新 或る実験の記録

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申し合わせ

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今日は厚労省とファイン製薬の人は来ておらず、ワタシ達を待っていたのは、警視庁の木村さんと公安の三浦さんだけだった。

センター側からも吉岡先生とワタシだけが出席で、昨日とは打って変わって小ぢんまりとした場となった。


「連日、申し訳ないですね。」


木村さんはこちらの顔を見るなり、そう声をかけてきた。


「いえ、こちらこそ…
わざわざすみません。」

吉岡先生は、そう言って頭を下げ、ワタシと二人で彼らの向かい側に座った。



「来週、ここにいる菅原さんを除く九名の方が卒業されるということで、警護についての最終的な打ち合わせに来させていただきました。

吉岡さん、申し訳ないが、そのスケジュールをもう一度説明してくれませんか。」


「いえ、今回の事件を受けて、昨夜、国とセンターで話をし、若干の軌道修正がありましたので…その辺りのお話をしなければならないと思っていたところです。」


「なるほど。
じゃあ、吉岡さん、ご説明をいただけますか」

三浦さんが吉岡先生に話を始めるように促した。


「はい。

菅原さんを除く九名については、予定通り来週の水曜日にここを卒業という形で退所していただきます。

そして、敷地内にある、いわゆるシェアハウスに移り住み、そこでこちらが選んだ男性と共同生活をしてもらいます。」


「つまり、そこで相手を決めると?」


「そうです。
ただ、これも昨夜決まった事ですが、今回の事件を受けて、この共同生活の期間と規模を大幅に縮小する事になりました。

男性側のメンバーは当初計画よりもかなり少なくし、十五名となりました。
その十五名も皆首都圏在住で、それぞれ半径50kmの中に住んでいる人達ばかりです。
それ以外の地方在住者は今回は除外させていただきました。

そして、共同生活の期間も二週間と、これも計画より短くなっています。」


「なるほど。
しかし、期間を短くしたところで、犯人側が手を緩めてくれるわけではありませんよ。

勿論、我々も外に出たら全力でお守りする所存ですし、九名が近くに住んでくれるならそれに越したことはないです。

でも、他にどういう意図があるんですか?」


「それについては私の方からご説明しましょう。」


木村さんの質問に、三浦さんが割って入ってそう言った。


「外に出る期間を早めたのは、犯人側に時間的余裕を与えない為です。

今回はまんまと拉致され、情報を盗まれてしまいましたが、次のアクションを起こすまで、つまり、こちらを強請る、または世間にこの薬の欠陥を公表するにしても、すぐにというわけにはいかんでしょう。
昨日の奴らはあくまでも実行犯に過ぎず、今頃依頼主に報告でも行なっているところでしょうからね。

犯人が次の動きをするまでに捕まえなきゃならないので、こちらとしても相当なプレッシャーがありますが、なんとかせねばならんでしょう。」


なるほど…そういうことか

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