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さらに半年が経過した。あれだけ苦労していたオシッコも今では普通に出来るようになり
もう心配はないようだ。
けれど… 私はまだここにいる。
この半年間で収容所にいた人間もめっきり減り、既に私を含めて数人だけになっており、最近は兵士達の姿もまばらになっている。
高田がここにやって来る回数も極端に減ってきていた… 私の知らないところで何か大きな事が起きているような予感がした。
そして、今日、久しぶりに高田が部屋にやってきた。
「やあ。」
「久しぶりですね。どこかに行ってたの?」
「ああ。本土の方にね…」
高田はいつになく神妙な顔をして話を続けた。
「… 近いうちに政変が起きる。」
「政変?」
「ああ。 実は… 総統が深刻な病気にかかっていて、多分… そう長くはないだろう。」
「…」
「この施設も、総統の個人的趣味が高じて作られたものだ。
当然、ここにいる軍人や国の幹部達も皆不満を持っている。
だから総統が死ねば、ここも閉鎖される。」
「閉鎖…」
「以前から君の身柄を本土に移すように再三命令が届いてたんだが、私は何かと理由をつけて延期させてきた。
本土で政変が起きたら、真っ先に私や君達のような存在から処理されてしまうだろうからね。」
「じゃあ… これからどうするんですか?」
「私はまた今日のうちにここを発つ。なんとか船を調達して帰ってくるつもりだ。
こんな言い方をして不謹慎だとは思うが、君は僕の最高傑作なんだ。
生き延びてもらわないと困る。
私がなんとかするからとにかく待っていてくれたまえ。」
「…」
「それと、最悪な事態が起きて、私が帰って来れなくなった場合を想定して、これを渡しておくよ。」
高田はアルミ製のアタッシュケースを私に手渡した。
「なんですか?」
「女性ホルモン剤と注射のキットだよ。」
「注射?」
「ああ。君の肉体はもうほとんど女性だが、定期的なホルモン注射は絶対に必要なんだ。
これを打たないと体に様々な弊害が起きる。
二週に一度、このアンプルを自分で打つんだ。わかったね?」
高田はそう言い残して出て行った。
もう心配はないようだ。
けれど… 私はまだここにいる。
この半年間で収容所にいた人間もめっきり減り、既に私を含めて数人だけになっており、最近は兵士達の姿もまばらになっている。
高田がここにやって来る回数も極端に減ってきていた… 私の知らないところで何か大きな事が起きているような予感がした。
そして、今日、久しぶりに高田が部屋にやってきた。
「やあ。」
「久しぶりですね。どこかに行ってたの?」
「ああ。本土の方にね…」
高田はいつになく神妙な顔をして話を続けた。
「… 近いうちに政変が起きる。」
「政変?」
「ああ。 実は… 総統が深刻な病気にかかっていて、多分… そう長くはないだろう。」
「…」
「この施設も、総統の個人的趣味が高じて作られたものだ。
当然、ここにいる軍人や国の幹部達も皆不満を持っている。
だから総統が死ねば、ここも閉鎖される。」
「閉鎖…」
「以前から君の身柄を本土に移すように再三命令が届いてたんだが、私は何かと理由をつけて延期させてきた。
本土で政変が起きたら、真っ先に私や君達のような存在から処理されてしまうだろうからね。」
「じゃあ… これからどうするんですか?」
「私はまた今日のうちにここを発つ。なんとか船を調達して帰ってくるつもりだ。
こんな言い方をして不謹慎だとは思うが、君は僕の最高傑作なんだ。
生き延びてもらわないと困る。
私がなんとかするからとにかく待っていてくれたまえ。」
「…」
「それと、最悪な事態が起きて、私が帰って来れなくなった場合を想定して、これを渡しておくよ。」
高田はアルミ製のアタッシュケースを私に手渡した。
「なんですか?」
「女性ホルモン剤と注射のキットだよ。」
「注射?」
「ああ。君の肉体はもうほとんど女性だが、定期的なホルモン注射は絶対に必要なんだ。
これを打たないと体に様々な弊害が起きる。
二週に一度、このアンプルを自分で打つんだ。わかったね?」
高田はそう言い残して出て行った。
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