或る実験の記録

フロイライン

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新たなる檻の中で

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夜遅くに病院に着いた私達四人はそれぞれ個室をあてがわれた。 

その日は簡単な検査をされただけで、本格的なものは翌朝から行われることとなったのだが、私についてはさらに精密な検査が行われることになった。 

二日後には大学病院から性適合手術の権威と呼ばれる人がやってきて、私の体をくまなく調べた。もちろんメンタル部分の傷を緩和するためのカウンセラーも付きっきりでケアにあたった。 

そのおかげもあってか、日本に帰って来たときに抱えていた不安は若干無くなってきた。 

検査は毎日続き、細かなものを含めると、二週間もの期間を要した。 
検査以外の時間は 主にテレビを見たり雑誌を見たりしてすごしたが、 制約のあるこの生活に収容所にいたときとそう変わらないな… 

と 

しみじみ思ったりもした。 
私が入院していた階は、一般の人間は入って来れなかったが、宮川等の一部の政府関係者や警察関係者がたまに訪問して来た。 

収容所と違うところと言えば、同じフロアの中だけとはいえ部屋の外を自由に動き回れたことだ。 

部屋を出て廊下を進むと、談話室というものがあり、そこで今回の被害者達と会話を交わしたりすることが許されていた。 

私も気分を紛らわすために、たまに談話室に入ったが、やはり私の体の変化は皆とは明らかに違い、奇異の目で見られるのが常であった。 

それが嫌で、私は次第に談話室に行かなくなり、個室の中だけで過ごす日々に戻っていった。 

しばらくして、本土から救出された人間もここにやって来たらしく、二十人以上に膨れ上がっていった。 

そんなある日、私はいつものように個室のベッドの上で雑誌を広げ、ダラダラとした時間をすごしていると、 いきなり個室のドアが開いた。 

驚いて顔を上げると、一人の若い女性が笑顔で立っていた。 

「久しぶり。吉岡君…」 


一瞬誰だかわからなかったが、聞き覚えのある声と… 

「あっ!! ミツルさん!!」 

収容所で最初のうちだけ同室だった斎藤ミツルだった。 

「すっかり変わっちゃったね。 驚いたよ。 
カウンセラーの先生からたまたま君の話を聞いてさ、顔を見てやろうと思って来てやったんだよ。」 

ミツルはいたずらっぽく笑った。
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