或る実験の記録

フロイライン

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策謀

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蜷川病院で樋口から薬を譲り受けた高山は、研究室に閉じ籠り、熱心に成分分析を行っている。

そんな中、美優がついに性転換薬を入手したと連絡が入り、私は例のアジトを訪れている。


「よくぞ手に入れてくれた。
礼を言うよ、青木君」

伊藤は美優に手を合わせた。

「お礼なんてどれだけ言ってもらっても何の足しにもならないわ。
わかってるよね、伊藤センセイ」

「わかっている。
君に言われた通り、謝礼は金の延べ板で用意している。

さあ、高山君、早く注射の準備を」


伊藤は待ちきれないのか、左腕を捲り、二の腕を高山に差し出した。

あの筋肉質だった腕が見る影もなく皮下脂肪だらけのぷよぷよのおばさんならではの二の腕になってる。

私が感心して見ていると、高山がすぐに注射の準備をし、その柔らかな腕に注射針を刺した。

「伊藤センセイ、これで24時間後には晴れて男に戻れますよ。」

「ああ。ありがたい

もう、私は今回の事で吹っ切れたよ。

私に全ての罪を被せた連中に地獄を見せてやる!
死なば諸共だ。」


「期待してますよ、伊藤センセイ」


「ワタシとナオは何をすればいい?」


「青木君は性転換薬を入手してくれただけで十分だ。

これから一番動いてもらう事になるのは、吉岡奈緒さん、あなたです」


「えっ?」


「多分、ファイン製薬の中野に同行する会には所謂黒幕っていう人間もきっと顔を出すはず

君はその黒幕を白日の下に晒し、この事件の本当の闇を暴くんだ。」


「ちょっと待って!
どうやってやるのよ!
性転換のおかげで体力も落ちてるし、私一人で何が出来るって言うのよ!」

「よろしい。
作戦を説明しよう‥

ここに例の薬、RH-3がある。」

高山は瓶に入った透明の液体を私に見せた。

「樋口って人から譲られたやつね」


「私はこれを持ち帰った後、成分分析をしてみたんだが、実に面白い薬だということがわかってね。

ちょっと私なりにアレンジしてみたんだよ。」


「アレンジ?」


「高濃縮したんだ。元のものに比べて、極めて即効性が高く、毒性も強くなっている
これをキミに渡そう。使い方はナオちゃん次第だがね。」


「‥」


「並行して男に戻った伊藤先生も動いてくれるはずだから、キミは自分の思いのままに、心置きなくやってくれればいいよ。」


「わかったわ。やってみる」


チャンスは一度きり‥か
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