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政治力
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愛さんはその後すぐに宮川さんに連絡してくれて、忙しくしていたにもかかわらず、私達のところまで来てくれた。
「吉岡さん、お久しぶりです。
お変わりはないですか」
「ええ。体の方はすっかり良いです。」
宮川さんは相変わらず日焼けしてて細身で、東南アジアの雰囲気を醸し出していた。
今は友政党所属の国会議員の父親の秘書をしているそうだ。
宮川さんの父親は元弁護士で人権派で知られており、国会でも追及の手を緩めない事で有名な人だ。
その息子さんだし、拉致から解放されたときも親身になって手助けされた事もあって、信用してもいいと思った。
もちろん、私が信頼する愛さんの恋人でもあるし。
さっき愛さんに話したように、宮川さんにも、この拉致事件の裏にある疑惑について、話してみた。
「そんな事があったとは…」
宮川さんは私と沢渡さんの話に一々驚き、そして憤った表情を見せた。
「たしかにあの代議士の伊藤って人は、与党で大臣をやってたときから色々と胡散臭い部分がありました。
ですが、あの拉致事件に関係しているとは思ってもみませんでした。」
「どうしてですか?」
「民国党は右派が主流の政党です。当時の内閣の顔ぶれもそうでした。
中でもその色の濃い伊藤が、あの国と通じていたとはとてもじゃないですが、考えにくい事です。」
「なるほど、それでは何故自分の信条を曲げてまであの国に近づき、協力までしたのでしょうか。」
沢渡さんは首を傾げながら宮川さんに質問した。
「それはわかりませんが、多分…
何らかの見返りが約束されていたのでしょう。」
「宮川さん、あと少し、何かがわかれば全てが繋がってくるような気がするんです。
どうか力をお貸しください。」
私は宮川さんに向かって頭を下げた。
「ねえ、なんとかならない?
多分伊藤一人だけじゃなく、民国党が党ぐるみで関係してると思うの。」
愛さんも隣に座る宮川さんに頼んでくれた。
「わかりました。
親父に話をしてみます。
多分解散総選挙が近くあると思います。
世論調査では民国党が我が党に迫る勢いを見せています。
伊藤や民国党を叩く材料があるのなら、他の先生達も力を貸してくれるはずです。」
宮川さんは力強く頷いて、私を励ますように言ってくれた。
「じゃあ、私からも報告を」
続いて沢渡さんが話し始めた。
「ここのところずっと伊藤の行動を徹底的にマークしていました。
まあ、忙しく動き回る男で、こちらもけっこう大変だったんですが、ヤツが頻繁に行く場所が二つほどある事がわかりました。
一つはヤツの事務所の近くにあるスポーツジム。
そして、もう一つは銀座にある高級クラブsapphireです。」
「クラブですか」
「ええ。スポーツジムは体を鍛えるのが趣味ということもあって、週三回ペースで通っています。
銀座のクラブは不定期ですが、月に二、三回…
平均して通っています。」
「つまり、伊藤と接点を持つにはそのスポーツジムかクラブに…」
「そうです。ジムの方はなかなか難しいかもしれませんが、クラブはお付きがいるとはいえ、アルコールも入りますし、女の子との会話を楽しみに来る訳ですから、ハードルは少しだけ低いと思います。」
沢渡さんの話に私は頷いた。
「わかりました。
採用されるかどうかはわかりませんが、その銀座のクラブに応募してみます。」
突破口とまではいかないが、そこに繋がる細い道があった。
「吉岡さん、お久しぶりです。
お変わりはないですか」
「ええ。体の方はすっかり良いです。」
宮川さんは相変わらず日焼けしてて細身で、東南アジアの雰囲気を醸し出していた。
今は友政党所属の国会議員の父親の秘書をしているそうだ。
宮川さんの父親は元弁護士で人権派で知られており、国会でも追及の手を緩めない事で有名な人だ。
その息子さんだし、拉致から解放されたときも親身になって手助けされた事もあって、信用してもいいと思った。
もちろん、私が信頼する愛さんの恋人でもあるし。
さっき愛さんに話したように、宮川さんにも、この拉致事件の裏にある疑惑について、話してみた。
「そんな事があったとは…」
宮川さんは私と沢渡さんの話に一々驚き、そして憤った表情を見せた。
「たしかにあの代議士の伊藤って人は、与党で大臣をやってたときから色々と胡散臭い部分がありました。
ですが、あの拉致事件に関係しているとは思ってもみませんでした。」
「どうしてですか?」
「民国党は右派が主流の政党です。当時の内閣の顔ぶれもそうでした。
中でもその色の濃い伊藤が、あの国と通じていたとはとてもじゃないですが、考えにくい事です。」
「なるほど、それでは何故自分の信条を曲げてまであの国に近づき、協力までしたのでしょうか。」
沢渡さんは首を傾げながら宮川さんに質問した。
「それはわかりませんが、多分…
何らかの見返りが約束されていたのでしょう。」
「宮川さん、あと少し、何かがわかれば全てが繋がってくるような気がするんです。
どうか力をお貸しください。」
私は宮川さんに向かって頭を下げた。
「ねえ、なんとかならない?
多分伊藤一人だけじゃなく、民国党が党ぐるみで関係してると思うの。」
愛さんも隣に座る宮川さんに頼んでくれた。
「わかりました。
親父に話をしてみます。
多分解散総選挙が近くあると思います。
世論調査では民国党が我が党に迫る勢いを見せています。
伊藤や民国党を叩く材料があるのなら、他の先生達も力を貸してくれるはずです。」
宮川さんは力強く頷いて、私を励ますように言ってくれた。
「じゃあ、私からも報告を」
続いて沢渡さんが話し始めた。
「ここのところずっと伊藤の行動を徹底的にマークしていました。
まあ、忙しく動き回る男で、こちらもけっこう大変だったんですが、ヤツが頻繁に行く場所が二つほどある事がわかりました。
一つはヤツの事務所の近くにあるスポーツジム。
そして、もう一つは銀座にある高級クラブsapphireです。」
「クラブですか」
「ええ。スポーツジムは体を鍛えるのが趣味ということもあって、週三回ペースで通っています。
銀座のクラブは不定期ですが、月に二、三回…
平均して通っています。」
「つまり、伊藤と接点を持つにはそのスポーツジムかクラブに…」
「そうです。ジムの方はなかなか難しいかもしれませんが、クラブはお付きがいるとはいえ、アルコールも入りますし、女の子との会話を楽しみに来る訳ですから、ハードルは少しだけ低いと思います。」
沢渡さんの話に私は頷いた。
「わかりました。
採用されるかどうかはわかりませんが、その銀座のクラブに応募してみます。」
突破口とまではいかないが、そこに繋がる細い道があった。
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