新 或る実験の記録

フロイライン

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許嫁

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「乃亜…

やっとここまで来たわ」

涼音はワタシと二人きりになると、少し笑みを浮かべて言った。


「でも、涼音…

ホントにいいの?

男になんかなりたくないでしょ…」


「うん。なりたくないわ…

でも、そんな事がどうでもよくなるくらい、あなたの事が好きなの。

だから、この選択に少しも後悔してないわ。」


「涼音…」


「明日には、男になり、あなたと反対の性になれるの。
これで私たちには何の障害もなくなるわ。」


「でも、こんなに美しい涼音が男になってしまうなんて…
もったいないというか、見たくないっていうか…

後悔するかもしれないよ…」


「後悔?
そんなのするわけないわ。

乃亜は女の子になって、後悔してる?」


「えっ

ううん…

女性になった事には後悔はないわ。
勿論、涼音との事とか悲しい事は沢山あったけど、それ以外は…」


「多分、私もそうなる。

完全な性転換をする今回の実験は、脳まで変えてしまうって聞いてるわ。
だから、今の性を乃亜が何の違和感もなく受け入れてるのと同じで、私もきっとすんなり受け入れる事が出来るはず。

だから、不安な気持ちは微塵もないわ。」


あまりにも涼音の言葉は力強く、性転換前から既にワタシより男っぽいって思えた。


「ねえ、乃亜」


「えっ」


「もし、私が性転換せずにいたら、あなたは誰ともわからない男と結婚させられて、子供を何人も産まされる運命だったわけじゃない?

そんなの私には耐えられない

だから、私の選択は間違っていないと思ってる。」


「涼音…」


「出荷はもうすぐなんでしょ?」


「うん。
多分…

三ヶ月後には男性とのお見合いが始まると思う。」


「私と乃亜の事が認められたから、私が性転換して、男性としての基礎訓練を行う間は、あなたはここで留まる事が出来る。

そして、私は他のメンバーとは離れ、先にあなたと実験を行うために、またここに戻ってくるわ。
これが現状では一番良い選択だと思うわ。」


「涼音、ありがとう…」


「だから言ったでしょ?

私がしたくてしてる事だからって。」


涼音はどこまでも美しく、凛としていて、何から何までパーフェクトな女性だった。
少なくともワタシにはそう見えた。

でも、男の時にあった恋愛感情は全く無いし、湧いてくる事もなかった。
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