新 或る実験の記録

フロイライン

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ついに、九名が卒業する日が来てしまった。

事件が起きてしまい、今日を迎えるまで、ずっと皆んなの表情は暗かった。
それでも、契約を盾にセンター側は一切の妥協を許さず、例のシェアハウスへ予定通り移るよう命令した。

午後には十五名の男性がここに到着するようで、二週間の共同生活が始まる。
その二週間の間に相手を見つけなければならないが、果たしてこんなもので上手く見つけられるんだろうか
甚だ疑問である。

センター側からの説明では、こっちの九名に細かく質問し、それぞれの理想の男性像というものを導き出したそうだ。
それを元に結婚願望のある男性を用意したので、カップリングが早々に成立するのは間違いないと自信満々だったが、恋愛とか結婚てそんな簡単なものではないだろうし…ほぼ強制的に結婚相手を決めなきゃならないわけだから、九名にとってもすごいプレッシャーになるに違いない。



「乃亜ちゃん、色々お世話になったわね。
あなたと同部屋で本当によかったわ。」

絵里は、部屋で出発の準備をしながらワタシにそう言った。

「こちらこそ。
ワタシも絵里さんと一緒だったから、楽しく暮らすことが出来ました。
ありがとうございます。」


「ここ出て、相手を見つけて結婚して、出産までしたら、一応ワタシ達は自由の身になれるじゃない?契約上は。
そしたら、子育てしながらフツーの生活が出来るようになると思うし、心身共に余裕が出来てくると思うの。
その段階が来たら、連絡取り合って会おうよ。

こうして一緒に生活したのも何かの縁だし、ワタシは乃亜ちゃんの事を一生の仲間っていうか、同士だと思っているの。」


「はい。
ワタシも同じように思っています。

絵里さんとは一生のお友達でいたいなあって。

絶対に連絡しますし、連絡下さいね。」


「うん。ありがとう。


じゃあ、そろそろ行くね。」


絵里はボストンバックを肩にかけて立ち上がった。

「荷物はそれだけですか?」


「うん。
ほとんどの私物は昨日のうちに向こうに運び込んでくれてるの。」


絵里はそう言って微笑んだ。

ワタシも絵里に付いて一階に降りていくと、既に他の八名がミーティングルームに集まっていた。


「乃亜ちゃん」

皆、ワタシを見つけると、近づいてきた。

そして、百花が

「乃亜ちゃん
あなたとはここで一旦お別れになるね。

寂しくなっちゃうけど、元気でね。
また必ず再会しよう」

と言って、ハグしてきた。

それを皮切りに、他の人全員がワタシとハグして別れを惜しんだ。

泣いちゃった…
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