが地面をこすってすさまじい悲鳴を上げる。フェイはドリフトを効かせながらブレーキを踏み込み、制御を失いかけた車をなんとか停止させた。
しーんと車内に、沈黙が満ちる。
俺は窓越しに、そとの景色をたしかめる。周囲は閑散としている。どこかの車道みたいだけれど、人一人どころか車の一台も通っていないのは幸いだった。道幅が狭い。さっきまで走っていた高速道路とは違う。遠くに見えていたビル群が目のまえにある。
衝撃弾を食らって高速のガードレールを突き破り、ついに空中にはじき飛ばされたんだろうか。それでたまたま、ここに着地した? 不思議に思って見上げても、あたりには高速道路の支柱もガードレールも見当たらない。それにビルの数階分に相当する高さから車ごと放り出されて、三人とも無傷で済むはずがない。
フェイとアッシュが俺を振り返る。二人ともおどろいて、目を大きく見開いていた。
「……シュニャ……」
アッシュが、俺を見つめて惚けたようにそうひと言口にした。
たしかにシュニャと言った。アーレンと同じく、それはまた俺の知らない言葉だった。
ガタガタ、となにかが細やかに震える音と振動。目線を上げる。よほど深く眠っていたらしい。まだ眠くて頭がぼうっとする。目がじゅうぶんに開かない。
顔を上げて、まず目に飛び込んできたのは暗闇に浮かぶさまざまな色の光だった。赤、青、紫。熱帯魚のうろこみたいに色とりどりな色のネオンが、夜の空にぶちまけられた宝石みたいにぴかぴか光っている。
次に目に飛び込んできたのは、どこまでも続くアスファルトの道と、一定間隔で並んで、道路を照らす街灯。氷の上をなめらかに滑る船みたいに、次々に道路を疾走していく車。それも公道では出せないようなスピードを出して、俺の乗る車を抜き去っていく。
どうやら俺は高速道路を走る車に乗せられているらしいとわかった。目線の位置が高い。トラックに乗っているのだと思われる。運転席と助手席に加えて、俺の座っている後部座席がある。めずらしいタイプのトラックだ。たしか、ダブルデッカーって呼ばれる種類のトラックだった気がする。
頭がすこし、はっきりとしてきた。
ここ、どこだろう。きょろきょろと左右を見まわす。窓越しの都会的な風景から、ここは首都高なのかと思った。けれど林立するビルの感じが、すこし違う気がする。蔦のある植物をモデルにしたような変わった形状の細長いビルがいくつも、空に向かってにょきにょき生えている。
外は真っ暗だ。ちょうど窓ガラスが鏡の役割を果たしてくれる。ぼんやりとではあったけれど、窓に自分の姿が映る。その姿にぎょっとした。髪の毛が異様に長く伸びている。毛先が腰まで届くくらいだ。かつらでもかぶせられているみたいだった。
それから――驚愕した。口に金属製のマスクみたいなものをはめられている。そしてなぜか、真っ白な拘束衣を着せられていた。筒の太い長袖が左右に交差するように腕組みをさせられたうえに、縦横に複数本走るベルトで上半身をがっちりと固定されている。映画でしかお目にかかったことがない、凶暴な犯罪者を拘束する目的で使われる特殊な衣服。俺はベルトでぐるぐる巻きにされた拘束衣の上からさらにシートベルトをかけられて、車の後部座席に固定されていた。
な、なんで拘束されてるの……!?
正面に視線を戻すと、ヘッドレストからのぞく二つの頭。一人は運転席に、もう一人は助手席に。男が二人、まえの座席に座っている。
ま、まさか、誘拐……!?
本格的に恐怖が走って、思わず叫び声を上げた。口を塞がれているから、うむうー! っていう力のない叫び声にしかならなかったけど。
いくらなんでも成人した男が。この平和な日本で誘拐されるなんて、ありえない。この二人組にどこかで拉致されて、車に乗せられた記憶もない。
直近で覚えている記憶をたどってみる。今日は、勤めさきの会社の入社式だった。
俺は高校を卒業後、いまの勤めさきに契約社員として入社した。以来、勤続四年目になる。これまでの真面目な勤務態度が評価されたようで、正社員へと転向させてもらえることになった。ちょうど今年、大卒の新入社員と同じ年齢になったこともあり、会社からの好意で、扱いも正社員入社の子たちと同じようにしてくれた。入社式へ参加し、新入社員と同じ研修が受けられる。
入社式の帰り道。今年度入社の新入社員に、飲みに行こうと誘われた。これからともに働く仲間との交流を口実に、昼から居酒屋で酒を酌み交わす。あまり遅くならないうちに解散し、俺は家に帰るまえにコンビニに立ち寄った。たしか炭酸水を買って……。そこから記憶がない。
俺の家は残念ながら、身代金を要求できるような資産家じゃない。だから誘拐しても人質としての価値なんか皆無だ。まして唯一、俺の肉親と呼べる人とは数年まえから音信不通。身代金の宛先がない。
俺が叫び声(もとい強めの鼻濁音)を上げたのに気がついたのだろう。助手席に座っていた一人がうしろを振り返った。
「やあ、お目覚めかい。お姫さま?」
振り向いたその人はとびきり魅力的な笑顔で、ウィンクをよこしてみせた。俺は自分が誘拐されたかもしれないってことを一瞬忘れて、その笑顔にみとれた。
ハイウェイの薄明かりが照らしたその人は、明るい髪と目の色をしていた。毛先にすこしウェーブのかかった髪をサイドに流して、形のいい四角いおでこが見えている。顔のパーツが大きいのにくどさはない。パーツの大きさと配置が完璧だからだろう。ハリウッド映画に出てくる優美な俳優、もしくは北欧のフィギュアスケート選手を思わせる華やかな美貌だ。
「起きたみたいだよ、フェイ」
俺に笑顔を見せたその男の人は隣の人――運転席でハンドルを握っているべつの男の人に話しかけた。フェイと呼ばれた運転手は一瞬だけ顔を横に向けて、ちらりと俺に目線をくれると、またすぐに正面を向いてしまった(運転中だからあまり、よそ見ができなかったせいだと思う)。
すこし横顔が見えただけだけれど、運転席の人もまたものすごい美貌だった。
美人画の大家が画家人生最大の注意を払って繊細なひと筆で描いたような、流麗な額から鼻筋にかけての線。ちらりと俺を見つめた瞳は、真夏の暑さを一瞬で忘れさせてくれる冷たい湖水みたいな清涼さに満ちていた。
「特区に入るまで眠ったままかと思ったのに。麻酔薬、全量を打たなかったの?」
「……その線の細さだ。全量でなくても、効くと思った」
そっけなく、どこかいらだっているように、フェイが答える。
「優しいねえ、フェイ。深層麻酔は効きすぎると目覚めるときぐったりだから。お姫さまのかわいさに、手加減してあげたんだ?」
「そんなんじゃ、ない」
きゅっと視線鋭く、フェイは助手席の男をひとにらみした。
「またまた。俺、知ってるんだぜ。お姫さまって、フェイのもろタイプだろ?」
「……アッシュ……!」
フェイは怒りをあらわに、金髪の人――アッシュを叱りつけた。
「口を慎め。仕事中だぞ」
棘のある声でフェイは注意をうながす。叱られているはずのアッシュはにこにこして、
「わかった、わかった。そう、カリカリしなさんなって」
英語圏の人がよくやる「やれやれ」ポーズみたいに、腕をWの形にしただけだった。
いまの二人のやり取りから、助手席のイケメンはアッシュという名前なんだとわかった。それから運転席にいるのがフェイ。フェイがイライラしているように見えたのは気のせいじゃなくて、本当にいらだっていたらしい。体から無数のスパイクが飛び出ているみたいに、アッシュに対する態度がきりきり緊張している。
「ああ、ごめんね。びっくりさせて」
喧嘩みたいなやり取りで俺が萎縮したのがわかったのか。アッシュはもう一度こちらを振り返り、安心させるようににっこり笑顔を作る。
「おっと、それから。口枷をはめたままだったか」
アッシュは胸元を探って小さな黒い塊を取り出した。なんだろう、小さいリモコン? アッシュがボタンを押すと、がちん、と音がして急に口元が涼しくなった。膝のうえにぼとりと俺の口元を覆っていた金属製のマスクが落ちる。
「アッシュ……」
フェイがまた叱るようにアッシュのことをにらみつける。
「口枷をはずすのは規則違反だろ?」
「あはは、まあこのくらいは大目に見てもらおう。一方通行のコミュニケーションは、お姫さまをおびえさせるだけだよ」
フェイが顔をかたむけてちらっと俺を見た。すばやくまえを向いたあとでふうーっと深いため息を吐くと、だんまりになる。もうアッシュに対してお小言を言うつもりはないみたいだ。規則違反を黙認してくれるってことなんだろう。
「あらためまして。俺はアッシュ・グリュフォードだよ。元連合軍所属で、いまは市に雇われていろいろな奉仕活動に従事してる。お姫さまの名前は?」
問われてきょとんとする。後部座席には俺以外いない。荷台に女の子でもいるんだろうか?
「きみだよ、きみ」
アッシュが戸惑う俺の様子をくすくす笑う。
「お、俺……?」
さっきから口にしていた「お姫さま」って、俺のことだったの? 照れて頬が赤くなる。べつに俺、お姫さまみたいに見える要素、ないと思うんだけど。中肉中背よりはやや痩せ気味で、中性的な見かけをしているからか?
「俺は……ソラ。七色ソラです」
「ナナツイロ・ソラ……。ナナツイロって、七つの色って意味?」
「あ、はい……」
耳慣れない名前だという自覚はある。俺はこれまで、自分と同じ名字の人にお目にかかったことはない。日本全国に三世帯いるかいないか、っていうレア度じゃないだろうか。
「へえ。空にかかる七つの色……。ああ、虹ってことか! ナナツイロ自体きれいな名前だけど、隠れた意味に気づくとさらにきれいな名前だね」
アッシュは再び笑う。満面の笑みに白い歯がこぼれる。きらーんって、歯が光る効果音が聞こえてきそうな笑みだ。
語順からしてアッシュは姓名の順を誤解をしていそうなので、そこは正しておく。
「あ、あの。名字が七色です。名前はソラ」
「ああ、そうなのか。ソラ・ナナツイロだね」
話せるようになって不思議なことに気づいた。容貌からしてアッシュはたぶん、欧米圏出身の人だと思われる。でも日本語で話している。それも外国訛りのいっさいない流暢な日本語だ。
「ほら、フェイも自己紹介」
まろやかな春日のあたたかさを含んだ声でうながされて、フェイが渋々といった様子で口を開く。
「フェイヤン・ウォン」
元軍人という軽い自己紹介も混ぜてくれたアッシュに対して、フェイは短く名乗っただけだった。フェイはフェイヤンを略した呼び名だったらしい。態度はそっけないけれど、うながされたら一応、答えてくれる優しさはあるみたいだ。
フルネームを聞いて、フェイはアジア圏の人みたいな名前だなと思った。見た目もどことなく日本人に近いものを感じて、親しみを覚える。
「フェイはアーレンなんだ。どうりで美人だろ?」
「アーレンって、なんですか……?」
これまで日本語で話していたアッシュから、急に知らない単語が出てきた。
誘拐犯にしては、アッシュはあまりにも気さくだ。それから転校初日に不安に包まれている学生を出迎える、学級委員長みたいなあたたかさに満ちてもいる。俺はいつのまにか恐怖を忘れて、自然と質問を放っていた。
「アーレンはね、東の果てから来た民族って言われてるんだ。青みがかった黒髪をして、瞳もダークなトーンの人が多い。目元が涼やかで、美人ばっかりだなんだ。そうそう、俺がひと月まえに町中で声をかけた子もアーレンの血が混ざってて……」
「アッシュ……!」
いらだった声が、ナンパ話を披露しようとしたアッシュの演説に割って入った。
「あまり余計なことをしゃべるな。相手は服役囚だぞ」
「はいはい。ごめんね、フェイ」
アッシュは多少、申し訳なさそうに一瞬、眉毛をハの字にする。
……フェイはいま、なんて言った……?
俺のことを「服役囚」って言ったのか……?
そう考えたら、拘束衣を着せられているのも納得だ。でも、なんで俺が服役囚? 二人とも俺のことを、だれかと取り違えているんじゃないのか。
「あのっ……。お、俺はどこに連れて行かれるんですか……? それに服役って、俺、なにも悪いことをした覚えがないんですけど……」
「……それはね」
アッシュが口を開きかけて、表情に緊張を走らせた。顔全体がきゅっと引き締まる。
「フェイ、尾けられてる」
アッシュが告げるまえにフェイもわかっていたようで、短くうなずいた。
「……やっぱり来たか」
フェイはすばやくルームミラーを見上げて、それから右側のサイドミラーで背後の様子を確認している。
アッシュは元軍人。そう自称したのにも納得する。フェイに叱られても絶えずにこにこふわふわの笑みを浮かべていたのに。左右を見まわして警戒を強めるいま、はるか遠くの敵をライフルで狙うスナイパーみたいに鋭い目つきをしている。
俺もルームミラーを見上げる。黒いトラックの影が一瞬見えて、そしてすぐに消えた。トラックはあっというまにスピードを上げて、俺たちの走る隣を併走してくる。トラックはぎりぎりと距離を詰め、そして……。
なんと、捨て身でこちらに体当たりをしてきた。
「うわっ……!」
巨大なトラック同士が衝突する。がつん、と車体が大きく揺れる。俺は思わず、叫び声を上げた。
隣の車線を併走する車両はまた何度も体当たりを試みてくる。ぶつかられるたびに大きく車体が揺れて、いまにもスピンしてしまいそうだ。このまま高速道路のガードレールをぶち破り、ビルの谷間にはじき出されてしまうんじゃないかっていう恐怖を味わった。時速百キロを超える速さで走りながら、体当たりを繰り返すなんて、正気の沙汰じゃない!
「こわいよね? 舌を噛まないように、ちゃんと口を閉じていて!」
俺の内心の恐怖を見透かしたように、険しい表情をややゆるめたアッシュがこちらを気遣って注意をうながしてくれる。俺は怖くて声も出ない。こくこくと首を縦に振ってうなずくのが精一杯だった。
「フェイ、逃げ切れる?」
「無論」
ぐんっと体に重力がかかり、シートに押しつけられる感じがした。フェイがアクセルを踏み込んだんだ。黒いトラックをみるみる引き離していく。
メーターはいくつを指しているんだろう? 法定速度なんて、とっくに振り切れている気がした。猛スピードで走っているのにフェイは見事なハンドルさばきで、まえを走る車をすいすい追い抜いていく。
「このまま経済特区まで飛び込むぞ」
スピードを維持し続けたまま、フェイが言う。高速道路はどこまでも平坦な道がまっすぐ続いていて、まだ料金所も見えない。でも、どこかに逃げられる場所があるみたいだ。
「……嘘だろ……!?」
チッと舌打ちをして、フェイがあせった声を出す。フェイと同じく、俺も絶望した。後方のトラックが追いついてきたんだ。引き離したのもつかの間、あっというまに隣に並ばれる。
相手の車の運転席から、にゅっと細長い筒のようなものが飛び出したかと思うと、車にものすごい衝撃を感じた。ばあん、ばあん、と巨人の手のひらで車体をぶったたかれているみたいな衝撃が何度も繰り返される。
「衝撃弾まで持ってるのか……!」
助手席上部の手すりを握って体を支えながら、アッシュが苦しそうにうめく。
衝撃弾ってなんだろう。銃弾……だとしたら、ガソリンに引火したら大変なことになりそうだ。俺たちの乗ったトラックが炎の膜に包まれ、あちこちで車がクラッシュする大事故が起こるさまを想像して、俺はさーっと頭が冷えた。
このままじゃまずい。本当に殺されるかもしれない。
ばあん、ばあん、と車体に感じる大きな衝撃。
死の恐怖。
車体が不安定に揺れるなかでも、フェイは必死にアクセルを踏み込んでハンドルをさばき、逃げ込むさきを目指している。
どうか、無事にたどり着いて。俺はぎゅっと目をつぶって、必死に祈った。
そのまま目をつぶっていると、急に周囲の音が消えた。タイヤがアスファルトにこすれる音も、衝撃弾をぶつけられる破裂音もしない。
車体の振動も感じなくなったのを不思議に思って目を開けると、目のまえは真っ白い光に包まれていた。
えっ、と思った次の瞬間。
俺たちの乗ったトラックは突然、空中に放り出された。
フリーフォールで落下するみたいに、体のなかで内蔵がひゅんと浮かび上がる気持ち悪さを一瞬だけ感じたあとで、トラックはどすんと地面に着地した。放り出されたときの惰性で地面を滑るのを、フェイが驚異の反射神経ですばやくハンドルを切って制止する。
きいいい、とタイヤが地面をこすってすさまじい悲鳴を上げる。フェイはドリフトを効かせながらブレーキを踏み込み、制御を失いかけた車をなんとか停止させた。
しーんと車内に、沈黙が満ちる。
俺は窓越しに、そとの景色をたしかめる。周囲は閑散としている。どこかの車道みたいだけれど、人一人どころか車の一台も通っていないのは幸いだった。道幅が狭い。さっきまで走っていた高速道路とは違う。遠くに見えていたビル群が目のまえにある。
衝撃弾を食らって高速のガードレールを突き破り、ついに空中にはじき飛ばされたんだろうか。それでたまたま、ここに着地した? 不思議に思って見上げても、あたりには高速道路の支柱もガードレールも見当たらない。それにビルの数階分に相当する高さから車ごと放り出されて、三人とも無傷で済むはずがない。
フェイとアッシュが俺を振り返る。二人ともおどろいて、目を大きく見開いていた。
「……シュニャ……」
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たしかにシュニャと言った。アーレンと同じく、それはまた俺の知らない言葉だった。
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