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深層
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「吉岡さん、菅原さん
こんにちは」
先生とワタシが会議室に入ると、既に公安の三浦さんが座って待っていた。
「すいません。
お待たせしてしまって」
「いえ、今着いたところですよ。」
先生と共に三浦さんの向かい側に座ると、すぐに本題に入った。
「早速ですが、事件に進展がありましたので、ご報告に来ました。
既に政府と警察、関係機関には報告済みです。」
「あの、進展って…
どういう?」
「あなた方を拉致した者たちの正体とその背後関係がわかりました。」
「えっ
一体どこの組織が?」
「いや、調べれば調べるほど、今回の事件は、闇が深くてね。
一筋縄ではいかない…
そういう状況です。」
「そうですか…」
「まず、実行犯についてですが、やったのは暴力団ではなく、いわゆる半グレの連中で、紅蓮連合という名前の組織に所属しています。
そして、そいつらに指示を出していたのは、ファイン製薬とライバル関係にあるレーザイ薬品です。」
「レーザイ薬品ですか」
「ええ。
ですが、ここからが少し話が複雑になります。
国内でこの性転換事業を独占するファイン製薬を潰そうと、ライバル社のレーザイが行動に出たという話なら、なんて事はないのですが、実はレーザイ自体も黒幕ではなく、その先が存在するって事です。」
「その先…」
吉岡先生の表情がみるみる曇っていった。
「レーザイ薬品は、ドイツのカイザー製薬と資本提携しています。
いや、提携とは名ばかりで、実質はカイザー製薬の子会社の役割を果たしています。
しかし、カイザー製薬も昨年、アメリカの製薬会社ベルーザに買収されてしまいました。」
「つまり、背後にいるのは…」
「多分、米国でしょう。
まだ確たる証拠は掴んでいませんが。」
「何故、アメリカが…」
「吉岡さん、知ってますか?
アメリカの現政権について。」
「いえ…」
「彼らの最大の支持団体はいわゆるカトリック系の組織です。
カトリックはいわゆる性同一性障害の人に対する性適合手術を認めていない。
今日本で行われている、人工的に男性を女性に変えてしまうこの実験について、正式に反対表明をしています。
つまり、アメリカは、宗教上の理由からこの研究が出来ず、非キリスト教、非イスラム教の国に比べて、取り残された状態にあるの」です。」
「…」
「ただし、技術だけは手にしておきたい彼等は、手っ取り早い方法として、盗み取るといった荒業に出たという事です。」
三浦さんは淡々と話し続けた。
こんにちは」
先生とワタシが会議室に入ると、既に公安の三浦さんが座って待っていた。
「すいません。
お待たせしてしまって」
「いえ、今着いたところですよ。」
先生と共に三浦さんの向かい側に座ると、すぐに本題に入った。
「早速ですが、事件に進展がありましたので、ご報告に来ました。
既に政府と警察、関係機関には報告済みです。」
「あの、進展って…
どういう?」
「あなた方を拉致した者たちの正体とその背後関係がわかりました。」
「えっ
一体どこの組織が?」
「いや、調べれば調べるほど、今回の事件は、闇が深くてね。
一筋縄ではいかない…
そういう状況です。」
「そうですか…」
「まず、実行犯についてですが、やったのは暴力団ではなく、いわゆる半グレの連中で、紅蓮連合という名前の組織に所属しています。
そして、そいつらに指示を出していたのは、ファイン製薬とライバル関係にあるレーザイ薬品です。」
「レーザイ薬品ですか」
「ええ。
ですが、ここからが少し話が複雑になります。
国内でこの性転換事業を独占するファイン製薬を潰そうと、ライバル社のレーザイが行動に出たという話なら、なんて事はないのですが、実はレーザイ自体も黒幕ではなく、その先が存在するって事です。」
「その先…」
吉岡先生の表情がみるみる曇っていった。
「レーザイ薬品は、ドイツのカイザー製薬と資本提携しています。
いや、提携とは名ばかりで、実質はカイザー製薬の子会社の役割を果たしています。
しかし、カイザー製薬も昨年、アメリカの製薬会社ベルーザに買収されてしまいました。」
「つまり、背後にいるのは…」
「多分、米国でしょう。
まだ確たる証拠は掴んでいませんが。」
「何故、アメリカが…」
「吉岡さん、知ってますか?
アメリカの現政権について。」
「いえ…」
「彼らの最大の支持団体はいわゆるカトリック系の組織です。
カトリックはいわゆる性同一性障害の人に対する性適合手術を認めていない。
今日本で行われている、人工的に男性を女性に変えてしまうこの実験について、正式に反対表明をしています。
つまり、アメリカは、宗教上の理由からこの研究が出来ず、非キリスト教、非イスラム教の国に比べて、取り残された状態にあるの」です。」
「…」
「ただし、技術だけは手にしておきたい彼等は、手っ取り早い方法として、盗み取るといった荒業に出たという事です。」
三浦さんは淡々と話し続けた。
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