ニューハーフな生活

フロイライン

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「社長は理解してくれるとして…
大石係長とか、おれ他の社員の方達に言うのが辛いなあ。」

ワタシはカミングアウトすることを、やはり躊躇してしまった。


「あ、その事なら大丈夫よ。
少なくとも大石係長はユキちゃんの本当の姿を知ってしまってるから。」


「えっ」


「記憶にないと思うけど、歓迎会のとき
完全に女の子になってたから、言葉遣いから仕草まで。」


佳澄さんは笑いながらそう言った。


「えーっ、ウソ…」


「ホントよ。」


「うわあ…最悪…」


「だから気にする事なんてもう何もないのよ。
逆にカミングアウトする方がいいんじゃないかなあ、今後のことをを考えれば。」


「わかりました。
カミングアウトします…」


「うん。

じゃあ、出勤したら社長室に行こう。
ワタシも付いていってあげるし。」


「佳澄さん、是非是非お願いします。」


ワタシは頭を思いっきり下げた。




ワタシ達は店を出て会社に向かった。

そして、着くなり社長室に二人で入り、佳澄さんから全て話をしてくれた。

社長は、月曜の朝にいきなりワタシと佳澄さんが来たもんだから、びっくりしたような表情を浮かべていたが、佳澄さんから全てを聞くと、ニヤニヤしながらワタシを見つめた。


「なるほどな。

僕もそれがいいと思うよ。」


「いいんですか…社長。」


「キミを採用するにあたって、いつかこんな日が来るんだろうなあって、漠然と感じてたんだけど、まあ、いいんじゃないかな。」


武田社長は四十くらいかな
いかにもスポーツマンていうタイプで短髪で日焼けしてる。
佳澄さん曰く、結婚もしてて小学生の息子さんがいるんだけど、ニューハーフ好きでよく遊んでるんだとか。

佳澄さんはニューハーフのお店じゃなくて、女性に混じって働いていたそうなんだけど、そこに客として現れた武田社長が、すぐに佳澄さんがニューハーフだっていうことをすぐに気付いたんだとか。

武田社長はそういうものを見抜く力があるから、ワタシもその素性をわかった上で採用したのだろう。


「じゃあ、社長
明日から西村さんは女性として働くってことでいいよね?」


「ああ、俺は全然かまわないけど。
西村君、大丈夫?」


「えっ、はい

よろしくお願いします。」


ワタシは少しキョドった感じになったけど、深々と頭を下げた。


社長室を出ると、佳澄さんが

「さあ、男子社員として仕事するのは今日が最後よ。
頑張ってらっしゃい!」

と、言って、ワタシの肩をポンと叩いた。


明日の朝、みんなにカミングアウトしなきゃならないのかあ…

憂鬱や…
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