新 或る実験の記録

フロイライン

文字の大きさ
上 下
114 / 139
ファイン製薬潜入編

pandemic

しおりを挟む
「最初のうちは同じタイミングで死んでいったマウスでしたが、番いで入れていたマウスが早く死に始めたのです。」


「番い?

どういう事ですか」


吉岡先生は当然の如く、堀口さんに質問した。


「はい。
我々は様々な条件下に置いたマウスを観察していましたが、死ぬタイミングはだいたい皆同じでした。

しかし、オスからメスに性転換させたマウスを、オスのマウスと一緒にゲージに入れていたグループについては、全てにおいて、単独でゲージにいるマウスよりもかなり早く死んでしまったのです。」


「それって、何を意味しているのですか?」


「それらのマウスは全て、オスのマウスと交尾を行ったんです。

あくまでも私が立てた仮説ですが、死期が早まったのは、交尾にあるのではないかということです。」


「交尾?」


「ええ。
先ほども申しましたように、この薬による性転換は、脳の視床下部に刺激を与えます。

つまり、脳のコントロールが重要なのですが、交尾や、人間でいうところのセックスもまた、性欲、性衝動、性感など、全ては脳の働きによるものです。

私は死が早まった原因は、脳に因果関係があるのではないかと推測し、上司に報告しました。

私のレポートはすぐに厚労省、国にもたらされたのですが、国から出てきたのは、この件には一切関与するな
でした。」


「えっ」


「つまり、黙殺せよということです。

一応四十年の猶予があるという事まではわかっているのです。
その間に改善策を見つけろというものです。

私が報告したケースについてはあくまでも偶然に過ぎない。
そう結論づけられたのです。」


「そんな…酷い…」


「勿論、私自身も納得出来ず、自分なりに原因の特定と打開策を講じようとしましたが、謎が多すぎて、遅々として進みませんでした。


やはり、被験者達の協力がいると考えた私は、例の五人に接触する事を独断で決めました。
それと、この薬による副作用の忠告もしたかったので。」


「なるほど」


「私は、まず一人目の被験者である佐久間美香さんにお会いして、正直に薬の副作用によりマウスが死んだ事、交尾をしたマウスがさらに早くに死んだ事を告げました。
その上で、我々の研究に協力していただくようにお願いしました。

ですが、佐久間さんは私の話を聞いて取り乱されました。

女性に性転換されてから、男性のパートナーも出来、何度もセックスをされていたようなので。

いつ死んでしまうかわからない恐怖に駆られ、彼女は、協力をするどころか、私からの連絡に一切反応しなくなりました。

仕方なく、二人目の被験者への接触を試みたのですが…」


その結末は、ワタシ達も知っている。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

OLサラリーマン

廣瀬純一
ファンタジー
女性社員と体が入れ替わるサラリーマンの話

リアルフェイスマスク

廣瀬純一
ファンタジー
リアルなフェイスマスクで女性に変身する男の話

ビキニに恋した男

廣瀬純一
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

入れ替わった恋人

廣瀬純一
ファンタジー
大学生の恋人同士の入れ替わりの話

健太と美咲

廣瀬純一
ファンタジー
小学生の健太と美咲の体が入れ替わる話

奇妙な日常

廣瀬純一
大衆娯楽
新婚夫婦の体が入れ替わる話

入れ替わりノート

廣瀬純一
ファンタジー
誰かと入れ替われるノートの話

変身シートマスク

廣瀬純一
ファンタジー
変身するシートマスクで女性に変身する男の話

処理中です...