新 或る実験の記録

フロイライン

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ファイン製薬潜入編

異変

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「マウスって寿命は二年程度なんですよ。

だから、生まれて一年経つと、人間で言えば結構な年齢になっているんです。」


「そうなんですか」


「ええ。
アメリカの研究チームなんかがマウスの寿命を延ばす実験を行いましたが、それでも7パーセントくらいです、寿命の延びは。」


「へえ」


「すいません、話が逸れましたね。

僕は、ある日
ここに来ると、マウスが死んでいるのを発見しました。

性転換薬の実験に使われたマウスでした。
改良型Ⅰです。

しかも、同じ日に性転換薬を投与したマウスは全部死んでいたのです。」



「それって…」


「その後も、マウスは死んでいきました。
実験を行なった順に。」


やっぱりそうか…


「様々な事情があり、十分な実験と検証を行わずに、例のプロジェクトが始まってしまいましたので、私もその辺の事は懸念していました。

孕妊性がないというのも致命的ではありましたが、まさか命にかかわるような失態を引き起こしてしまうとは…

マウスが死に始めたのは、最初の五名が性転換をし、孕妊性がないという事が判明し、世に知れ渡った頃でした。

タイミングとしては最悪でした。
我々はすぐに厚労省の担当者に連絡をし、すぐに対策会議が開かれました。」


「えっ、国は知っていたんですか?」


「はい。


厚労省の担当者は、我々が差し出した実験データを見つめながら、頭を抱え…


そして、次のように言いました

“今、この実験を中止し、停滞させる事は出来ない。
マウスに起きた事については、一切を隠蔽する”と。」 


「そんな…」


「このプロジェクトは、例の拉致事件と人口削減計画が明るみに出た事で停滞し、諸外国に追いつかれる可能性が高まっていました。
それ故に、国は隠蔽する事を決めたのです。

あくまでも噂ですが、これを決定したのは財務省だそうです。」


「財務省?」


「結局、このようなプロジェクトに予算を付けているのは財務省です。実質はね。

奴らは国民の生命を守る事なんて考えた事もない。」


「それで、あなたはどうされたんですか。」


「私も研究者の端くれです。
この不可解なマウスの死を徹底的に調べました。

マウスが死んだ日数を人間に置き換えてみると、約四十年ありました。

つまり、二十歳で性転換した人がいたとして、その人が亡くなってしまうのは、六十歳頃と想定されました。

それまでに別の病気になることもあれば、不慮の事故で亡くなってしまうこともある。

国は時間的余裕があるなら誤魔化せると踏んだんでしょう。


しかし、私は調べていくうちにある事に気付きました。」


堀口さんは、ここでコーヒーを一口飲んだ。
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