ニューハーフな生活

フロイライン

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昔取った杵柄

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「えっ、ユキちゃんなの?」


「はい。
サラリーマンやってます、今」


「似合ってないよ、スーツ姿が」


ユウさんは、そう言って大笑いした。



ワタシは向かい側に座らせてもらい、晩御飯を一緒に食べることにした。


「久しぶりだねえ、それにしても」


「そうですね。
ユウさん、元気にされてました?」


「うん。
ママも今のところ元気に頑張ってくれてるし、お店の方もお客さんが入ってくれて、なかなか良い感じよ。

ワタシも風俗は辞めたしね。」


「辞めたんですか」


「実家の方の借金もある程度目処がついたし、なんとかね。」


「それはよかったです。」


「風俗は長く続けてると心が病んじゃうもん。

それよりも、ユキちゃん
男として頑張ってんだね」


「一応、そうなんですけど…
結局女ホルは続けてますし、働いてるとき以外はニューハーフ時代と服装も生活も何ら変わりません。」


「でも、カノジョと幸せに暮らしてんでしょ?」


「それは…はい。

でも、タマないじゃないですか、ワタシ

それで女ホルも続けるハメになったわけだし、夜の方も全然で。」


「まあ、そういう欲求が起きてこないのも辛いっちゃあ辛いわね。
ユキちゃんだけじゃなく、お相手のカノジョの方も。」


「はい、そうなんです。

でも、カノジョはそんなこと全然文句言わないし、ホントに申し訳ない気持ちでいっぱいです。」


「あんまりムリしない方がいいよ。
自分で自分を追い込むのも良くないことだしね。」


「はい。

でも、ワタシ…
もうちょっと男としての生活を頑張れると自分では思ってたんです。

ワタシって子供の時から女の子になりたいって思ってたわけじゃなかったし、後天性のニューハーフだっていう自覚もありましたから。

それなのに、女装も辞められないし…
正直に言うと、今でも恋愛対象は男性だし…

ホントに中途半端で、自分がイヤになります。」


「まあ、ユキちゃんの気持ちは、ワタシにはよくわかるけどね。
ワタシも多分、ユキちゃんの立場ならきっとそうなっていると思うから。」


「…」


「ねえ、ご飯食べたら、久しぶりにお店に来ない?」


「えっ、お店に?」


「気分転換よ、気分転換。

その似合ってないスーツを脱いでさ、心を解放しなさいよ。」


ユウさんは、そう言って笑った。


ワタシは…

一瞬、色んなことが頭に浮かんでは消えてったけど、最終的には行く事を決めた。


あくまでも、ママや先輩達に会いたいって事で…

タテマエはね。
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