新 或る実験の記録

フロイライン

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bitter trap

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ワタシ達十名は、吉岡先生が運転するマイクロバスに乗り込み、見学することを認めてくれた民間経営の産婦人科に向かっていた。


「なんだかんだ言ってもさあ、この十人が揃ってどこかに行ったり、何かするっていうのも、これが最後なんだね」


百花が少し感傷的な言い方で呟いた。


「ねえ、みんな

離れ離れになってもお友達でいようね。

ワタシらは互いの気持ちのわかる、同士なんだから」


絵里もまた、感極まったのか、けっこう熱い事を言った。

でも、ワタシもその意見に反対するつもりはないし、他のみんなもそうだった。

全員が頷き、結束を固めた。


吉岡先生は、その様子を運転しながら、たまに、チラッとこちらを見て微笑んだ。



バスはセンターのある場所から山道を下り、麓の町を目指していた。


その時


「ガシャンッ!」という音がしたかと思うと、急ブレーキがかかった。

ワタシ達は前のめりになり、頭をぶつけた人もいた。


「何があったの!?」

みんながパニックになり、視線を前に向けると、吉岡先生が顔面蒼白になり、ハンドルを握ったまま固まっていた。


「前に強引に車が割り込んできて、急ブレーキをかけたのよ。

先生も慌ててブレーキを踏んだけど、そりゃ間に合うはずがないわ。」

絵里は一部始終を見ていたようで、事の経緯をワタシ達に冷静に話した。

窓から前方を見てみると、テールランプが割れた白のワゴン車が停まっていた。

ワゴン車とこっちのバスはハザードランプを点けて路肩に寄せて停車させた上で、吉岡先生が相手の様子を確認するために外に出た。

ワタシ達にはここで待機するように指示をした上で。


吉岡先生の前職は警察官だし、このような状況にも慣れているはずだ。

ワタシは少しだけ安心した気持ちで前の様子を窺っていた。

ここら辺は人が全くいない山道の途中で、車もさっきから一台も通らない。

えらいところで事故を起こしたもんだ…


吉岡先生が相手の車の運転席のところまで行き、話しかけている様子がこちらから確認されたが…なんとなく…

なんとなくだけど、何か様子が変だった。


次の瞬間、ワタシは信じられない光景を目にした。


吉岡先生が何故か両手を上げたのだ。

なんで?

そんなポーズを…


そして、ワゴン車の後部座席から三人の男が出てきたかと思うと、一人は吉岡先生に銃のようなものを突きつけ、二人はこちらのバスの方に歩いてきたのだ。

そして、中に入ってくると、一人がワタシ達に銃?を突きつけ、もう一人は運転席に座った。

そして、バスを発進させたのだった。
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