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兵糧
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休みの日、私は高山の潜伏する病院を訪れた。
中に入ると、伊藤は勿論、美優もいた。
「いらっしゃい。」
美優は私の方に視線を向けると、そう言ってニヤッと笑った。
高山も伊藤も美優も、憎き敵なのにこうして共同戦線を張る形になっているのが何とも変なこと気持ちになる。
「ほう。中野社長がナオちゃんを伴ってお仲間の集まりに行くと。
伊藤先生、何か心当たりがありますか?」
私の報告に対し、高山が伊藤に聞くと
すっかりおばさん姿が板についた伊藤は首を傾げながら答えた。
「いや、私もそういう集まりは知らん。
我々は憂国議員連盟での活動を主としていたんだが、あくまでも志を共にする議員の集まりであって、中野が言ったような政財界や芸能界まで拡がりを見せる会があるなんて、俄かに信じられん。
まあ、政界の方はそれとなく探りを入れてみるが、この姿じゃなあ。
青木君、例の薬は手に入れられそうか?」
「もちろんよ。もう少し待って。
ファイン製薬と暴力団を繋ぐブローカーに行き着く事が出来たわ。
近いうちに何とかするから。」
「そうか、頼んだよ。」
「伊藤先生、男に戻れたとしても、あなたは指名手配中ですよ。
探りを入れる前に逮捕されるんじゃないんですか」
高山は意地の悪い笑みを浮かべて伊藤に言った。
「まあ、たしかにそうだが
私だけに罪をかぶせて口封じをした連中を道連れにしなきゃ気が済まん。
それには先ず男に戻らんとな。」
「ナオちゃん」
「?」
「キミは、引き続きファイン製薬で従順な社員を演じ、中野社長の懐に入り込み、秘密を探ってくれ。
青木君は性転換薬を入手
伊藤先生と私が動くのはそこからだな。」
「本当に役に立ってくれるんでしょうね?」
美優は呆れた表情で高山の言葉に被せていった。
「いや、そこからは私と伊藤先生じゃないと突破口は見出せないよ。」
「まあいいわ。
私は貰うものさえ貰えればそれでいいから」
暫くして解散し、高山のアジトを後にした私は沢渡さんと合流した。
愛さんと宮川さんは来られないという事で、二人だけの集合になった。
「宮川さんが、友政党所属でしょ?
伊藤事件に関わっている事がバレたら大変な事になるって言って、しばらく来られないようです。
愛さんも恋人だから同じく自重しているようで。」
「仕方ありませんね。
私達のやれるだけの事をやりましょう。
沢渡さん、その後、何か進展はありましたか?」
「ええ。
この事件については残念ながら新しい情報は掴めてませんが…
ほら、私が先日お話をした蜷川病院の医療ミス事件で、興味深い話を聞きました。」
「興味深い話?」
「ええ。入院患者十七名が亡くなるという事件でしたが、最初は例のウィルスによる院内感染が疑われていましたが、そうではなかったようです。」
「感染していたって聞きましたけど、違うんですか?」
「感染はしていましたよ。十七名とも
ですが、今流行中の型は、入院中の抵抗力のない患者といえど十七名が全員死んでしまうような強いウイルスではないんです。
なのに、死んでしまった…
私はそこに大きな疑問を感じていたんです」
沢渡さんはウーロン茶を一口飲むと、そこから一気に、驚くべき話を私にしてきた。
中に入ると、伊藤は勿論、美優もいた。
「いらっしゃい。」
美優は私の方に視線を向けると、そう言ってニヤッと笑った。
高山も伊藤も美優も、憎き敵なのにこうして共同戦線を張る形になっているのが何とも変なこと気持ちになる。
「ほう。中野社長がナオちゃんを伴ってお仲間の集まりに行くと。
伊藤先生、何か心当たりがありますか?」
私の報告に対し、高山が伊藤に聞くと
すっかりおばさん姿が板についた伊藤は首を傾げながら答えた。
「いや、私もそういう集まりは知らん。
我々は憂国議員連盟での活動を主としていたんだが、あくまでも志を共にする議員の集まりであって、中野が言ったような政財界や芸能界まで拡がりを見せる会があるなんて、俄かに信じられん。
まあ、政界の方はそれとなく探りを入れてみるが、この姿じゃなあ。
青木君、例の薬は手に入れられそうか?」
「もちろんよ。もう少し待って。
ファイン製薬と暴力団を繋ぐブローカーに行き着く事が出来たわ。
近いうちに何とかするから。」
「そうか、頼んだよ。」
「伊藤先生、男に戻れたとしても、あなたは指名手配中ですよ。
探りを入れる前に逮捕されるんじゃないんですか」
高山は意地の悪い笑みを浮かべて伊藤に言った。
「まあ、たしかにそうだが
私だけに罪をかぶせて口封じをした連中を道連れにしなきゃ気が済まん。
それには先ず男に戻らんとな。」
「ナオちゃん」
「?」
「キミは、引き続きファイン製薬で従順な社員を演じ、中野社長の懐に入り込み、秘密を探ってくれ。
青木君は性転換薬を入手
伊藤先生と私が動くのはそこからだな。」
「本当に役に立ってくれるんでしょうね?」
美優は呆れた表情で高山の言葉に被せていった。
「いや、そこからは私と伊藤先生じゃないと突破口は見出せないよ。」
「まあいいわ。
私は貰うものさえ貰えればそれでいいから」
暫くして解散し、高山のアジトを後にした私は沢渡さんと合流した。
愛さんと宮川さんは来られないという事で、二人だけの集合になった。
「宮川さんが、友政党所属でしょ?
伊藤事件に関わっている事がバレたら大変な事になるって言って、しばらく来られないようです。
愛さんも恋人だから同じく自重しているようで。」
「仕方ありませんね。
私達のやれるだけの事をやりましょう。
沢渡さん、その後、何か進展はありましたか?」
「ええ。
この事件については残念ながら新しい情報は掴めてませんが…
ほら、私が先日お話をした蜷川病院の医療ミス事件で、興味深い話を聞きました。」
「興味深い話?」
「ええ。入院患者十七名が亡くなるという事件でしたが、最初は例のウィルスによる院内感染が疑われていましたが、そうではなかったようです。」
「感染していたって聞きましたけど、違うんですか?」
「感染はしていましたよ。十七名とも
ですが、今流行中の型は、入院中の抵抗力のない患者といえど十七名が全員死んでしまうような強いウイルスではないんです。
なのに、死んでしまった…
私はそこに大きな疑問を感じていたんです」
沢渡さんはウーロン茶を一口飲むと、そこから一気に、驚くべき話を私にしてきた。
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