95 / 102
三枚の御札
しおりを挟む
私は全員に酒を注いで回った。
それも何度も繰り返し…
皆揃って酒がいける口らしく、ワタシの酌を喜んで受けてくれた。
従順で素直な私は皆に受け入れられ、しばらくすると私への警戒心も無くなってきたのか、色んな話が出るようになった。
これ、聞いちゃってもいいのかなあって事も含めて。
いや、皆が饒舌になったのは酒のせいではなかったが…
「総理、出生率がまた下がったっていう報道を見ましたが、実際のところどうなんですか。」
天創会の大谷が言うと、銀行頭取の安達が
「とうとう1.3を切ったんでしたっけ?
深刻な数字ですね」
と、難しい顔をして言った。
「ああ、そうだね。
こういう時間のかかる施策は私が首相を務めてる間に効果が出たりするもんじゃないからねえ。
批判だけはすぐに集まってしまうが。」
朝山は戯けたような口調でそう答えた。
「憂国の連中もその焦りからだと思いますが、変な国に頼って墓穴を掘ってしまったんでしょう。」
合田の意見には
「伊藤も一丁前に志を高く、そして国のために
なんて言っていたが、結局はとんだピエロだったよ。
火の手がこちらに及ぶ前にマスコミにリークしてヤツを潰しておいたがね。」
朝山は吐き捨てるような口調で言った。
伊藤はやはり、国によって社会的に抹殺されたのか。
「性転換して出産という計画も、途方もない時間がかかり、将来的に上手くいくかどうかもハッキリしないシロモノなんじゃないかって疑いを持って見ていたんだ。」
「前政権が御執心でしたからね。」
合田が言うと、朝山は会話をやめ、私の方を見つめた。
「吉岡さん、つまらない話を長々としてすまんね。
退屈だろう?」
一応私に気を遣ってたんだ。ふーん…
「いえ、すごく興味深いお話で、一々感心しています。」
「そうか、それなら良かった。
吉岡さんのように若い女性には希望のある人生を送ってほしいからね。
それにはこの国が没落してしまっては何の意味もない。
日本を取り戻す
それが政治家であり、総理である私の使命だと思っているよ。」
「ご立派です。総理」
褒めておこう。
「この国の何が問題か、今も話していた人口問題が大きいというのはよくわかったと思う。
だが、何が問題かわかっていても一向に改善しない。
それくらい、この問題が難しい事を表している。」
「そうですね」
「まあ、出生率なんてそうそう簡単に改善される代物じゃないからね。
しかし、この問題を解決するのに、他の方法が無いわけでもないんだ。」
「他の?」
「そうだ。
もう一つの問題にメスを入れる。」
「もう一つの…」
「日本のもう一つの問題。
老人が多すぎるという問題だよ」
出た…ついに…
それも何度も繰り返し…
皆揃って酒がいける口らしく、ワタシの酌を喜んで受けてくれた。
従順で素直な私は皆に受け入れられ、しばらくすると私への警戒心も無くなってきたのか、色んな話が出るようになった。
これ、聞いちゃってもいいのかなあって事も含めて。
いや、皆が饒舌になったのは酒のせいではなかったが…
「総理、出生率がまた下がったっていう報道を見ましたが、実際のところどうなんですか。」
天創会の大谷が言うと、銀行頭取の安達が
「とうとう1.3を切ったんでしたっけ?
深刻な数字ですね」
と、難しい顔をして言った。
「ああ、そうだね。
こういう時間のかかる施策は私が首相を務めてる間に効果が出たりするもんじゃないからねえ。
批判だけはすぐに集まってしまうが。」
朝山は戯けたような口調でそう答えた。
「憂国の連中もその焦りからだと思いますが、変な国に頼って墓穴を掘ってしまったんでしょう。」
合田の意見には
「伊藤も一丁前に志を高く、そして国のために
なんて言っていたが、結局はとんだピエロだったよ。
火の手がこちらに及ぶ前にマスコミにリークしてヤツを潰しておいたがね。」
朝山は吐き捨てるような口調で言った。
伊藤はやはり、国によって社会的に抹殺されたのか。
「性転換して出産という計画も、途方もない時間がかかり、将来的に上手くいくかどうかもハッキリしないシロモノなんじゃないかって疑いを持って見ていたんだ。」
「前政権が御執心でしたからね。」
合田が言うと、朝山は会話をやめ、私の方を見つめた。
「吉岡さん、つまらない話を長々としてすまんね。
退屈だろう?」
一応私に気を遣ってたんだ。ふーん…
「いえ、すごく興味深いお話で、一々感心しています。」
「そうか、それなら良かった。
吉岡さんのように若い女性には希望のある人生を送ってほしいからね。
それにはこの国が没落してしまっては何の意味もない。
日本を取り戻す
それが政治家であり、総理である私の使命だと思っているよ。」
「ご立派です。総理」
褒めておこう。
「この国の何が問題か、今も話していた人口問題が大きいというのはよくわかったと思う。
だが、何が問題かわかっていても一向に改善しない。
それくらい、この問題が難しい事を表している。」
「そうですね」
「まあ、出生率なんてそうそう簡単に改善される代物じゃないからね。
しかし、この問題を解決するのに、他の方法が無いわけでもないんだ。」
「他の?」
「そうだ。
もう一つの問題にメスを入れる。」
「もう一つの…」
「日本のもう一つの問題。
老人が多すぎるという問題だよ」
出た…ついに…
1
お気に入りに追加
71
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/youth.png?id=ad9871afe441980cc37c)
NH大戦争
フロイライン
ファンタジー
呪詛を家業として代々暮らしてきた二階堂家。
その二十六代目にあたる高校二年生の零は、二階堂家始まって以来の落ちこぼれで、呪詛も出来なければ、代々身についているとされる霊能力すら皆無だった
そんな中、彼の周りで次々と事件が起きるのだが…
転生先はご近所さん?
フロイライン
ファンタジー
大学受験に失敗し、カノジョにフラれた俺は、ある事故に巻き込まれて死んでしまうが…
そんな俺に同情した神様が俺を転生させ、やり直すチャンスをくれた。
でも、並行世界で人々を救うつもりだった俺が転生した先は、近所に住む新婚の伊藤さんだった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる