或る実験の記録

フロイライン

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終局

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「三田村さん
あなた方に都合の悪い事は全てもみ消すつもりだとおっしゃっていましたが、果たして出来ますかねえ?」


「なんだと…」


「国内でもトップクラスの登録者数を誇るX largeさんが生配信を行ってるんです。

今現在、100万人の人達がこのやり取りを見つめています。

これら全ての目撃者を消す事が出来るのかなあって、素朴に思っています。」


伊藤は余裕の笑みを浮かべながら皆に向かって言った。


「これは犯罪だ!

お前達がやった事は重大なる犯罪行為だ!
逮捕されるのは我々ではない、お前達だ!」


合田は気を取り直し、敢えて強い言葉をぶつけてきた。


「そうですねえ。

今日は来られていないようですが、村松警察庁長官もこの会のメンバーですからね。
私達が冤罪で逮捕されるかもしれませんよね。」

それでも伊藤はまだ余裕の表情で話を続けた。


「まあ、我々はあなた方をどこかに突き出したり、糾弾したりするつもりはありませんよ。
今日はこのまま帰るつもりです。

Xさん、撮れ高は?」


「もうバッチリすぎっす」

伊藤の質問に、X largeさんは右手の親指を突き出して笑った。


「ナオちゃん、帰ろうか」

高山は私の肩に手を置き、優しげな口調で言った。


「このまま帰っても大丈夫なんでしょうか」

私は驚いて高山に聞いてしまった。


「伊藤先生が言ったように、断を下すのは我々でも警察でもないよ。

今この場面を見ている国民が決めるんだよ。

さあ、帰ろう。

みなさん、お騒がせしました。

それでは引き続き宴を楽しんで下さい。」

高山は軽く会釈すると、私の手を引いて立ち上がらせ、堂々とその場を去っていった。

伊藤とX largeさんも後に続き、私も慌てて付いていった。

会のメンバーは誰も動かず、去っていく私たちに、ただ視線を送るだけだった。



外に出ると、騒ぎを知ったマスコミ各社が待ち構えており、凄まじい数のフラッシュが焚かれた。


「うわっ、こりゃ予想以上ですな」

伊藤は顔を顰めながら言った。

「そこに車を停めてある。
マスコミを振り切って乗り込むとしよう」

高山がそう言うと、X largeさんが振り返って言った。

「あの、この状況、すごくおいしいんで
俺が対応してもいいっすか?」


「ああ、構わないよ。
好きに話してくれたまえ。

我々はその間に失礼させてもらうから。」

X largeさんは大勢のマスコミの方に歩いていき、すぐに周りを取り囲まれた。

私達は浴びせられる質問に一切答えず、足早に車に乗り込んだのだった。
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