或る実験の記録

フロイライン

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100日目②

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夕食を終え、俺と瞬は互いのベッドに腰掛けて話をしていた。 
「俺だってこんな体になってしまう前は何度も逃げようと考えてたよ。 

でも、どう考えてもここから逃げるのは不可能だったんだ。」 

「吉岡さん、実は俺、最初左側の方に連れてかれたんすよ。 
補欠合格で後からこっちになりました。」 

「左側… 炭鉱行きの方か?」 

「ええ。船着き場まで行ったんすけど、あの日は海が大荒れでね、その日は結局船が出ずに、俺らは一度施設にもどされたんすよ。 
拉致した時には目隠しまでしてたのに、そのときは何も無しだったんで、俺は色々観察しました。どうせ、炭鉱に行ったら二度と戻って来れないから、アイツらも油断したんでしょうね。 」 

「それで!?」 

「一晩待機場所にいて、ある事に気付いたんすよ。 ここは厳重な警備があるように見せてますけど、結構ザルで、俺らが連れて行かれた右側の通路には警備がほとんどいません。 

そして、そっち側の門の外には、船が二隻つながれてるんすよ。 

一隻は炭鉱に奴隷を運ぶ船、もう一隻は拉致に使用する船。」 

俺は興奮のあまりベッドから身を乗り出した。 

「その船で逃げようってんだな!?」 

「いや、多分カギも抜かれてるでしょうし 
それは無理っしょ?」 

「じゃあ、どうやって!?」 

「船に備え付けてある救命ボートを使います。」 

「救命ボート!?」 

「そう。 あれで沖に出るんですよ。 

潮の流れからして、沖まで出ればなんとか逃げられるでしょう。 

あとはどこかの船に発見されて救助されるのを祈るだけです。 
それと、ここは多分… 日本にかなり近い場所にあると俺はにらんでます。」 

「そんな計画で本当にうまくいくのか? 
それに、君はやけにここの事が詳しいじゃないか!」 

「アイツらの言葉がわかるもんで… 向こうはこっちが理解できないと思って、色々大事な話を平気で喋ってるんすよ。バカっすよね~」 

「… だとしたら… スゴいな!」 

俺は久しぶりに体から闘志が湧き出るのを感じた。 

そして、脱走の決行日は明後日に決まった。
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