或る実験の記録

フロイライン

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100日目

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朝起きると、いつものように化粧をして 
先日与えられた白のセーターとベージュのスカートに着替えた。 
夕方まではいつもと変わらぬスケジュールを淡々とこなした。 

部屋に戻ってきた俺は、夕食までの間、ベッドに横になり、ただ、ボーっとすごしていた。 

すると、外から部屋のカギが開けられた。 

(あれ? 晩飯にしてはいつもより早いんじゃないか…) 

不思議に思い、ベッドから起き上がると 
見知らぬ男が兵士に連れられて部屋に入ってきた。 
兵士は男をここに残して出て行ってしまった。 

「うわっ!すげーっ!お姉さん、本当に男なんすか!? 」 

男は俺を見るなり大きな声を上げた。 

顔はジャニーズ系でモテそうな雰囲気だったが、実にチャラい男で、俺は第一印象でコイツを大嫌いになった。 

男は清水 瞬と名乗った。21才の大学生で、サーフィンをしに海に出かけたときに拉致されてしまったらしい。 

ここに来てから一週間しか経っておらず、女性化の兆候も一切見られない。 

「いやあ、マジ最悪っすよ。こんなとこに連れて来られちゃって。正月ハワイに行く予定だったのに、全部パーっすよ。」 

「そうか…もう正月か。」 

俺がここに来たのは夏の暑い盛りだった。 
あれからもう三カ月以上が経過したんだな… 

「お姉さん、マジで男なんすか?声も女みたいっすよ!ちょっと低いけど。」 


「その、お姉さんていう言い方はやめろ!俺はれっきとした男だ。」 

俺は瞬に食ってかかったが、実のところ自分でも気になっていたんだ。最近声が高くなってきたことを。 

アイツが言うには、これも新薬の効果らしい。 

「まあ、ここは最悪っすけど、吉岡さんと一緒の部屋でラッキーっすよ!」 

脳天気野郎め! 


「あのねえ、君もここにいたら俺みたいになっちゃうんだよ!ラッキーもクソもないだろう?」 

俺が呆れて言うと、瞬はすました顔で言った。 

「いや、俺は逃げますよ。こんなとこに長居するもんじゃないでしょ?」 

「でも、逃げるったって…」 

「吉岡さん、ここに来てから一体何をしてたんすかあ? 
こんなとこ逃げる気になりゃあいつでも逃げれますよ。俺はもうルートを確保してます。」 

瞬はまた、すました顔で言った。
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