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美優
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両親が美優を呼ぶために部屋を出て行った。
美優が私を見れば、母のように泣きじゃくるのか…
それとも、案外フツーだったりして… もう新しい彼氏が出来たのかな…ひょっとしたら結婚してたりして…
いや、それならここに来ないはずだ。
私の頭の中で様々な思いが浮かんでは消えた。
私の考えが整理できないうちに部屋の扉が開いてしまった。どんな顔をして待ってようか
なんて考える間も無く…
部屋に入るのをやや躊躇して、外からちらっと覗き込む女性がいた。
紛れもなく美優だった。あのときと変わらぬ
美しい美優がこちらに近づいて来る。
もう25才になってるはずだが、時の流れを感じさせない初々しさ… 美優を見て、わずかながら私の中の男性の心象が蘇ってきた。
「美優…」
私はすっかり高くなってしまった声を目一杯低く出すように意識して言った。
こらえきれなかったのか美優は両手で顔を押さえて泣き出した。
「美優…ごめん。俺、こんなんになっちゃったよ…」
私の言葉に、美優は首を何度も横に振り泣き続けた。
「生きてて… 良かった…」
と言いながら。
私はすぐにでも美優を抱きしめたかった。
でも… この胸の存在が私を美優に近づかせなかった。
美優に私が「女」であるという証拠をわからせたくなかったから…
美優…許してくれ。
泣きながらも 努めて明るく振る舞おうとする美優が、とても痛々しくて… 私の胸をぐっと締め付けた。
両親のときと同様、美優とも会話を交わすまで少し時間がかかったが徐々に話が出来るようになり、結局二時間以上美優と二人で話が出来た。
なんてことない話ばっかりだったけど…
夕方になり、美優と両親は私に、また翌日に来るという約束をして帰っていった。
一人になって私は美優を抱きしめられなかった自分の体を恨めしく思い、泣いた。
でも、すぐに泣いてしまう自分は、やはり、もう男ではない…と、冷静に分析するもう一人の自分がいた。
この日の夜、私は退院する決意をしたと宮川に伝え、手続きに入ってもらった。
美優が私を見れば、母のように泣きじゃくるのか…
それとも、案外フツーだったりして… もう新しい彼氏が出来たのかな…ひょっとしたら結婚してたりして…
いや、それならここに来ないはずだ。
私の頭の中で様々な思いが浮かんでは消えた。
私の考えが整理できないうちに部屋の扉が開いてしまった。どんな顔をして待ってようか
なんて考える間も無く…
部屋に入るのをやや躊躇して、外からちらっと覗き込む女性がいた。
紛れもなく美優だった。あのときと変わらぬ
美しい美優がこちらに近づいて来る。
もう25才になってるはずだが、時の流れを感じさせない初々しさ… 美優を見て、わずかながら私の中の男性の心象が蘇ってきた。
「美優…」
私はすっかり高くなってしまった声を目一杯低く出すように意識して言った。
こらえきれなかったのか美優は両手で顔を押さえて泣き出した。
「美優…ごめん。俺、こんなんになっちゃったよ…」
私の言葉に、美優は首を何度も横に振り泣き続けた。
「生きてて… 良かった…」
と言いながら。
私はすぐにでも美優を抱きしめたかった。
でも… この胸の存在が私を美優に近づかせなかった。
美優に私が「女」であるという証拠をわからせたくなかったから…
美優…許してくれ。
泣きながらも 努めて明るく振る舞おうとする美優が、とても痛々しくて… 私の胸をぐっと締め付けた。
両親のときと同様、美優とも会話を交わすまで少し時間がかかったが徐々に話が出来るようになり、結局二時間以上美優と二人で話が出来た。
なんてことない話ばっかりだったけど…
夕方になり、美優と両親は私に、また翌日に来るという約束をして帰っていった。
一人になって私は美優を抱きしめられなかった自分の体を恨めしく思い、泣いた。
でも、すぐに泣いてしまう自分は、やはり、もう男ではない…と、冷静に分析するもう一人の自分がいた。
この日の夜、私は退院する決意をしたと宮川に伝え、手続きに入ってもらった。
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