新 或る実験の記録

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副産物

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「乃亜ちゃん

昨日ワタシの子に会ったわよね」


「はい。
みいちゃんですよね?」


「うん。
名前は未来っていうの」


「みらい…

良い名前ですね」


「あの子を見てどこかおかしなところはなかった?」


「えっ、おかしなところ?

いえ、そんなの全然なかったですよ。

吉岡先生に似て美人の可愛いお子さんでした。」


「みいはね、男の子なの。」


「えっ、男の子…

でも、どこからどう見ても女の子だったし、服装だって…」


「そうね。

あの子、物心ついたときからあんな風で、女の子の服装や遊びを好んでするようになったのよ。」


「じゃあ…」


「いわゆる性同一性障害だと思う。」


「そうなんですね…」


「でも、ワタシって生まれついての女じゃないでしょ。
男が性転換して女になり、そして妊娠して出産した…

みいがそういう風に生まれてきたのはワタシが原因じゃないかって…」


「それって…」


「調べてみたけど、ワタシの性転換との因果関係はわからなかったわ。」


「だったら、たまたまそうなってしまったんじゃ…」


「うん。
そうかもしれないし、そうでないかもしれない。

ワタシはプロトタイプの薬を使ったわけだし、それが原因かもしれない。

こんな事を乃亜ちゃんにお願いする筋合いはないんだけど、真相がどうなのかを証明してほしいの。」


「それは勿論

ワタシも国と契約した身ですから、ちゃんと結婚、出産をして女として一生生きていくつもりです。
ワタシがクスリのせいじゃないって事を証明してみせます。」


「ありがとう…乃亜ちゃん」


「でも、先生
みいちゃんは将来的にどうするんですか

ワタシ達みたいに性転換薬を使って女性に?」


「うーん…
本人がある程度の年齢になってから決めさせるわ。

でも、今の性転換薬はみいのような性同一性障害の人が使って女性になっても孕妊性がないって言われてるし…
その部分も改善されていけば…」


「そうですよね。
もし、孕妊性の改善が出来たなら、ワタシ達みたいなフツーの男性が性転換するんじゃなくて、本当に女性になりたくて苦しんでいる人達が性転換するのが一番ですもんね。」


「そうね。
乱暴な言い方だけど、男性の数がいくら増えても出生率は上がらないけど、女性の数が多ければ、その数字を上げていくことは理論的には可能なんだから。

極論を言うと、男性一人で同時に何人もの女性を同時に妊娠させることも出来るしね。」


「そうですね。
じゃないと、出生率なんて絶対に改善されないですよ。」


「出生率はどこの国でも問題になってるからね。
謂わば先進国病なの。

軒並み苦しんでる」


吉岡先生は、少し難しい顔をしてワタシに言った。
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