或る実験の記録

流転

二週間が経過したが、高田は帰ってこなかった。 
私は言われたとおり、自らの腕にホルモン注射を打った。 

「相変わらず痛い注射だな… それにしても…食事はどうなってるんだろ？」 

もう昼を過ぎているというのに食事が朝から一切届かない。 

それどころか、外に人の気配が全くしないのである。 
私は不安になり、扉を何回も叩いて大声を出した。 

そのとき、扉の向こうからノックする音がした。 

「誰か中にいますか!?」 

日本語での呼びかけに私は驚いた。 

声からして高田ではない 

ましてや瞬でもない。 

いや、そんなことはどうでもいい。 
私は慌てて叫んだ 。

「います！ここにいます!!」 

すると、再びドアの向こうから 

「わかりました。扉のカギを破壊しますから下がっていて下さい！」 

という返事があった。 

（破壊!?） 

意味がわからなかったが、私は後ろに下がって、その重い鉄のドアを見つめた。 

次の瞬間、小さな爆発音がして、ドアの隙間から少し煙のようなものが入ってきた。 

そして ゆっくりとドアが開き、二名の兵士が入ってきた。 

ヘルメット!? 

いや、違う… いつもの兵士とは服装が違う。 

それに日本語… 

「日本人の方ですね？」 

先頭にいた恰幅の良い兵士が私に声をかけてきた。 

「は、はい！そうです！ あなた方は!?」 

「我々は日本の自衛隊です。」 

「自衛隊!?」 

自衛隊がなぜ… ここに…