新 或る実験の記録

フロイライン

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照射

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「性転換して孕妊性を持たせるには、視床下部を薬によって人工的に変化させてしまわなければならない。
我々はそう結論付けたのです。

これが孕妊性をもたせる唯一の方法。
それも性自認が男性の者だけしか適わない。」


「なるほど。
そこで薬が改良されたと?」


「そうです。

我々は薬を改良しました。
理論上は、普通の適齢期にある女性よりも大幅に妊娠しやすく、流産する確率も低くなる。
改良は上手くいきました。

ただし、問題がありました。

それは、妊娠はしやすくなる代わりに性感が異常に増すという副作用を伴っていたのです。」


「それについては、今回の事件などを見ていればわかる。

だが、そんな欠陥品がどうやって国から認可をもらい、堂々と治験を行えているんだ?」

三浦さんは、当然の疑問をぶつけた。


「それについては、私から説明します。」

北見さんの横で話を黙って聞いていた厚労省の芹沢さんが、ここで初めて口を開いた。


「ファイン製薬からは当然報告が上がってきました。
この薬には欠陥があると。

しかし、国運を賭けたこのプロジェクトをこれ以上延期する事は出来ない

政府はそう考えたのです。」


「と、言うと、アンタら役人じゃなく、岸岡首相がコーサインを出したということか?」


「そうです。
ご存知の通り、民国党と岸岡政権への支持率はジリ貧状態です。

そんな中、人口問題の改善は、彼らにとって数少ないプラス要素だったのです。」


「だからと言って、欠陥品でプロジェクトを推し進めるなんて、無茶苦茶じゃないか。」


「いえ、推し進めてはいません。
今のプロジェクトはただの時間稼ぎなんです。」

芹沢さんは、信じられないような言葉を口にした。


「時間稼ぎ?
どういうことなんだ…」


「現行の薬で性転換を行ったのは、このセンターにいる十名

それと、最近性転換を行った女性から男性へと性移行した十名の計二十名だけです。

御本人を目の前にして大変申し上げにくいのですが、この二十名が実験を行う間に、秘密裏に開発を急いでいる再改良した薬を、次の運用から使用する

これが政府の考えなんです。」


「ちょっと待ってくれ
じゃあ、ここにいる菅原さんを始めとする人達は、単なる時間稼ぎのために性転換させられたのか?」


「そうです。
その分、多額の補助金もお支払いしましたし、誓約書にもサインしてもらっています。」


「酷い話じゃないか。
と、なると、今日襲った連中というのは、この薬の欠陥を知った勢力がその内情を暴露する為にやったということか」


「多分そうだと思います。」


芹沢さんは淡々と語った。
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