或る実験の記録

フロイライン

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等価交換

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「大きな病院ですね。」

「そうだね。個人が経営する病院でこれほどのものはなかなか無いよ。」

私と高山は、あの後すぐに蜷川病院に向かい、アポ無しで樋口事務長を訪ねた。
受付で用件を言い、樋口事務長へ連絡を取ってもらったが、繋がらないようだ。


「いくらなんでもアポ無しで会ってくれるとは思えないんだけど」

と、私が言うと、高山は表情を変えず

「いや、不在でないかぎりは、絶対に会えるよ。

ヤツは私の頼みに断るという選択肢を持っていないのでね。」


そうこう言っている間に、連絡がついたようで、受付の女性が

「すぐに参りますので、少しお待ちください。」

と、私達に伝えてきた。


うーん…


待つこと五分、エレベーターを降りて小走りでこちらに近づいてくる男を発見。

スーツ姿のこの男こそが、事務長の樋口であった。


「高山さん

どうしたんですか?こんなところまで急に…」

年齢は四十くらいだろうか… 
少し禿げあがった頭、濃い眉毛にギョロっとした目、中肉中背…


「樋口君。キミに良い話があってね。
居ても立っても居られずに来てしまったよ。」


「良い話が?

はぁ…

あの、こちらの方は?」

樋口は私を一瞥して高山に質問した。

「あ、すまない。紹介が遅れて…

こちらは吉岡奈緒さんだ。

例の性転換事件の被害者の」


「えっ、そうなんですか!

すごくお綺麗な方なので、モデルか何かをされているのかと思っていましたが、そうですか、あの事件の…」


「まあ、そんな事より、どこかで話を聞いてもらえるかね」


「あ、そうですね。
どうぞ、こちらへ」

私達は樋口に案内されて、応接室に通された。


着座すると、高山はすぐに本題に入った。

「樋口君、実に妙な噂を耳にしてね。」

「妙な噂?、ですか…」

「ああ。

キミがファイン製薬から金を貰って、と或る薬の治験のために入院患者の命を差し出したってね。」


「な、何ですか、ソレ
高山さん、おっしゃってる事がさっぱりわからないんですが」

明らかに動揺してる…
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