或る実験の記録

フロイライン

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久しぶりに再会したミツルさんは、一段とキレイになっていた。
名前も愛に改名したそうだ。

「ナオちゃん、さらに綺麗になったねえ。」

「いえ、ミツルさん、いえ、愛さんの方こそ。
本当に美人です。
声も変わっちゃってて誰だか最初はわかんなかったです。」

「声はね。これは練習の賜物だよ

国から支援金が出てるから、まだ働いてないし、昼間とかヒマでヒマでね。
発声の訓練をする時間は沢山あったから。」

そんな話をしていると、遅れて沢渡さんがやってきた。

「すいません、遅れちゃいまして。」

「いえ。

沢渡さん、この方が話しをしてたミツルさんです。

今は愛さんですけど。」

「はじめまして、沢渡です。
ナオさんからお話はお聞きしてます。

この度は、我々にご協力いただけるという事で、本当にありがとうございます。」

「本庄愛です。
よろしくお願いします。ワタシも事件の当事者として、真相を知りたいと強く思ってるので。
少しでも力になれたらと思っています。」

私達は愛さんにこれまでの流れを知ってもらうべく、丁寧に知り得た情報の全てを話した。



「なるほど。
そんな背景があったんだね。」


「そうなんです。
政治家が絡んでるだけに事が複雑になっているというか、核心に迫ることが出来ず、各方面に圧力がかかってて、八方塞がりってかんじです。」

「やはり、伊藤をマークする事で何かわかるかと思い、ここのところずっと調べてきましたが、ガードが高く、何も進展がありません。」


「ナオちゃんが言ってた友政党の協力者って見つかりそうなの?」

「いえ。全然…」

「ワタシ、役に立てるかもしれない。」

「えっ?」

愛さんの言葉に、沢渡さんと私は思わず同時に声を上げた。


「誰か知り合いでもいるんですか?」


「うん。
ナオちゃんも知ってる、ホラ、宮川さん。」

「宮川さん!」

そうだ。
拉致被害者を支援するために親身になって色々してくれた、政府から派遣されてた宮川さんだ。

「愛さん、宮川さんの連絡先知ってるんですか?」  

「知ってるよ。

えっと、この際だから言うけど、あの後、色々あってね。
今、私たち付き合ってるのよ。」

「えーっ!!」

私が驚きの声を上げると、愛さんは恥ずかしそうに俯いて笑みを浮かべた。

人生ってわからないものだ。
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