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運命
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母は精一杯普通のトーンで
「ナオ、元気そうね…」
と私に声をかけてきた。しかし、その後の言葉が続かず
涙をボロボロこぼして泣きじゃくってしまった。
こんなときの男はだらしない。父は何も言葉を発することが出来ず、取り繕った笑顔で何度か頷くだけだった。
後から聞いたことだが、両親をここに連れて来るまでの間、宮川が私についての話を色々してくれたみたいで、二人もそれなりに心の準備はしてきたようだ。
それでも、想像を絶する我が子の変化が、二人の言葉を失わせてしまったのだった。
「心配かけてごめん…」
私もそう言うのが精一杯だったが、私の発した声が甲高くなっていたことも、二人にさらなる衝撃を与えた。
他人はまだしも、親や親戚など、私に近い人達は皆このような反応になるだろう…
自分自身の変化については受け入ることが出来た私だが、周りの人達の反応までは一々考えてなかった…
一気に憂鬱な気持ちでいっぱいになった。
それでも、お互いに次第に慣れてきて、ようやく色々な会話を交わすことが出来た。
私が行方不明だった期間に、姉に子供が出来たことや、父が定年退職したことなど、私が不在だった三年近くの間に起きた出来事を話してくれた。
私のことについては、私自身も敢えて話さなかったし、両親も一切触れなかった。
一時間ほどが経過したとき、母が意を決したような表情で、私に語りかけてきた。
「ナオ… 実はね。」
「ん?」
「美優ちゃんもここに一緒に来てるの…」
「えっ…」
「お前の了解を得られれば、ここに来たいって… 今、下で待ってもらってるのよ。」
「…」
「お前が決めればいい。」
さっきまでほとんど喋ってなかった父がボソっと後ろから言った。
そう、私が一番会いたくて、一番会いたくなかった人、それが美優だ。
「うん。会うよ。
その代わり… 悪いけど二人きりで会わせてもらえるかな…」
私は覚悟を決めた。
「ナオ、元気そうね…」
と私に声をかけてきた。しかし、その後の言葉が続かず
涙をボロボロこぼして泣きじゃくってしまった。
こんなときの男はだらしない。父は何も言葉を発することが出来ず、取り繕った笑顔で何度か頷くだけだった。
後から聞いたことだが、両親をここに連れて来るまでの間、宮川が私についての話を色々してくれたみたいで、二人もそれなりに心の準備はしてきたようだ。
それでも、想像を絶する我が子の変化が、二人の言葉を失わせてしまったのだった。
「心配かけてごめん…」
私もそう言うのが精一杯だったが、私の発した声が甲高くなっていたことも、二人にさらなる衝撃を与えた。
他人はまだしも、親や親戚など、私に近い人達は皆このような反応になるだろう…
自分自身の変化については受け入ることが出来た私だが、周りの人達の反応までは一々考えてなかった…
一気に憂鬱な気持ちでいっぱいになった。
それでも、お互いに次第に慣れてきて、ようやく色々な会話を交わすことが出来た。
私が行方不明だった期間に、姉に子供が出来たことや、父が定年退職したことなど、私が不在だった三年近くの間に起きた出来事を話してくれた。
私のことについては、私自身も敢えて話さなかったし、両親も一切触れなかった。
一時間ほどが経過したとき、母が意を決したような表情で、私に語りかけてきた。
「ナオ… 実はね。」
「ん?」
「美優ちゃんもここに一緒に来てるの…」
「えっ…」
「お前の了解を得られれば、ここに来たいって… 今、下で待ってもらってるのよ。」
「…」
「お前が決めればいい。」
さっきまでほとんど喋ってなかった父がボソっと後ろから言った。
そう、私が一番会いたくて、一番会いたくなかった人、それが美優だ。
「うん。会うよ。
その代わり… 悪いけど二人きりで会わせてもらえるかな…」
私は覚悟を決めた。
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