新 或る実験の記録

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ファイン製薬潜入編

滑落

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「二人目に接触し、話をするも、また協力を受けられないどころか、その人は失踪。

三人目の被験者に接触を試みたところで、週刊誌に嗅ぎつかれて、明るみに出たというわけですか?」

吉岡先生がそう質問すると、堀口さんは


「その通りです」


と、力無く答えた。


「で、ワタシやこの菅原さんについても、死に至らしめられる可能性があるとお考えですか?」


「いえ、それはわかりません。

吉岡さんは既に女性に性転換してから十年が経過していますし、一概に一纏めには出来ないと思います。

一口に性転換薬と言っても、吉岡さんと菅原さんに使われた薬は全くの別物ですし、例の五人に使われたものもまた別のものです。」



「わかりました。
ワタシ達は、その謎に迫るためにここへ来たんです。
自由にこの体を使って下さい。」


吉岡先生は落ち着いた口調で言った。


「ありがとうございます。

私もこれまでに知り得た情報については、あなた方に全てお話させていただきます。」


堀口さんは、ファイン製薬において、数少ない良心を持つ人物だった。


それがわかっただけでも収穫か。


と、なると、五人の被験者のうち亡くなったり、失踪したりした人達は、事件に巻き込まれたわけではなく、自らの意思でそのような行動に至った…?


「薬の特性や種類が違うのなら、それぞれの被験者を調べる方がいいんじゃないですか?

五人のうちの一人をここに呼んで、協力を得ましょう。」


「吉岡さん
そうはおっしゃいますが、私は接触した二名から協力を得られず、不幸な結果をもたらしたんです。

他の人達も同様に…」



「いえ、ワタシ達も会ったことのある鎌田さんなら大丈夫だと思います。

話をしてみて、芯がしっかりしてて、心を強くもたれているとお見受けしたので。
堀口さんも一度会ってますよね?」


「はい。
ちゃんと話は出来ていませんが。」


「鎌田さんの方はワタシ達にお任せ下さい。
必ず連れてきますので。

それよりも、先ずはこの副作用について調べるところから始めましょう。」


「わかりました。

では、早速ですが付いてきていただけますか」


ワタシ達は堀口さんに言われ、部屋を出て、右に進んだところの突き当たりにある部屋に入った。
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