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好機
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ついに伊藤が来店した。
いつものようにお付きを一名引き連れて。
伊藤の希望で、今回はマリアは付かず、私は一名だけが付くことになった。
「よう、なつみ
久しぶりだな。」
今日は最初から機嫌がいい。
「先生、ずいぶんとご無沙汰ですね。
もう来てくれないのかと思っちゃった。」
「そう言わんでくれよ。
私も忙しくてな。だが、そんな中、ちゃんとこうしてなつみに会いに来たんだ。
その努力は認めてほしいね。」
「もちろんです。
私も先生に怒られちゃいけないって政治の勉強をしてましたので、あんまり早く来られてたらボロが出てましたわ。」
私は伊藤にお酒を差し出しながら言った。
「おう、そうか。何でも聞いてくれよ、なつみと政治談義をするのは楽しい。
穿った見方しか出来んクソ政治記者と話してても何も面白くないからな。」
私の事を相当気に入ってくれてるのか、本当によく喋る。
その後は延々と伊藤が好む話題を提供したが、そろそろ場もあったまってきたところで、少し核心を突く質問をしてみよう
「先生の政治家としての信条ってどんなものなんですか?」
「信条か。なかなか面白い事を聞くじゃないか。
私の政治家としての信条は、この日本を取り戻す事だよ。」
「取り戻す?」
「ああ、そうだ。
かつての日本の栄光を取り戻す、それが私の政治家としての信条だよ。」
「…」
「没落が始まって久しいこの国だが、友政党政権になってからさらに拍車がかかり、取り返しのつかないところまで来ている。
次の選挙で我が党は再び政権を取り返し、そしてこの国を輝かしい国にする。
未来を担う子供たち、その子孫たちのためにな。」
随分立派な事を言う。
自分に酔ってるのか…
「先生、今、一番の問題は何だと考えられてますか?」
「まあ、敵だらけに囲まれたこの島国で危機感もなくのほほんと平和ボケしてるヤツらも問題だと思うが、米軍が駐留している間は猶予がある。その間に一刻も早く憲法改正を行わなければならない。
我々が政権を担ってた時に成立させた自衛派遣法だけでは不十分だ。
九条の改正を行わない限りはな。」
「それは難しいんじゃないですか?」
「ああ。でも誰かがやらなければならない。
自分を犠牲にしてもな。
なつみ、外交問題も重要だが、一番大事なのは内政の方さ。」
「内政ですか…」
「そうだ。人口問題だよ。
日本の人口が減少を始めてから久しいが、国はこれといった対策を立ててはいない。
人口が減るということは、出生率が下がるということだ。
年金暮らしの老人だけが増え続けてな。
このままいけば日本は外国の侵略や地震などの災害ではなく、自然に衰退してじわじわと滅亡の道を辿る事になる。」
「えー、そんなことに」
「ドラスティックな対応に迫られていることは間違いない。
老人の票を頼りにしている日和見政治家どもは何も動こうとしないだろうがな。
だが、私はそんなものに関係なく、自らの信条に則って行動をする。
幸い、私と志を共にしてくれる政治家も数多くいてくれてな、その人達と声を上げ、そして行動する事を誓ったんだ。」
それが憂国議員連盟というやつか…
伊藤はその後も機嫌が良く、閉店間際まで色んな話を私にしてきた。
若い女の子にこの手の話はキツイ。
結衣は悪くなかったということか…
「もうこんな時間か。
ついつい熱くなって語りすぎてしまったな。
なつみは語らせ上手だからな。」
「そんな事ありません。
先生のお話はどれも私の知らない事ばかりで、聞いててワクワクしたり怖かったり、時間があっという間に過ぎていきます。」
「嬉しい事を言ってくれるじゃないか。
よし、もう一軒付き合ってくれるか?」
「もう一軒?」
「ああ。アフターってやつだよ」
キタキタ…
誘ってきたぞ
いつものようにお付きを一名引き連れて。
伊藤の希望で、今回はマリアは付かず、私は一名だけが付くことになった。
「よう、なつみ
久しぶりだな。」
今日は最初から機嫌がいい。
「先生、ずいぶんとご無沙汰ですね。
もう来てくれないのかと思っちゃった。」
「そう言わんでくれよ。
私も忙しくてな。だが、そんな中、ちゃんとこうしてなつみに会いに来たんだ。
その努力は認めてほしいね。」
「もちろんです。
私も先生に怒られちゃいけないって政治の勉強をしてましたので、あんまり早く来られてたらボロが出てましたわ。」
私は伊藤にお酒を差し出しながら言った。
「おう、そうか。何でも聞いてくれよ、なつみと政治談義をするのは楽しい。
穿った見方しか出来んクソ政治記者と話してても何も面白くないからな。」
私の事を相当気に入ってくれてるのか、本当によく喋る。
その後は延々と伊藤が好む話題を提供したが、そろそろ場もあったまってきたところで、少し核心を突く質問をしてみよう
「先生の政治家としての信条ってどんなものなんですか?」
「信条か。なかなか面白い事を聞くじゃないか。
私の政治家としての信条は、この日本を取り戻す事だよ。」
「取り戻す?」
「ああ、そうだ。
かつての日本の栄光を取り戻す、それが私の政治家としての信条だよ。」
「…」
「没落が始まって久しいこの国だが、友政党政権になってからさらに拍車がかかり、取り返しのつかないところまで来ている。
次の選挙で我が党は再び政権を取り返し、そしてこの国を輝かしい国にする。
未来を担う子供たち、その子孫たちのためにな。」
随分立派な事を言う。
自分に酔ってるのか…
「先生、今、一番の問題は何だと考えられてますか?」
「まあ、敵だらけに囲まれたこの島国で危機感もなくのほほんと平和ボケしてるヤツらも問題だと思うが、米軍が駐留している間は猶予がある。その間に一刻も早く憲法改正を行わなければならない。
我々が政権を担ってた時に成立させた自衛派遣法だけでは不十分だ。
九条の改正を行わない限りはな。」
「それは難しいんじゃないですか?」
「ああ。でも誰かがやらなければならない。
自分を犠牲にしてもな。
なつみ、外交問題も重要だが、一番大事なのは内政の方さ。」
「内政ですか…」
「そうだ。人口問題だよ。
日本の人口が減少を始めてから久しいが、国はこれといった対策を立ててはいない。
人口が減るということは、出生率が下がるということだ。
年金暮らしの老人だけが増え続けてな。
このままいけば日本は外国の侵略や地震などの災害ではなく、自然に衰退してじわじわと滅亡の道を辿る事になる。」
「えー、そんなことに」
「ドラスティックな対応に迫られていることは間違いない。
老人の票を頼りにしている日和見政治家どもは何も動こうとしないだろうがな。
だが、私はそんなものに関係なく、自らの信条に則って行動をする。
幸い、私と志を共にしてくれる政治家も数多くいてくれてな、その人達と声を上げ、そして行動する事を誓ったんだ。」
それが憂国議員連盟というやつか…
伊藤はその後も機嫌が良く、閉店間際まで色んな話を私にしてきた。
若い女の子にこの手の話はキツイ。
結衣は悪くなかったということか…
「もうこんな時間か。
ついつい熱くなって語りすぎてしまったな。
なつみは語らせ上手だからな。」
「そんな事ありません。
先生のお話はどれも私の知らない事ばかりで、聞いててワクワクしたり怖かったり、時間があっという間に過ぎていきます。」
「嬉しい事を言ってくれるじゃないか。
よし、もう一軒付き合ってくれるか?」
「もう一軒?」
「ああ。アフターってやつだよ」
キタキタ…
誘ってきたぞ
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