162 / 270
義父
しおりを挟む
翌日、ワタシは沙耶香に連れられて、沙耶香のお母さんのパートナーだった男性のところへバスで向かっていた。
「なんか緊張するわ。
その志水さんて、怖くない?」
「怖くないって。
すごく優しい人」
不安がるワタシに、沙耶香は笑ってそう答えた。
「ここなの」
バスを降りて五分ほど歩いた先に、志水さんのご自宅があった。
結構大きくて立派なお家だ。
沙耶香もさすがにインターホンのボタンを押すときは緊張を隠せない様子だったが…押して、待っていると
インターホンから志水さんが応答し、すぐにドアを開けて出てきてくれた。
「やあ、沙耶香ちゃん
よく来てくれたね。」
「ご無沙汰してます。
あの、こちらは私の婚約者の西村幸洋さんです。」
「西村幸洋です。
よろしくお願いします。」
沙耶香の紹介を受けたワタシは、緊張感に包まれながら頭を下げた。
「婚約者?
そうですか。
電話で一緒に来るって言ってたのは幸洋さんと、って事でしたか。
志水 幹治と申します。
私は沙耶香さんのお母さんと、ほんの短い間でしたが、結婚して夫婦という関係でいました。
よろしくお願いします。
こんなところで立ち話も何ですから、さあ、中へどうぞ」
志水さんに促されて、ワタシ達は家の中に入った。
想像してたより、柔和で如何にも優しいおじさんて感じの人だ。
喋りやすいし。
沙耶香とワタシは、入ってすぐ、沙耶香のお母さんの仏壇に案内された。
沙耶香は東京で買っておいたお供えを置き、線香を上げて手を合わせた。
ワタシも同様に手を合わせて拝んだ。
葬式の時に使用したと思われる沙耶香のお母さんの写真が飾られており…
当然だけど、沙耶香に似てて美人なお母さんだった事が窺えた。
それから間もなくして、お坊さんがやってきて読経した。
三回忌法要は滞りなく終了し、ワタシ達は志水さんが何処かの仕出し弁当屋さんに手配していたすごく高そうなお弁当をいただき、食べながら、色んな話をしたのだった。
ワタシは専ら聞き手に回っていたが。
「沙耶香ちゃん
東京での生活はどう?」
「うん…
色々大変だったけど、ユキと出会ってからはすごく楽しくすごさせてもらってるわ。」
「そうか。それはよかった。」
「お父さんは元気にやってたの?」
今度は沙耶香が質問したんだけど、志水さんはその質問に答えず、思わず固まってしまった。
沙耶香の顔を見つめながら…
実は、沙耶香が、ここで初めて志水さんのことをお父さんと呼んだがために固まったんだ。
多感な時期に、たった一人の家族であった母親が再婚し、沙耶香自身も思いっきり反発したって言ってたし、お父さんと呼ぶどころか、口すらきかない時期も長かったんじゃないかって思う。
もう、お母さんは亡くなってしまったけど、こうやって志水さんと沙耶香が仲良くしている姿を天国で見ていたら、きっと喜んでくれているだろうと思う。
「なんか緊張するわ。
その志水さんて、怖くない?」
「怖くないって。
すごく優しい人」
不安がるワタシに、沙耶香は笑ってそう答えた。
「ここなの」
バスを降りて五分ほど歩いた先に、志水さんのご自宅があった。
結構大きくて立派なお家だ。
沙耶香もさすがにインターホンのボタンを押すときは緊張を隠せない様子だったが…押して、待っていると
インターホンから志水さんが応答し、すぐにドアを開けて出てきてくれた。
「やあ、沙耶香ちゃん
よく来てくれたね。」
「ご無沙汰してます。
あの、こちらは私の婚約者の西村幸洋さんです。」
「西村幸洋です。
よろしくお願いします。」
沙耶香の紹介を受けたワタシは、緊張感に包まれながら頭を下げた。
「婚約者?
そうですか。
電話で一緒に来るって言ってたのは幸洋さんと、って事でしたか。
志水 幹治と申します。
私は沙耶香さんのお母さんと、ほんの短い間でしたが、結婚して夫婦という関係でいました。
よろしくお願いします。
こんなところで立ち話も何ですから、さあ、中へどうぞ」
志水さんに促されて、ワタシ達は家の中に入った。
想像してたより、柔和で如何にも優しいおじさんて感じの人だ。
喋りやすいし。
沙耶香とワタシは、入ってすぐ、沙耶香のお母さんの仏壇に案内された。
沙耶香は東京で買っておいたお供えを置き、線香を上げて手を合わせた。
ワタシも同様に手を合わせて拝んだ。
葬式の時に使用したと思われる沙耶香のお母さんの写真が飾られており…
当然だけど、沙耶香に似てて美人なお母さんだった事が窺えた。
それから間もなくして、お坊さんがやってきて読経した。
三回忌法要は滞りなく終了し、ワタシ達は志水さんが何処かの仕出し弁当屋さんに手配していたすごく高そうなお弁当をいただき、食べながら、色んな話をしたのだった。
ワタシは専ら聞き手に回っていたが。
「沙耶香ちゃん
東京での生活はどう?」
「うん…
色々大変だったけど、ユキと出会ってからはすごく楽しくすごさせてもらってるわ。」
「そうか。それはよかった。」
「お父さんは元気にやってたの?」
今度は沙耶香が質問したんだけど、志水さんはその質問に答えず、思わず固まってしまった。
沙耶香の顔を見つめながら…
実は、沙耶香が、ここで初めて志水さんのことをお父さんと呼んだがために固まったんだ。
多感な時期に、たった一人の家族であった母親が再婚し、沙耶香自身も思いっきり反発したって言ってたし、お父さんと呼ぶどころか、口すらきかない時期も長かったんじゃないかって思う。
もう、お母さんは亡くなってしまったけど、こうやって志水さんと沙耶香が仲良くしている姿を天国で見ていたら、きっと喜んでくれているだろうと思う。
3
お気に入りに追加
75
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/sf.png?id=74527b25be1223de4b35)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる