或る実験の記録

フロイライン

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高山の言っていた通り、あらゆる媒体から私の名前は消えてしまった。
新たな取材依頼もなく、こちらが連絡しても取り合ってくれなくなってしまった。

高山の言っていた通り、ここにも何らかの力がはたらいているのは間違いなかった。

八方塞がりになり、どうしようもなくなった私は直談判に行き、門前払いされたテレビ局を出て、ため息をついた。

もうどうしていいかわからない。
誰が信じられて誰が味方で敵なのか…

絶望感でいっぱいで泣きそうになっていた私に

「吉岡さん」

と、不意に背後から声をかけられた。

振り返ると、ロン毛でヒゲ面のいかにも怪しい、年齢は三十代半ばといったところか…
見た事ない男が立っていた。

「?」

「すいません、私はフリーの記者で沢渡という者です。」

「えっと、何ですか?」

「少しお話をお聞きしたいんですが、よろしいですか?」

「いえ、何もお話する事はないので」

私はその風貌を見て、信用出来ないと判断した。

「吉岡さん、もうどこのマスコミも取り上げてはくれませんよ。

私が記事を持ち込んでる出版社でもそういう通達がありましたのでね。」


沢渡は表情を変えず、淡々と話をした。

「どういう事ですか?」

「ですから、少しお時間を下さい。
私が知りうる情報は全て開示しますよ。」

「わかりました。」

私達は、周囲を警戒しながら近くのカラオケボックスに入った。

沢渡がそこが一番安全だと言ったからだ。

狭い個室に通された私達は、ウーロン茶をオーダーした。

そして、店員がウーロン茶を運んできて、部屋から出ていくのを確認したのちに、沢渡はようやく話を始めた。

「すいませんね、急にこんなところまで連れ出しまして。
まさか、あんなところで吉岡さんと遭遇するとは思ってもみなかったもんですから。」

「で、お話って何なんですか?」  

「まあ、私の身の上話から聞いていただいてもいいですか?
その方が吉岡さんにも私という人間を理解してもらう事が出来る。」

沢渡はウーロン茶を一口飲み、話を始めた。
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