或る実験の記録

フロイライン

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「ほう、RH-3か

なかなか興味深い薬じゃないか」

私の話を腕組みしながら聞いていた高山は不適な笑みを浮かべて呟いた。


「しかし、そんな研究がされていたなんて、私も知らなかった。」

依然としてオバさん化したままの伊藤が首を傾げながら言うと

「ウチの会社ならあり得る話よね」

と、美優がしたり顔で答える


「青木君

性転換薬は勿論だが、そのRH-3もどうにかして入手してくれないだろうか」

高山が美優の肩に手を置いて言うと、美優は片眉を上げてため息をついた。


「高山センセイ

いくらワタシでも無理なものは無理
性転換薬だけでもまだ手に入れられてないのよ。」



「おいおい
今か今かとキミが手に入れるのを首を長くして待ってる私の身にもなってくれよ」

ウンザリとした表情で伊藤が美優に催促した。



「まあ、二兎を追うものは何とやらだ

先ずは性転換薬を手に入れてもらって、伊藤先生に我々のために頑張ってもらわないとな。」


みんな勝手な事ばかり言う…


「蜷川病院の事件についてはどう思いますか?」


私の質問に、伊藤はまた首を傾げた。

「いや、蜷川病院については、特段不審な点はない。
つまり、ファイン製薬や政治家と繋がりはなく、リスクを冒してわざわざそんな実験をする理由がない。

それに規模は大きいとはいえ個人経営の病院だ。医療ミスとかに関係なく、死者を出してしまえば、それこそ経営そのものが危なくなる。」


「そうですね。
私も蜷川病院だけは接点が見つけられず…

やはり、ファイン製薬と結びつけるにはかなり無理がありますね。」


しかし、高山が何かを思い出したのか、急に話に割り込んできた。

「蜷川病院!

そうだ!」


「どうしたの?高山センセイ」


「蜷川病院の事務長は私の古い友人でねえ」


「友人?

事務長と??」


「ああ。
樋口って男なんだが、コイツが無類のギャンブル好きときたもんだから、どうしようもなくてね

色んなところに金の無心をするもんだから、各方面に知れ渡ってしまったんだよ。」

「と、いうことは…

出入り業者のファイン製薬の営業マンにも声がけし…

金の都合をつけてもらう代わりに、患者の命を差し出した?」  

伊藤の推測に高山は頷いた
 

「十分に考えられる」

「高山君、私は依然としてこんな状況で動けない。
悪いが、蜷川病院の方を任せてもいいかね?」

「勿論ですよ。
ナオちゃんが中野社長と顔を出すっていう会合の前に、こちらが有利になるものを集めとくのが良いに決まってますからね。
伊藤先生は、軍資金を出してくれればそれでいいですよ。

ナオちゃん、私と蜷川病院に同行してくれるかな?」

「えっ、まあいいですけど」


事態が一気に変わっていくような気がした。

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