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救出
しおりを挟む「邦人保護を目的に日本政府より派遣されました。」
「…どういうことですか!?」
「この国で、三日前に軍事クーデターが起き、政権が転覆しました。
直ちに国連は平和維持活動部隊の派遣を決定し、日本も現地の邦人保護を目的に同様の決定をしました。
しかし、我々の真の目的はあなたのような拉致被害者が新政府に処理される前に救出することにありました。」
「そうですか…
でも、武装した自衛隊が外国に派遣されるなんて、あり得ないことじゃ…」
私はにわかに信用出来ず疑いの目を向けた。
「去年法律の改正が行われました。我々は新自衛隊派遣法に則りここに来ています。」
後ろに立っていた若い男が丁寧な言い方で答えた。
「すいません、我々は拉致被害者と想定される人達の名簿を持って来ているのですが…
お名前をお聞かせ願ってもよろしいですか?」
「はい。吉岡です。吉岡直紀です!」
先頭の男がファイルを取り出し、紙に書かれた名前を指で追っていった。
「吉岡直紀さん…
あった!… え?
おかしいな、吉岡直紀さん…
男性になってる。
すいません! 資料にミスがあったようです。」
「いえ、合ってます… 私… いや、俺は男です。
ここに連れてこられて強制的に性転換されてしまったんです!」
私の言葉に自衛官二人は目を見開いて驚いた。
「まさか!! そんなことが…」
「名簿のほとんどは男性の筈です。
自分のようにされてしまい、本土とかいうところに送り込まれた人間も山ほどいますし、ここにもまだ何人か残っているはずです…」
「わ、わかりました!
とりあえず我々の艦船まで急ぎましょう!!」
「…はい。」
本当にまさかの展開だった。
すっかり諦めてしまっていた私だったが、期せずして日本に戻れることになってしまった…
しかし、私には心の準備が全く出来ていなかった。
日本に二度と帰れないということに対しての心の準備はしていたけれど…
性転換までされてしまった今、日本に帰ってどうなるのか…
私の心の中に嬉しさはほとんど無く…
恐怖心だけが大きく膨れ上がっていった。
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